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北朝鮮の「新型潜水艦」による弾道ミサイル発射はいつ?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル「北極星1号」(労働新聞から)

米戦略国際問題研究所(CSIS)は昨日、衛星画像から北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射準備を進めていると、報告していた。

北朝鮮が新型の潜水艦を建造しているのは秘密ではない。北朝鮮自身も公にしている。朝鮮中央通信は先月(7月)23日、金正恩委員長が新型潜水艦を視察したと報道し、同潜水艦が「東海(日本海)作戦水域で任務を遂行することになる」として、配備目前であることを伝えていた。

北朝鮮は2015年から潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の発射テストを数回試みた後、2016年8月24日に成功させている。試射に立ち会っていた金正恩委員長は「僅か1年で成功させた」と豪語していた。また、「我々は核攻撃能力を完璧に保有した大国の前列に堂々と立つことができた」とも言っていた。

日本海に面した咸鏡北道・新浦沖から発射された「北極星1号」と呼称されるSLBMは放物線を描いて飛行し、新浦沖から500km先の日本の防空識別圏に落下している。固体燃料を満杯にして正常に発射していれば2000km以上飛行するとみられていた。

発射に使用された「新浦潜水艦」と称されるこの潜水艦は「コレ級」で排水量は2000トンであった。2000トン級潜水艦には発射管は1個しかない。搭載能力は1発で、報復手段としての実戦能力に乏しい。

このため、北朝鮮はロシアから購入した退役のゴルフ級潜水艦(3000トン級)をベースに密かに3000トン級以上の潜水艦建造に着手していた。「ゴルフ級」はSLBMを3発装着できる。

「ゴルフ級」から発射されるSLBMは「R-21」で最大射程距離は1、420km、弾頭重量は1,180kgである。潜航能力は70日に達する。太平洋に出航すれば、ハワイやグアムなど米国の戦略要衝地を射程圏中に置くことができる。

ところが、北朝鮮は今年7月23日、潜水艦を新たに建造したと発表した。潜水艦規模など詳細については明らかにしてなかったが、金委員長が視察した際に公開された写真を見る限り、発射管が3個みえた。

北朝鮮はこの3千トン級潜水艦の建造と合わせて、「北極星3号」を開発していた。金委員長が2017年8月にICBM用の素材を研究、開発する国防科学院材料研究所を訪れた際、関係者から説明を受けていた部屋の壁に「水中戦略弾道弾 北極星3」と書かれた説明板が飾られていた。

「北極星1」を改良したものとみられる「北極星3」の説明ボードに「模擬試験後」と書かれた弾頭と推定される物体も写っていた。この弾頭らしきものは2016年3月に北朝鮮が「弾頭の大気圏再突入環境模擬試験に成功した」と主張し、公開した弾頭と形態が似ていた。

「北極星3」は写真が公開されたもののこれまで一度も発射実験が行われたことはない。3000トン級潜水艦が建造されなかったことと関係しているのかもしれない。

北朝鮮は今月24日、新型大型ロケット砲(放射砲)を2発発射したが、試験射撃を視察した金委員長は「8月24日は本当に忘れることのできない良い日である。3年前にまさに世界でも幾つの国しか持ってない戦略潜水艦弾道弾水中試験発射を成功させたからだ」と意味深な発言をしていた。

北朝鮮は5月4日から8月24日までの間、北朝鮮版「イスカンデル」と呼ばれている単距離ミサイルや米国産戦術地対地ミサイル(ATACMS)など新型短距離ミサイルのほか、2種類の大型のロケット砲を開発し、発射実験を成功させている。

年内に予定されている米朝実務交渉の前に、トランプ大統領との4度目の首脳会談の前にやることを全部やってしまう、持つものは全部持ってしまうことが方針ならば、早ければ、9月9日の建国記念日か、10月10日の労働党創建日を前に3000トン級潜水艦を進水させ、「北極星3号」のロフテッド方式による発射実験を行う可能性もゼロではない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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