韓国経済は5年後に日本に追いつけるか

「反日」で南北は手を握るか?文在寅大統領と金正恩委員長(写真:代表撮影/Pyeongyang Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ)

 日本の「半導体素材の輸出規制」や「ホワイト国」からの除外を「韓国経済を攻撃することに意図がある」と経済戦争を仕掛けられたと受け止めている文在寅大統領は8月2日の国民向け談話で「(日本の)挑戦に屈服したら歴史はまた繰り返される。今日の大韓民国は過去の大韓民国ではない、我々は十分に日本に勝てる」と、非情な覚悟を持って日本に立ち向かうよう国民に呼びかけた。

 日本との経済戦で勝てる根拠として「国民の民主の力量は世界最高水準で、経済も比べようもないほどに成経長した。どんな困難も十分に克服する底力を持っている」と韓国の潜在力を強調してみせたが、国内総生産(GDP)規模は韓国(1兆5400億ドル)は日本(4兆8000ドル)の3分の1程度、一人当たりGDPも韓国(2万9938ドル)は日本(3万8448ドル)に1万ドル弱差を付けられている。

 貿易額も日本の1兆3600億ドルに対して韓国はやっと1兆ドルに到達したばかりで、外貨保有高に至っては、韓国(3800億ドル)は日本(1兆2600億ドル)の4分の1程度と、文大統領も認めているように経済規模からはどう見ても、日本に簡単に追い付けそうにはみえない。

(参考資料:経済では韓国は日本に太刀打ちできない!

 一体何を根拠に「途方もない」話を切り出したのかと訝っていたところ、3日後の8月5日、文大統領は「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に追いつくことができる」と、北朝鮮との経済協力がその担保になっていると、それなりの秘策を明かしていた。

 文大統領は「非核化と朝鮮半島の平和の下での南北経済協力の実現こそが世界のどの国も持つことのできない韓国の未来である」と強調していたが、現実問題として、北朝鮮の非核化がまだ実現できてない、米韓合同軍事演習や北朝鮮のミサイル発射再開に見られるように米韓と北朝鮮の対立が続いている現状では文大統領の空想、妄想に過ぎないと言っても過言ではない。しかし、文大統領にはそれなりの「勝算」があるようだ。

 その一つは、日本に依存していた半導体素材を含む主要、基幹産業の現資材及びパーツの輸入多元化と国産化に舵を切ったことだ。

 素材や部品、装備などの過去3年間の対日交易水位は、2016年は韓国の輸入が328億ドル(輸出136億ドル)、2017年は輸入387億ドル(輸出143億ドル)、2018年は輸入371億ドル(輸出148億ドル)と韓国の輸入が大幅に上回っている。韓国の年平均の対日貿易赤字は240億ドル前後だが、その大半はこれら素材、部品である。

 従って、韓国は今後▲日本が輸出を制限した半導体素材3品目(超高純度のフッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミド)を含む主力産業及び新産業関連の核心素材については米国、中国、EUなど迅速な代替輸入国の確保に努める▲日本の輸出規制に対応するため100大核心戦略品目(半導体、ディスプレイ、自動車、電機電子、機械金属、基礎科学などの分野)を1~5年間に国内で供給できるようにする▲特に安全保障上需給リスクが大きく技術確保が急がれる20品目は短期(1年以内)に、その他基礎科学分野の80品目は中長期(5年以内)に供給を安定化させるとしている。

 国産化に多少時間のかかる80品目は技術革新が不可欠であるので研究開発に大規模財源を投入し、早期の技術蓄積に向けて革新的なR&D方式を導入する。短期間に技術確保が困難な場合、M&Aや海外技術導入、海外企業国内誘致などを推進することにしているが、韓国政府は5年内の目標達成に総額45兆ウォンを投入することにしている。

 もう一つは、南北関係改善による経済的効果だ。

 北朝鮮の経済的潜在能力についてはトランプ大統領も安倍総理も認めているところである。

 トランプ大統領は「北朝鮮はロケーションの面でも大変な潜在力がある。驚くほどの不動産と信じがたいほどの自然の潜在力を持っている」と言い、安倍総理もまた「北朝鮮はアジア・太平洋の成長圏に隣接し,立地条件に恵まれている。勤勉な労働力があり,地下には資源がある。それらを活用するならば、北朝鮮は経済を飛躍的に伸ばせる」と公言してはばからない。

 北朝鮮にはレアアースなど豊富な地下資源が埋蔵されている。マグネサイト、黒鉛、モリブデン、亜鉛など世界10位に入る鉱物だけで7種類もある。北朝鮮の地下資源の価値は金額にして600兆円相当に上るとみられている。

 また、アジアでは最も安価で、教育レベルが高く、勤勉で、同じ言語を用いる労働力が2500万人もいることだ。さらに独裁国家であるが故に労働争議の心配もない。

 さらに、広大な土地がある。国土面積では北朝鮮は韓国よりも広く、土地の賃貸料も格安である。

 文大統領は1年内には3度目の米朝首脳会談が開かれ、北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる交渉が妥結し、連絡事務所の相互設置など米朝関係は著しく改善されると展望している。

 米朝の関係改善によって南北関係が好転すれば、韓国の資金と設備と技術を投入して、600兆円相当の地下資源を開発、生産、加工、輸出すれば2倍、3倍の付加価値を産み、加えて38線上で断ち切れた東西2本の朝鮮半島縦断鉄道が開通し、シベリア鉄道と満州鉄道に繋がれば、欧州と陸路が繋がり、貿易や観光面で韓国経済に多大な恩恵をもたらすとの青写真を描いている。また、朝鮮半島の平和が定着すれば、韓国の軍事費を削減し、経済に回すことも可能となる。

 すべては「北朝鮮頼み」だが、北朝鮮との経済協力を打ち出したその翌日に北朝鮮が単距離ミサイル2発を発射したところをみると、やはり、今の段階では「絵にかいた餅」に過ぎないようだ。

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動開始。98年 ラジオ「アジアニュース」パーソナリティー 。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。著書に「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人、残念な日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など25冊

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