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経済では韓国は日本に太刀打ちできない!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国の半導体メーカー(写真:ロイター/アフロ)

 日本による半導体素材の対韓規制措置に端を発した日韓対立は経済に留まらず、政治、外交、文化、観光、さらには庶民のレベルまで広がりつつある。特に韓国では日本商品不買運動が始まるなど「反日」の気運が日増しに高まっている。

 報復が報復を招く「貿易戦争」は利益を得ることにあるのではなく、相手により多くのダメージを与える戦いである。裏を返せば、「消耗戦」でもあり、「持久戦」でもある。

 「消耗戦」に勝つには耐えられるだけの経済力がなければならない。日韓の経済力を比較すると、どれをとっても日本が断然有利である。そもそも土台から違い過ぎる。

 国土の面積で日本(377,915平方キロメートル)は韓国(99,720平方キロメートル)よりも4倍も大きい。人口の数でも日本(1億2600万人)は韓国(5160万人)の2以上もあり、内需基盤が韓国よりもしっかりしている。また、日本は米国、中国に続く世界第3位の経済大国である。一方の韓国は12位である。

 今日から大相撲が始まったが、米中が東西の正横綱だとすると、日本はさしずめ東張出横綱の地位にある。これに対して韓国は前頭筆頭というところだ。簡単な話が、日韓の経済力は横綱と前頭ぐらいの差があると言っても過言ではない。具体的な統計を挙げて、比較してみると、その格差は一目瞭然だ。

 経済指標をみると、国内総生産(GDP)規模は韓国の1兆5400億ドルに対して日本は4兆8000ドルと3倍以上も韓国を上回っている。一人当たりGDPでも韓国の2万9938ドルに対して日本は3万8448ドルと、1.3倍も多い。

 日本も韓国も共に貿易立国である。共に貿易で成り立っている国であるが、輸出入どれをとっても日本が韓国を凌駕している。

 輸出だけを比較すると、韓国の昨年の輸出額は6000億ドルで、世界ランクは第6位。これに対して日本は7300億ドル(世界4位)と韓国を1300億ドルも引き離している。ちなみに輸入では韓国の5400億ドルに対して日本は7500億ドルと、2000億ドル以上も差を付けている。

 外貨保有高はどうか?日本は中国に続き世界で2番目に多い1兆2000億ドルの外貨を保有している。これに対して韓国は日本の3分の1の4000億ドルである。

 韓国は1997年の「IMF危機」で外貨が底を付き、破産寸前にまで追い込まれたが、韓国の金融危機を救ったのは他ならぬ日本からの緊急金融支援であった。韓国はこれを教訓に2001年に日本との間で互いに外貨を融通する通貨スワップ協定を結んだが、2015年の満期終了後は慰安婦問題による関係悪化もあって再延長されてない。外貨保有高が4000億ドルを超えたとはいえ、資本流出の発生を防ぐには決して十分とは言えない。

 加えて、世界的企業の数も日本の方が多い。経済紙「フォーチュン」が2017年基準で選定した「500大企業」の中に日本企業は51社も含まれていたが、韓国は15社と3分の1にも満たなかった。さらに、研究開発(R&D)に1千億円を投資している日本企業は29社もあったが、韓国は僅か3社と、日本の10分の1だ。

 韓国の産業構造は電子、電気機器、機械類、自動車、造船などの主力輸出品等の生産のため中間財(部品や素材)と資本財(製造機械)を日本に依存する構造にある。従って、日韓は韓国の貿易、輸出が伸びれば伸びるほど、日本の対韓輸出、即ち韓国の対日貿易赤字が増大する仕組みとなっている。実際にこの5年間で素材・部品の対日赤字は763億ドルに達している。

 例えば、韓国は2017年に過去最大の対日貿易赤字(283億ドル)を記録したが、その原因は皮肉にも輸出の核である半導体が好況だったことにある。今年も上半期の対日貿易赤字はすでに99億ドル(6月25日現在)に達しているが、そのうち素材・部品が実に3分の2を占めている。

 統計が示しているように韓国の輸出増で最も恩恵を受けている国は日本である。日韓条約締結以降54年間、一貫して日本の貿易黒字である。過去5年間だけをみても、14年=215億ドル、15年=202億ドル、16年=231億ドル、17年=283億ドル、18年=240億ドルと毎年200億ドル以上の黒字を記録している。韓国に進出している日本企業の85%が黒字を記録しているとのことである。この比率は中国(72%)や台湾(67%)よりも多い。

 日本が自国の企業の被害を犠牲にしてまでも半導体装備や素材などの対韓輸出を規制した場合、供給不足の状況に陥り、韓国の半導体業界は大きな打撃を被るのは誰が見ても時間の問題である。

 米大手債権格付け会社「ムーディーズ」は4日、「日本の輸出規制が韓国半導体業者の信用度に否定的な影響をあたえる」と予測し、また市場調査業者の「IHSマーケット」も「素材の供給が減少あるいは中断すれば、メモリーを含む半導体生産に相当な影響を及ぼす」とみている。

 韓国開発研究院(KDI)によれば、昨年の全体の輸出で半導体を除けば、韓国のGDP成長率は2.7%から1.4%に減少するとのことである。韓国経済がいかに半導体産業に依存しているかがわかる。

 半導体は韓国の全輸出の2割(1267億ドル)を占めている。その最大手が「サムソン電子」である。その「サムソン電子」の第二分期(4-6月)の営業利益は韓国ウォンで6兆5000億ウォン(約6000億円)と第一分期(6兆2300億ウォン)よりも4.3%増加したが、それでも昨年同期(14兆8700億ウォン)に比べると半分以下だった。

 今後、日本の韓国に対する輸出規制が強化されれば、韓国経済を牽引してきた半導体輸出は一段と落ち込み、韓国経済のさらなる悪化は避けられない。このままでは韓国は米中貿易戦争で苦戦を強いられている中国の二の舞になるだろう。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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