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 韓国の警察トップがまた逮捕! 哀れな末路を辿るのは大統領だけではない

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 韓国の警察庁長官経験者が15日に逮捕された。朴槿恵前政権下で第19代警察庁長官に起用されたカン・シンミョン氏のその人である。

 カン元長官は2016年4月の国会議員選挙に不当に介入し、朴政権に有利になるよう警察組織を使って情報収集したことが容疑となっている。後任のリ・チョルソン前長官(第20代長官)についても同様の容疑で逮捕状が出されていたが、裁判所は却下している。

 先輩である元長官を逮捕した現長官は文在寅大統領が昨年6月に第21代長官に任命したミン・カプリョン(60歳)氏である。

 文大統領はミン長官に警察の改革を託している。警察や検察の不祥事(政界、経済界、官界、芸能界等との癒着)が後を絶たないことにある。そのことは、何よりも歴代長官のその後をみれば一目瞭然である

 韓国は建国(1948年)から1990年までの軍事政権下までは警務部部長が警察のトップにあった。警務部から警察庁に改称したのが1991年7月。民主化への移行に伴い任期も2年に制限された。

 警察庁発足から長官に就任したのは計21人。任期を最後まで全うし、退任できたのは今回、逮捕されたカン元長官と逮捕状が出されたイ前長官、それに盧武鉉政権下の第13代(イ・スンテク)の3人のみだ。

 残り17人は短命に終わっている。例えば、李明博政権(2008年2月―2013年1月)の5年間、4人の長官が任命されたが、誰一人、2年の任期を全うすることができなかった。

 事もあろうに、21人のうち、何と11人が被疑者として検察の調査を受け、このうち9人が逮捕、起訴され、8人は有罪を宣告されている。

 ▲金泳三政権下の第2代(イ・インソプ)はスロットマシン業者から賄賂を受け取った事実が明るみになり、金泳三政権下の1993年に逮捕。

 ▲第4代(カン・ファナム)は退任後、1996年国会議員に当選したが、当選から4か月後に選挙法違反で逮捕され、辞職を余儀なくされた。

 ▲同じく金泳三政権下の第5代(パク・イルリョン)は「北風工作事件」(軍事境界線で北朝鮮に挑発をするよう仕掛けた事件)で金大中政権下の1998年に逮捕。

 ▲盧武鉉政権下の第11代(チェ・ギムン)は退任後、財閥企業「ハンファ」の顧問となったが、顧問在職中に「ハンファ」会長の暴行事件に手心を加えるよう後輩の警察官らに働きかけた容疑で懲役1年(執行猶予)が宣告。

 ▲同じく盧武鉉政権下の第12代(ホ・ヨンジュン)は退任後、李明博政権下で韓国鉄道公社社長になったが、2011年に200万円相当の賄賂を受け取った罪で文在寅政権下の2017年に懲役1年(執行猶予2年)が宣告。

 ▲後任の第13代(李テッスン)も2万ドルの収賄で今から10年前の2009年に最高裁(大法院)で同じく懲役1年(執行猶予2年)が宣告。

 ▲李明博政権下の第15代(カン・フィラク)はソウル市傘下のSH公社が発注する工事現場に派遣する労働者らの監督・運営権の受注をめぐるスキャンダルとの関連で懲役3年6カ月の実刑判決を受けた。

 ▲後任の第16代(チョ・ヒョンオ)も2010年にある講演で「廬武鉉大統領は仮名(裏)口座が発覚した後に自殺した」と発言したことが問題にされ、死者に対する名誉棄損で2013年に懲役8か月が実刑宣告。また、建設業界から500万円を収賄した容疑でも起訴され、二審(高裁)で有罪判決を受けたが、上告し、最高裁で争っている。

 大統領から警察のトップまでが退任後、本人や家族が収賄容疑などで逮捕されるこの惨状こそがまさに「韓国病」そのものだ。行政、司法、立法のトップが襟を正し、この持病を根絶しない限り、政経、政官癒着を正すのも、警察、検察の改革も容易ではない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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