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発射された北朝鮮の「新型誘導兵器」は弾道ミサイルではなかった!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
空軍の飛行訓練を指導する金正恩委員長(労働新聞から)

 北朝鮮の朝鮮中央通信は今朝、金正恩委員長が「新型戦術誘導兵器」の発射試験に立ち会ったと報じていた。

 金委員長の視察には党副委員長の金平海(人事担当)、呉秀英(経済担当)両氏のほか、軍需工業部門を統括している李炳哲党第一副部長と金正植副部長、それに軍トップスリーの金守吉軍総政治局長(大将)、呂光鉄人民武力相(大将)、李永吉軍総参謀長(大将)に加えて人民軍砲兵司令官の朴正天陸軍大将も随行していた。

 ちなみに金正植副部長は宇宙開発局の前身である宇宙空間技術委員会所属で、2012年の2度にわたる「人工衛星」(長距離弾道ミサイル「テポドン」)の発射に関与した人物である。

 「新型戦術誘導兵器」の詳細は不明だが、金委員長は昨年11月中旬、国防科学院の実験場を訪れ、「新たに開発した尖端戦術兵器の試験を指導していた」(朝鮮中央通信)ことから国防科学院で研究、開発されていた兵器であることは間違いない。

 この時の視察でも軍事関係者では李炳哲第一副部長と朴正天砲兵司令官だけが付き添っていたことから、今回テストされた兵器はロケット戦略軍(司令官:金洛謙・陸軍大将)が使用する弾道ミサイルではなく、砲兵部隊が局地的に使用する対空砲や誘導ミサイル、もしくは攻撃用兵器の可能性が高い。弾道ミサイルでなければ、国連決議に反せず、安保理の制裁対象とはならない。

 発射試験に立ち会った金委員長は「この兵器体系の開発完成は人民軍の戦闘力強化に大きな意味を持つ事変である」と述べ、開発した担当部門を称えていたが、今回の発射について朝鮮中央通信は「いろいろな目標によっていろいろな方式で行われた射撃試験では特殊な飛行誘導方式と威力のある先頭部(弾頭)装着により優越が評価できる戦術誘導兵器の設計上での数値が完璧に検証された」と伝えていた。

 国防科学院では核兵器だけでなく、大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の大出力エンジンなどを開発しているが、金正恩委員長は過去数年間、何度もここを訪れており、2016年3月の視察時は「より威力的で精密化、小型化した核兵器とその運搬手段をもっと多く製造せよ」と指示していた。また、2017年8月に視察した際には開発中のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)「北極星3」に関する説明を受けていた。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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