Yahoo!ニュース

中国共産党大会が閉幕へ!北朝鮮はミサイルを発射するか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の長距離弾道ミサイル

 中国共産党大会が二期目に入る習近平体制の新人事を発表して、本日(24日)閉幕する。

 北朝鮮は米国の制裁に同調する中国への反発の表れから昨年9月の「広州G20」や今年5月の「一帯一路国際会議」など中国の国家イベントに合わせるかのように核実験やミサイル発射を行ってきたが、今回は自制していた。逆に祝電を送っていた。

 労働党中央委員会による祝電は5年前に比べると、内容もなく、儀礼的なもので、悪化の一途を辿っている中朝関係を反映し、慣用語である「中朝親善」という言葉も盛り込まれてなかった

 慣例に従えば、主席に再選された習近平主席宛に金正恩委員長は祝電を送ることになっている。

 これまで北朝鮮は習主席を「同志」と呼んでいた。また、前回の祝電では「両国は山河を接する親善的隣邦であり、長い歴史に根付いた朝中親善は両党、両国の老世代指導者らの心血と努功がこもった共同の貴重な財富である」とか「世代と世紀を引き継いできた伝統的な朝中親善が両国の人民の念願に沿って引き続き発展することを信じる」との文言が盛り込まれていた。今回も同じか、興味津々だが、やはり、最大の関心事はこの期間、自制していたミサイル発射を北朝鮮が再開するかどうかにある。

 朝鮮中央通信は昨日(23日)の論評で「南朝鮮(韓国)傀儡は米国の無分別な軍事的妄動に対する我々式の超強硬対応措置がすでに準備できていることをはっきりと知るべきだ」と、トランプ大統領の国連演説に反発して金正恩委員長が先月21日に出した声明で言及していた超強硬対応措置について「準備ができている」として「侵略者、挑発者のヒステリー的な戦争(に向かおうとする)狂気が絶えず続いている中、それに伴う我々の適切な自衛的行動が任意の時刻に想像を超えた打撃で断行されることになるだろう」と威嚇していた。

 「超強硬対応措置」とされる北朝鮮の自衛的行動がミサイルの発射ならば、ロシア訪問中の崔善姫北米局長は「ICBMを含むロケット発射は我々の最高指導部が決心した時期にいつでも可能だ」と述べていたことからもわかるように発射のボタンは金委員長が握っていることになる。

 (参考資料:北朝鮮の「史上最高の超強硬対応措置」で米朝軍事衝突は不可避!

 北朝鮮は9月15日に発射した一段式の中距離弾道ミサイル「火星12号」以来、いかなるミサイル発射も行ってない。北朝鮮が1か月以上もミサイルを発射しなかったのは、今年1年に限ってみると、初めてのことだ。

 偵察衛星などによって平壌郊外の山陰洞の兵器研究所(工場)から複数の弾道ミサイルが移動されているのは確認済だ。ミサイルの種類は確認されてないが、「火星12号」あるいは二段式の「火星14号」、さらには一度も発射テストされてない三段式の「火星13号」が取り沙汰されている。発射されるのはどれも、グアムやハワイ、米本土を射程圏内に収める中長距離、大陸間弾道ミサイルである。

 北朝鮮はこの1か月間、行動は伴ってないが、言葉上では繰り返して米韓を威嚇している。

 金委員長が9月21日に「トランプ(大統領)が世界の面前で私と国家の存在自体を否定し、冒涜し、我が共和国を消してしまうと歴代で最も暴悪な宣戦布告をしてきた以上、我々もそれに相応する史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と述べたのを皮切りに2日後の23日には対南宣伝機関である祖国平和統一委員会が「史上最高の超強硬対応措置」について「米国やその手先らに想像もつかない結果を見せつけることになる」と、その波及効果について触れていた。

 今月に入っても威嚇は続いており、12日には労働新聞が「制裁と封鎖、軍事圧力の策動を水の泡にし、国家核武力の完成目標を我々がどう完成させるか(米国は)自分の目で見ることになるだろう」と予告したほか、外務省米国研究所研究員の名による論評で米国がB-1B戦略爆撃機を飛ばしてきたことに「我々は米国の対朝鮮侵略前哨基地、発信基地のグアム周辺に対する包囲射撃断行を含む自衛的対抗措置を取ることについて何度も警告してきた。米国の軍事妄動は我々をして超強硬対応措置の引き金を引くようにさせている」と、超強硬対応措置を取る寸前にあることを示唆していた。

 さらに18日には全民族非常対策委員会なる団体を前面に出して「我々の適切な自衛的行動は任意の時刻に断行されることを(米国は)瞬時も忘れてはならない。予想外の時刻に想像できない打撃に直面することを覚悟しておくべきだ」とミサイルがいつ発射されてもおかしくない状況にあることを匂わせていた。

 金委員長自らが声明で「我々の反発をどの程度まで予想してトランプがそのような過激な言葉を発したのかわからないが、彼はそれ以上の結果を目にすることになるだろう」と予告し、李容浩外相も今月12日にタス通信とのインタビューで「最高指導者同志は誰にも知られてない無限な武力を持った我が戦略軍隊が侵略国米国を懲罰せずにはほっとけないと言っている」と大見得を切った以上、金委員長は威信と沽券にかけても行動に移さざるを得ないだろう。

 北朝鮮はすでに外務省声明を通じて「世界は我々がどのように米国を罰するかを、しっかりと目の当たりにすることになる」と予告し、李容浩外相もタス通信に▲米国との力の均衡を維持する最終目標はゴール寸前にある▲核武力完成の歴史的課業を成功裏に終わらせると発言し、さらなる核実験とミサイル発射を示唆している。

(参考資料:米朝が軍事衝突すれば、被害は第2次世界大戦を上回る

 問題は、米韓合同軍事演習が終了してもイージス駆逐艦、ミサイル巡洋艦、支援艦など艦艇を伴った「動く海軍基地」と称される原子力空母「ロナルドレーガ」がトランプ大統領の日韓中歴訪(11月5-10日)が終わるまでそのまま朝鮮半島近海で展開している状況下で発射できるかどうかだ。

 トランプ大統領は一昨日、FOXのインタビューで「我々は完全に準備ができていることを知れば、(北朝鮮は)衝撃を受けるだろう」と、北朝鮮の対応次第では軍事オプションに踏み切る考えを鮮明にしていた。

(参考資料:秘密裏に行われていた米特殊部隊による「斬首作戦」訓練!

 北朝鮮は太平洋に向けてミサイルを発射できるのか、それともハッタリで終わるのか、北朝鮮の本気度が試されている。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事