北朝鮮の「史上最高の超強硬対応措置」で米朝軍事衝突は不可避!

厳しい表情で声明を読み上げる金正恩委員長

 国連総会でのトランプ大統領の「北朝鮮を破壊する」発言は「宣戦布告」だとして「我々もそれに相応する史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と金正恩委員長が自身の声明で発言したことが大きな波紋を呼んでいる。

(参考資料:北朝鮮が前代未聞の声明を発表! 究極の「トランプVS金正恩バトル」

 日本や韓国などでは「慎重に考慮する」との発言を単なるブラフと捉える向きもあるが、北朝鮮史上初の最高指導者の名による声明で「国家と人民の尊厳と名誉、そして自身の全てを賭け、言葉ではなく、行動で示し、トランプに必ずそのツケを払わす」と内外に宣言した以上、実行に移す可能性は大だ。問題はその「史上最高の超強硬対応措置」の中身だ。

 昨日、北朝鮮の対南宣伝機関である祖国平和統一委員会は金委員長が選択する「史上最高の超強硬対応措置」について「米国やその手先らに想像もつかない結果を見せつけることになる」と、その波及効果について触れていた。振り返れば、北朝鮮は今月に入って、不気味な予告を再三繰り返していた。

 まず、7日には外務省外郭団体の平和統一委員会の声明で「米国にとってとても耐えられない、類例のない断固たる措置を取る」と予告していた。また、4日後の11日には外務省声明で「想像すらできない強力な対抗措置」を示唆していた。そして、これが実施されれば、「史上例を見ないほど米国を混乱させることになる」と警告していた。

 外務省声明では「世界は我々がどのように米国を罰するかを、しっかりと目の当たりにすることになる」と公言していたが、金委員長もまた、自身の声明で「我々の反発をどの程度まで予想してトランプがそのような過激な言葉を発したのかわからないが、彼はそれ以上の結果を目にすることになるだろう」と予告していた。

 この「史上最高の超強硬対応措置」について北朝鮮の李容浩外相が21日、国連総会演説前に個人的な感想として「おそらく歴代最大級の水素爆弾の地上実験を太平洋上でやるのでは」と述べたことから「太平洋上の水爆実験」の可能性が取り沙汰されているが、金委員長自身が言及したわけではないので「超強硬対応措置」を「太平洋上の水爆実験」と断定するにはまだ早すぎる。

 仮に北朝鮮が本気で太平洋上の水爆実験を計画しているなら、核戦力(核ミサイル)完成のフィナーレとして行うこともあり得るが、当然、米国の軍事報復を覚悟しなければできないだろう。「最終手段も辞さない」と言っていることから軽視はできないが、今直ちに決行しなければならない選択肢とは言い難い。

 水爆の実験の際に「EMP(電磁パルス)による攻撃能力も手にした」と発表していることから「超強硬対応措置」として一部では「EMP爆弾」の使用も取り沙汰されている。

 しかし、実験であってもEMP爆弾を太平洋上で使用すれば、電力、通信、GPSなどのインフラが破壊され、周辺に影響を及ぼすのは必至だ。これも、太平洋上の水爆実験同様に米国の報復を覚悟しなければ容易にはできないだろう。

(参考資料:米国は北朝鮮を攻撃できるか?「トランプー金正恩」の「究極のチキンレース」

 想像力を働かせると、北朝鮮の「超強硬対応措置」は1回限りの限定的なものではなく、ICBMの発射と核実験を花火のように複合的に連続的に行うことを指すのかもしれない。確か、外務省声明でも「連続的に取る」と宣言していた。実行されれば、恐らく、どれもこれも、米国にとっては脅威となるだろう。

 北朝鮮はすでにグアム周辺30~40km海上に着弾させる中距離弾道ミサイル「火星12号」4発による「包囲射撃」を予告している。また、2段式の大陸間弾道ミサイル「火星14号」の太平洋上に向けた正常発射も時間の問題とされている。

 「火星14号」は7月4日、28日と2度、ロフテッド(高角度)方式で発射され、成功しているが、まだ一度も正常角度による発射は行われてない。さらには、3段式の固体燃料による「火星13号」の初の発射実験もスタンバイの状態にある。新型の潜水艦弾道ミサイル「北極星3号」も完成しているならば、発射実験もその前後に行われるだろう。

 核実験についても「水爆実験」に目を奪われているが、咸鏡北道吉州郡豊渓里の核実験場では一度も使用されてない3番(西側)と4番(南側)の坑道が整備中であることからもう1~2回の実験が予想されている。韓国情報機関「国家情報院」も今月4日、「北朝鮮は追加の核実験を計画している」と韓国国会情報委員会で報告し、その可能性を否定してない。

 北朝鮮には対応措置のカードが何枚もある。まずは、トランプ大統領の「暴言」に対して「必ずその代価を払わす」との本気度を示すためそのうちの一枚を早晩切ることになるだろう。

 ミサイルと核のどちらのカードを先に切るかは金委員長の判断に委ねられるが、ペンディング中の「火星12号」4発のグアム沖への連続発射実験が近々決行されるかもしれない。

 グアムに向けての「火星12号」の発射については戦略軍司令部の報道官が先月(8月)9日に「グアム周辺への包囲射撃を断行する作戦案を慎重に検討している」と言及したことで注目されたが、今もって実行されてない。

 一部には北朝鮮が二の足を踏んでいるのは「米国の尾を踏めば、報復を招く恐れがあるためビビッてできないのでは」と囁かれているが、「慎重に検討された」のは作戦案であって、発射を決断するかどうかではない。事実、金委員長は5日後の14日に戦略司令部を訪れ、出来上がった作戦案に関するブリーフィングを受けた際「緻密に用意周到作成されている」と作戦計画の出来ばえを称賛していた。

 その後、北朝鮮は周知のように緻密に用意周到に作成された作戦計画に従い、8月29日に初の正常角度による最初の発射実験を行い、そして9月15日の2度目の発射でグアムを完全に射程圏内に収めている。これによりグアム包囲射撃がいつでも可能となった。後は、金委員長の決断のみだ。

 金委員長はグアム包囲射撃については「米国の言動をみて決心する」としていたが、9月12日の安保理の制裁決議に加え、23日夜に複数の米戦略爆撃機「B-1B」とF-15戦闘機「イーグル」が朝鮮戦争休戦以来、初めて軍事境界線を越え、北朝鮮の東岸沖の上空に飛来してきた以上、北朝鮮も本気度を示すため「連続的措置」の第一弾としてグアム包囲射撃を実行に移す公算が高いと言えよう。

 目には目の対抗措置ではあるが、仮にトランプ大統領が本当に「狂人が四方にミサイルを発射するのを放置しない」(23日)とすれば、米朝の軍事衝突は避けられないだろう。

(参考資料:勝者は?「予測不能のトランプ」VS「統制不能の金正恩」

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動開始。98年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー 。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」(飛鳥新社)「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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