安保理制裁決議への北朝鮮の「対抗措置」はSLBMの発射か、核実験か!

安保理から8度目の制裁を掛けられた北朝鮮の指導者、金正恩委員長

 国連安保理は国連決議を無視して二度にわたって強行した北朝鮮のICBM発射への懲罰として全会一致で新たな制裁決議「2371号」を採択した。安保理による対北制裁決議は計8回目である。対イラクの7回を抜いて過去最多となった。

 制裁決議ではこれまで例外として認められていた石炭(4億ドル)、鉄・鉄鉱石(2億5千万ドル)、鉛・鉛鉱石(1億ドル)の輸出が全面禁止となり、併せて海産物(3億ドル)の輸出も禁止された。また、北朝鮮出稼ぎ労働者の雇用も制限されることになった。これにより北朝鮮は年間約10億5千万ドルの収入減となる。減収額は輸出額の3分の1を占めるので北朝鮮にとっては大きな痛手である。

 これまでの制裁措置で金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタニューム、レアアースなど鉱物資源の輸出がすでに完全に禁止されていることや贅沢品も含め外国からの輸入品も大幅に規制され、加えて貨物検査も一段と厳しくなっていることから北朝鮮の貿易は実質的に成り立たない状態にある。

(参考資料:北朝鮮の内部文書「経済制裁に備え、戦争物資を備蓄せよ!」

 また、今回の制裁決議により核・ミサイル開発を支援した9個人と朝鮮貿易銀行など4団体が新たな制裁対象に指定された。これにより、北朝鮮の制裁対象は個人62人、団体50に膨れ上がった。それでも、その数はイラクとは比較にならない。

 サダム政権下のイラクに対しては7度にわたる制裁が科せられたが、制裁委員会が作成したブラックリストにはフセイン大統領を含め89人の個人と205の組織、団体がリストアップされていた。核開発疑惑で同じく制裁を受けていたイランでさえ4度の制裁でアフマディネジャド大統領(当時)との支持基盤である革命防衛隊の関連企業を含め75の団体が制裁対象にされていた。数の上でも、北朝鮮はまだまだ少ない。まして、今回も核・ミサイル開発の最高責任者である金正恩委員長は除外されていた。

 今回の制裁決議を持ってしても、おそらく北朝鮮の核とミサイル開発を止めることはできないだろう。現に、北朝鮮は6月2日に7度目の決議「2356号」が採択された直後、外務省声明で「今後もミサイル発射を多発的に連続的にやる」と予告し、およそ1か月後の7月4日、トランプ政権が内々にレッドラインに定めていたICBMを発射している。

(参考資料:「B-1B」戦略爆撃機が飛来しても北朝鮮のミサイル発射を止められない!

 今回の安保理決議に対しても北朝鮮は即座に外務省声明を出して、反発するものとみられる。声明だけでなく、更なるミサイルの発射もあり得る。

 ミサイルならば、今度は潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の発射の可能性が高い。偵察衛星によって1~2か月前からコールドローンチによる射出試験など発射に備えた動きが探知されているからだ。しかし、国際社会にとって最も懸念されるのは6回目の核実験である。

 北朝鮮はこれまでに5回核実験を繰り返してきたが、いずれも先行して外務省声明が出されている。

 1回目(2006年10月9日)は、外務省声明から82日目に、2回目(2009年5月25日)は41日目に核実験のボタンを押している。3回目(2013年2月12日)は20日後に強行している。

 4回目(2016年1月6日)の「水爆」と称する実験は金正恩委員長が前年の12月9日に「我が祖国は国の主権と民族の尊厳を固く守る自衛の核弾、水素弾(水素爆弾)の巨大な爆音をとどろかせる強大な核保有国になり得た」と言及してから28日目、5回目(2016年9月9日)は7月21日の外務省談話から49日目に強行している。

 核実験をやるには大義名分、口実が必要だ。外務省声明はいずれも国連の非難決議や制裁決議に反発してのものだ。

 1回目(2006年)は7月5日のテポドン発射に国連安保理が10日後の7月15日、非難決議「1695号」を採択したことに反発し、10月3日に核実験を予告し、6日後に実施している。

 2回目(2009年)は4月5日の「衛星」と称するテポドン2号発射に国連安保理が4月13日に議長声明を採択し、制裁を科したことに反発し、核実験に踏み切っている。

 3回目も2012年12月12日のテポドン3号発射に国連安保理が2013年1月23日に制裁決議「2087号」を採択したことに反発して強行している。

 4回目は国連安保理の北朝鮮非難声明に反発して2014年3月30日、外務省声明で「核抑止力をより強化するための新たな形態の核実験も排除しない」と核実験を仄めかしたものの実際に核実験を行ったのは1年10か月後の2016年1月6日であった。但し、核実験はこれまでのプルトニウムやウランを使った実験ではなく、「水爆」と称する「新たな形態」の実験であった。

 そして昨年9月の5回目は米国が北朝鮮の一連の弾道ミサイル発射を安保理決議違反であると非難したことに反発したものであった。

 北朝鮮外務省はすでに先月(7月)14日に「国連安保理が再び制裁決議をすれば、後続措置を取る」との談話を出している。また、31日にも外務省スポークスマンが「米国が軍事的冒険と超強度の制裁策動にしがみつくならば我々はすでに明らかにしたように断固とした正義の行動で応える」と言明している。「後続措置」や「正義なる行動」が何を指すかは言うまでもない。

 核実験については4月にもやるのではないかと噂されていた。咸鏡北道吉州郡豊渓里(プンゲリ)の核実験場では金委員長の決断があれば、いつでもできる状態にあると伝えられている。

(参考資料:今度の北朝鮮の核実験は連発! これが最後!?

 仮に原子力空母2隻が投入され、8月21日から始まる米韓合同軍事演習(フリーダムガーディアン)前に強行すれば米国の先制攻撃を誘発するリスクが一段と高まる。

 北朝鮮は過去5回とも米韓合同軍事演習期間中は避けていたが、果たして今回は、どうか?

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動開始。98年 ラジオ「アジアニュース」パーソナリティー 。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。著書に「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人、残念な日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など25冊

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