北朝鮮の韓国提案黙殺はICBMか、SLBM発射のため!

昨年8月に潜水艦弾道ミサイル発射を参観する金正恩委員長

 「休戦協定日の7月27日を期して軍事境界線上での敵対行為を中止するための南北軍事会談を7月21日に板門店で開こう」との文在寅大統領の呼びかけに北朝鮮は何の反応も示さなかった。無視、黙殺してしまった。

 軍事会談が開かれれば、金正恩委員長を扱き下ろす拡声器放送や宣伝ビラまきが中止されるわけだから当然北朝鮮は乗ってくるだろうとの文政権の思惑は物の見事に外れてしまった。

 北朝鮮が軍事会談に応じなかった理由として、北朝鮮が中止を求めている来月から始まる米韓合同軍事演習(フリーダムガーディアン)を韓国側が議題にしなかったこと、あるいは文政権が対話を呼びかけながらその一方で圧力、制裁を口にしていることへの反発が原因との見方があるが、本当の理由は、近々ミサイルを再発射するからではないだろうか。

 その根拠として5つ挙げられる。

 一つに、北朝鮮外務省が今月14日に「国連安保理が再び制裁決議をすれば、後続措置を取る」との談話を出していることだ。「後続措置」とはミサイルの発射もしくは6度目の核実験を指すものとみられる。安保理の制裁決議はまだ審議中だが、米国は今月中には決議を提出する見込みである。

 次に、金正恩委員長が「火星14号」と称するICBM発射成功後に軍需部門責任者らを前に「今後もトランプ(大統領)を退屈させないため大小の贈り物(ミサイル)を届けろ」と発言していることにある。ICBM成功祝賀宴で演説した黄炳誓軍総政治局長は「米国が白旗を掲げ、降伏するまで(米国に)痛打を浴びせる」と豪語していることからも明らかなように北朝鮮のミサイル発射は7月4日のICBMの発射で終わらないことである。

 第三に、7月27日は北朝鮮にとっては朝鮮戦争休戦記念日ではなく、対米戦勝記念日と位置付けられていることにある。軍の士気高揚のみならず、チキンレースを続けているトランプ政権を観念させるには7月27日は格好のタイミングと言える。

 さらに、金委員長が7月13日に「火星14号」発射に寄与した関係者への表彰授与式に出席して以来22日現在、9日間にわたって動静を途絶えていることにある。ちなみに、「火星14号」の時も6月20日に「歯科衛生用品工場を視察した」と伝えられた以降、14日間姿を現さなかった。直前まで発射場を訪れていた。「火星12号」の時も8日間、公開活動を控え、秘密裏に発射場を視察していた。

 最後は、米CNNが7月20日に「今後2週間以内に北朝鮮が大陸間弾道ミサイルもしくは中距離弾道ミサイル(IRBM)を再度発射するかもしれない」と北朝鮮事情に精通した政府関係者の話として伝えたことだ。

(参考資料:北朝鮮が2週間以内にICBMを再発射! トランプ大統領は我慢できるか?

 米政府は情報衛星写真を分析した結果、北朝鮮がICBM又はIRBM発射のための部品及びミサイル統制システムのテストをしている気配と衛星基盤レーダー搬出の痕跡を感知したとされている。韓国国防部もまた、北朝鮮が移動式発射台を移動する動きを捕捉している。

 ICBMならば、「火星14号」の再発射ではなく、4月の軍事パレードで登場させ、まだ一度も試射したことのない、3段式の長距離弾道ミサイル「KN-08」もしくはその改良型の同じく3段式の「KN-14」の可能性も考えられる。ちなみにハワイのみならず米本土の一部であるアラスカまで射程に入ったとされる「火星14号」は2段式である。

 ICBM以外にも潜水艦弾道ミサイル「SLBM」を発射する動きもみられる。

 米ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」が6月30日に日本海に面した咸鏡南道新浦港にある北朝鮮の潜水艦基地を撮影した衛星写真によると、SLBMが搭載可能な新浦型潜水艦(2000トン級)と実験用バージ船(台船)が新浦港に再配置されていることがわかった。「潜水艦甲板上の装備が消えており、修理が終わった」というのが「38ノース」の分析である。

 SLBM関連ではCNNもまた、「北朝鮮の潜水艦が最近、60マイル(約100km)離れた公海(日本海)に出て、48時間異例の行動を行った」と報じている。この潜水艦はロメオ級(1800トン級)で新浦型潜水艦の護衛用として活用されている。北朝鮮は弾道ミサイル1基を搭載可能な新浦型潜水艦を1隻しか保有していない。

 北朝鮮は昨年8月に潜水艦弾道ミサイル「北極星1号」(500km飛行し、日本の防空識別圏80km内に落下)、今年2月に「北極星1号」を地上型に改良した「北極星2号」、(高度550km 飛距離500km)、5月にも再度「北極星2号」(高度560km、飛距離500km)を発射したが、「北極星3号」と推定される写真が最近公開されたばかりだ。

 戦勝記念日(7月27日)を祝って発射するのか、それとも国連安保理の制裁決議に反発してやるのか、発射されるミサイルがICBMか、それともSLBMか、どちらにせよ、発射の可能性は大だ。

(参考資料:軍事衝突は? 不気味な8月の米韓合同軍事演習(UFG)

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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