北朝鮮の核実験が見送られる可能性はないのか?

対決姿勢のトランプ大統領と金正恩委員長

北朝鮮の6回目の核実験が「カウントダウンに入った」と韓国のメディアの多くは伝えている。咸鏡北道吉州郡豊渓里にある核実験場を空撮した偵察衛星画像を分析した米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」の予測や「金正恩(委員長)が決心すれば、いつ実験されてもおかしくない」との韓国国防部の見解に起因しているようだ。本当に北朝鮮は6回目の核実験に踏み切るのか?見送る可能性は全くないのか?

(参考資料:北朝鮮の6度目の核実験の「Xデー」は?

過去遡ってみると、北朝鮮が核実験を予告、示唆しておきながら、実際にやらなかった例は何回かある。

一度目は、2010年10月から11月にかけてで、オバマ大統領の訪韓(11月10日)に合わせてであった。また、2012年にも4月から5月にかけて同様の動きを示したことがあった。ゲーツ国防長官(当時)が中止を求める一方で、国連安全保障理事会の常任理事国5カ国(米国、英国、フランス、ロシア、中国)が共同声明を出し、北朝鮮に核実験の自制を求めていた。その結果、北朝鮮の核実験の動きはいずれも単なるアドバルーン、デモンストレーションで終わっていた。実際に3回目の核実験が行われたのは翌年の2013年2月12日であった。

三度目は2014年の年で、国連安保理の北朝鮮非難声明に反発した北朝鮮はこの年の3月30日、外務省声明を出して、中長距離ミサイルの発射と4回目の核実験を示唆していた。次の核実験が「新たな形態の核実験」であると予告した。また、今と同じように当時もミサイル発射の動きも表面化していた。西海岸に近い東倉里の人工衛星(テポドン)発射基地でエンジン噴射実験が行われていたからだ。「38ノース」は衛星写真を分析した結果「長距離弾道ミサイル開発に関連した多くの活動を補足した」と報告していた。

そして、北朝鮮は1か月後の4月28日には国防委員会スポークスマンを通じて「我々の予告した核実験やロケットがブースト型核爆弾や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の高速化進入などと、囁かれているが、それ以上の措置を取ることができる」との談話を出していた。

いつでもやれる状況にあった。北朝鮮が恐れていた2か月間にわたる米韓合同軍事演習は4月18日に終了していた。戦闘機100機以上動員した最大規模の米韓合同空軍訓練「マックスサンダー」も4月25日には終っていた。さらに、豊渓里の実験場では地震波探知など計測装備や、計測装備と地上統制所を繋ぐ通信ケーブルなども設置され、坑道の入り口も閉じられ、当時も今と同じように「いつでも核実験が行える状態にある」(朴槿恵大統領)とのことだった。しかし、北朝鮮はこの年、核ボタンを押さなかった。実際に4回目の核実験は2年後の2016年1月に行われた。

北朝鮮が示唆しておきながら核実験に踏み切らなかった理由は▲核実験の準備が整ってなかった▲韓国で客船「セウォル号」沈没事故が起き、タイミングがよくなかった▲オバマ政権からの交渉の呼びかけを待っていた▲国連安保理での北朝鮮非難、制裁議論を見守っていた▲米国をけん制するための煙幕で、最初からその気がなかったなど様々な理由が考えられたが、当時はまだ核実験を外交カードに使うつもりでいたことだ。実際に北朝鮮は再三にわたってオバマ政権に敵視政策の再考を求め、その具体的な証の一つとして米韓合同軍事演習の中止を求めていた。

しかし、米韓合同軍事演習の中止と核実験の凍結の取引を求めた2015年の新年辞での金正恩委員長の提案がオバマ政権によって拒否されてからは外交カードに使う素振りすらみせなかった。そのことは、2016年1月と9月の4回目、5回目の核実験を強行したことからも明らかだ。

トランプ政権がオバマ政権以上に北朝鮮への対決姿勢を鮮明にしていることからよほどのことがない限り、6回目の核実験が見送られる可能性は限りなくゼロに近い。

(参考資料:今度の北朝鮮の核実験は連発! これが最後!?

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動開始。98年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー 。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」(飛鳥新社)「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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