北朝鮮が米戦略爆撃機「B-1B」の仮想撃墜映像を公開

米韓合同軍事演習に飛来した米戦略爆撃機「B-1B」

米国の戦略爆撃機「B-1B」2基が3月15日、グアムのアンダーソン基地から飛来し、江原道のヨンウォル郡にある韓国空軍の「必勝射撃場」で爆撃訓練を行っていた事実が明るみに出た。米韓連合軍が自ら公表したのではなく、北朝鮮のメディアが明らかにした。 

米韓連合軍は作戦上、米韓合同軍事演習への「B-1B」の「出陣」を伏せていたが、北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央通信」は翌日(16日)には機種まで特定し、韓国の射撃場で「先制攻撃のための核爆弾投下訓練を1時間行った」と発表した。

(参考資料:米国は北朝鮮のICBMを撃墜できるか

北朝鮮の報道について韓国軍スポークスマンは「作戦保安上確認できない」とコメントを避けたが、「B-1B」の飛来は既成の事実として受け止められている。

別名「死の白鳥」と呼ばれる「B-1B」は核戦略爆撃機「B―52」やステルス戦略爆撃機「B-2」と並ぶ米国が誇る3大戦略爆撃機の一つで、北朝鮮が最も恐れ、警戒している爆撃機と言われている。戦略爆撃機の中では速度がマッハ1.25と最も早く、グアムのアンダーソン基地からは2時間もあれば平壌上空に飛んで来れる。

核兵器は搭載してないが、930km離れた場所から北朝鮮の核心施設を半径2~3km内で精密打撃することが可能で、空対地巡航ミサイル24基など61トンに及ぶ兵器を搭載している。地中貫徹爆弾「バンカーバスター」も保有しており、金正恩委員長ら北朝鮮最高司令部が作戦を担う地下バンカーなど核心施設の空爆が可能だ。

「B-1B」が朝鮮半島で展開するのは昨年10月以来、5か月ぶりで、米国は昨年だけで「B-1B」を3度投入し、模擬弾を利用した精密打撃訓練を実施していた。

(参考資料:衝撃の米国の対北朝鮮開戦シナリオ

北朝鮮は「B-1B」には猛烈に反発しており、昨年9月13日に朝鮮半島に飛来し、デモンストレーション飛行した際には李容浩外相がベネズエラで開かれた非同盟閣僚会議で「我々には戦略爆撃機(B-1B)を投入した米国の挑発に対抗するため新たな攻撃を開始する準備ができている」と、北朝鮮を威嚇したことへの「報復」を示唆していた。

当時、予想された「報復」として▲米軍機の迎撃を想定した地対空ミサイルの試験発射▲米本土を標的にした長距離弾道ミサイル「KN-08」の発射実験▲6度目の核実験などが想定されたが、北朝鮮は行動に移さなかった。

北朝鮮には最大迎撃高度が数十キロメートルの新型ミサイル「KN-06」(射程距離100キロメートル)のほか「SA-5」(260キロメートル)、「SA-2」(47キロメートル)、「SA-3」(35キロメートル)などの地対空ミサイルが配備されている。また、昨年3月31日、新たに開発した地対空迎撃誘導ミサイルの発射実験も行っている。従って、「B-1B」が平壌上空に侵入すれば、撃墜を試みることも考えられる。 実際、北朝鮮はこれまでに米軍機を何度か撃墜したことがある。

偵察機では、1969年に電子偵察機「EC-121」が北朝鮮の領空を侵犯したとして撃墜されている。事件後、米国務省は同偵察機が北朝鮮沿岸地域に対して偵察活動を続けていた神奈川県厚木基地所属機で、事件が起きる前の3か月間に延べ190回も偵察飛行を行っていた事実を認めていた。 そして、もう一件は未遂に終わったが、1981年の偵察機「SR-71」を狙ったこともあった。

「SR-71」は1966年から実戦配備された偵察機で高度2万4千メートル、巡航速度マッハ3以上の性能を持つ当時米国が誇っていた世界最新鋭の偵察機であったが、米国務省は1981年8月26日、「SR-71」が朝鮮半島上空で「北朝鮮のミサイル攻撃を受けた」と発表した。

「SR-71」は定期的に沖縄の嘉手納基地から北朝鮮上空に向け発進していたが、当時北朝鮮が保有していた地対空ミサイルは「SA-2」で、2万4千メートルの高空を超音速で飛ぶ同機を迎撃するのは技術的にとても不可能であった。 当時、共和党の長老ゴールドウォーター上院議員は「北朝鮮がミサイル攻撃を加えたかどうか疑わしい。米国務省の発表は信じられない」と発言していたが、国務省の発表とおりならば「SR-71」は「SA-2」の射程範囲ぎりぎりのところを低速で飛んでいたことになる。

「B-2」が米韓合同軍事演習に初めて投入された2013年に金正恩委員長は「忍耐にも限界がある」と反発していたことを考えると、今後迎撃を命令する可能性もゼロではない。

「B-1B」は超音速で飛行するが、ステルスでないためレーダー網を避けるため超低空飛行する。高度も速度も「SR-71」よりもはるかに劣る。韓国の空軍関係は「敵のレーダーに補足されれば、大規模の爆弾投下は不可能」とみている。レーダーに捕捉されていれば、迎撃される恐れもある。

北朝鮮は昨日、対南宣伝媒体である「我が民族同士」を通じて「B-1B」と原子力空母「カールビンソン」を撃墜、撃沈する仮想映像を公開していた。

「B-1B」は本来、ステルス機である「B-2」爆撃機や「F-22」戦闘機などが敵の防空網を無力化した後、投入される。即ち、米韓連合軍が敵のレーダー網を完全に破壊し、空中権を完全に制覇した後に投入される爆撃機である。

北朝鮮の領空を侵犯しない限り、撃墜される可能性は少ないが、北朝鮮のレーダーに捕捉されていたことで米韓連合軍の間では警戒感が高まっている。

(参考資料:北朝鮮に対する米軍の先制攻撃はいつでも可能な状態

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動開始。98年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー 。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」(飛鳥新社)「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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