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「3大懸案」が同時再燃 悪化の一途を辿る日韓関係

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
日韓対立の「島」と「海」(写真:Fujifotos/アフロ)

釜山領事館前の「少女像」の設置に抗議して一時帰国した長嶺安政駐韓日本大使と森本康敬釜山総領事の帰任の時期について菅義偉官房長官は「諸般の状況を見て判断していく」と述べていたが、二人が9日に帰任してから30日で早3週間経った。

日本は「鳴くまで待とう時鳥」の心境だ。韓国が動くまで、少女像の撤去に向けて誠意を示すまで待ちの戦法だ。だが、「諸般の状況」は対馬から盗まれた仏像をめぐる韓国の裁判結果が追い打ちをかけ、悪化の一途を辿っている。これでは菅官房長官がいくら「(帰任を)総合的に判断して検討する」と言っても戻しようがない。

(参考資料:「戻りたくても、戻れない」 駐韓日本大使の帰任

今後、事態が好転する可能性は期待薄である。慰安婦問題と並ぶ日韓3大懸案である「竹島(韓国名:独島)」問題と「日本海(韓国名:東海)」の呼称問題に飛び火してしまったからだ。

「竹島」問題では来年2月に韓国で開かれる平昌冬季五輪のホームページに掲載された「独島」の表記が不適切として日本五輪委員会(JOC)が削除を国際オリンピック委員会(IOC)に求めたことで「論争」となっている。日本が「五輪での政治宣伝を禁止したIOCの五輪憲章に違反する」として異議を唱え、これに対して韓国は「独島は韓国の領土であるので日本の主張は一考の価値もなければ、対応する考えもない」と強硬な姿勢を崩していない。

加えて、韓国政府は岸田文雄外相が今月17日、「国際法上も歴史的にもわが国固有の領土」と発言したことや日本政府が「竹島は我が国の固有の領土」とする内容を小中学校社会科学習指導要領に明記するよう改定したことに猛反発している。

(参考資料:韓国大統領候補全員が日韓合意見直し、少女像撤去には反対

そして、今度は、島ではなく、海をめぐる対立である。日本海(韓国名:東海)の英語(国際的)「Sea of Japan」表記に韓国が異議を唱えていることによる。

日本海の呼称については「竹島」に比べてホットな問題となっていないが、4月24~28日にモナコで開かれる国際水路機関(IHO)第19回総会で韓国政府はIHOの出版物「大洋と海の境界」の改訂の際に「日本海」の英語表記(Sea of Japan)に韓国政府は東海(「East Sea」)」を併記するよう主張する構えだ。

一般的に知られてないが、韓国政府は1997年の総会で初めて東海を併記するよう問題を提起し、20年間にわたり、この問題で日本と争ってきている。IHOの出版物「大洋と海の境界」は1953年に改訂(第3版)してから64年たっており、速やかに改訂する必要があるが、日本海の表記をめぐる日韓の立場の違いのため第4版を出せずにいる。

国際水路機関会議だけでなく、国際連合地名標準化会議などでも韓国は日本海の名称変更および変更に至るまでの間の併記を要求する運動を行っているが、日本は併記には応じず、「日本海」の単独表記を固守する立場だ。

簡単な話が、韓国からすると、韓国に面した海を日本海と認めるわけにはいかない。だから韓国は併記を求めているが、日本からすると、韓国は地理的に西側に位置しているので、これを東の海「東海」と呼ぶわけにいかない。「西海」ならばまだわからないわけでもないが、韓国は中国との狭間の海域「黄海」を「西海」と呼称しているので、それはできない。韓国からすれば、日本は東側に位置しているので「東海」となる。

韓国は「東海」、日本は「あくまで日本海」と対立するので板挟みあって困るのは国際水路機関など国際機関である。そこで2006年11月の日韓首脳会談の場で日本では「反日大統領」とみられていた盧武鉉大統領が日本は「日本海」と呼び、韓国は「東海」とそれぞれ国内では呼び、英語の呼称だけは「Sea of Japan」でも「East Sea 」でもなく、「Sea  of  Peace(平和の海)」と呼ぼうではないかと提案したが、安倍総理に相手にされなかった。

日韓が領有権を主張している「竹島」に関しては世界中でいろいろな表記が使われ、全部で16あるようだが、世界地図で最も多く使用されている表記が「リアンクール島」。1849年にフランスの鯨船、リアンクール号が竹島を発見した時に付けられた名前のようだ。

盧元大統領は「平和の海」が受け入れられるならば島についても「友好の島」(Island of friendship)にして水産資源を共同で開発するというというアイデアもあったと聞いているが、幻に終わってしまった。

日韓はこの無人島をめぐっていつまで対立を続けるのだろうか?一層のこと火山島なので、噴火し、自然消滅してしまえばと思っている人もいるのでは?

(参考資料:「日韓慰安婦合意」に「密約」があるのか

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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