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北朝鮮のICBM発射の「Xデー」は?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
昨年移動式発射台から発射された中距離弾道ミサイル「ムスダン」

金正恩委員長が今年の「新年の辞」で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射準備が「最終段階に達した」と述べたのを機に北朝鮮のメディアはほぼ連日「最高首脳部(金正恩委員長)が決定する、任意の時刻と場所で発射される」と伝えている。

(参考資料:北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射するか

直近では、3日前の21日に労働新聞が「(ICBMの発射は)誰も文句が言えない正々堂々とした自衛措置である」と断じたうえで「誰が何と言おうが、我々の大陸間弾道ミサイルは最高首脳部が決心すれば、任意の時刻と場所で発射されるだろう」と報道していた。

では、北朝鮮はいつ、どこから発射するのだろうか?

発射の「Xデー」については、当初、噂されていた1月20日のトランプ大統領の就任式は回避された。「もしや」との観測が流れていたが、北朝鮮は動かなかった。米朝交渉への未練から晴れやかな舞台に冷水を浴びせるのは得策でないと判断したのか、あるいは、この日から22日までの3日間、日米韓がイージス艦を配備し、探知、追跡、迎撃の態勢に入っていたことから避けたのかは定かではない。

(参考資料:米国は北朝鮮のICBMを撃墜できるか

北朝鮮のミサイル発射や核実験は統計的にこれまで記念日や節目の日にぶつけてやる場合が多い。順当ならば、父親の故金正日総書記の75歳の誕生日にあたる2月16日頃とみられるが、発射準備が万全ならば、もっと早まるかもしれない。「米韓合同軍事演習の中止はない」とトランプ政権を見限っているならば、あえて遅らせる理由はないからだ。

北朝鮮の「ラッキーナンバー」は「9」である。金正日総書記の誕生日が「2月16日」(「2」と「1」と「6」を足すと「9」)であり、建国の日が「9月9日」であることと関係しているようだ。

人工衛星1号(テポドン1号)を発射したのは1998年8月31日で、数字を全部足すと「9」になる。北朝鮮史上初の2006年の核実験は「10月9日」と「9日」に決行していた。2009年の「テポドン2号」は「4月5日」に発射されている。

後継者の金正恩委員長も「1月8日」生まれであることからこのラッキーナンバーをそのまま引き継いでいるようだ。2012年の「テポドン」発射は「12年12月12日」で、2013年の3度目の核実験も「13年2月12日」とこれまた「9」となる日を選んでいた。

昨年1月の核実験こそ1月6日に行われているが、金委員長が核実験を最終決断し、「1月6日にやれ」と署名した日は前年の「12月15日」であった。また、翌月の「衛星」と称する「テポドン3号」は「2月7日」、それも9時きっかりに発射していた。

仮に、今回もゲンを担ぐなら、「9」となる日を選ぶ可能性が考えられる。となると、今月では「1月26日」と「9」という数字が入っている「1月29日」、来月では「2月7日」か「2月9日」、そして「2月16日」が「Xデー」として有力だ。

では、どこから発射されるのだろうか?

移動式発射台に搭載された北朝鮮のミサイル2基が平壌のサンウム洞にあるミサイル工場からどこかに移動される場面が米国の偵察衛星によってキャッチされているが、行先は不明のままだ。

北朝鮮には弾道ミサイルの発射場は数多くある。

長距離弾道ミサイル「テポドン」は日本海に面した咸鏡北道の舞水端と、平壌から200キロメートル離れた黄海(西海)に近い平安北道の東倉里から発射されており、昨年初めて発射実験が行われた中距離弾道ミサイルの「ムスダン」は4月から6月までは日本海に面した江原道の元山のカルマ飛行場付近から4回計6発、10月の2回(2発)は平安北道の亀城市にあるパンヒョン飛行場付から発射されている。

また、在日米軍基地に標準を定めている中距離弾道ミサイル「ノドン」はこれまでは平安南道の粛川と日本海に面した江原道の旗対嶺から発射されていたが、昨年の9発は黄海北道の黄州、黄海南道の殷栗からも発射されていた。

この他にも咸鏡南道の端川、咸興、先徳、黄海北道のサッカンモル、黄海南道の開城と長山串にミサイル発射場があるが、ICBMの発射は元山のカルマ飛行場付近か、亀城市のパンヒョン飛行場付近から発射される可能性が高い。

元山のカルマ空港についてはジョンズ・ホプキンス大学のジョセフ・バミューズ米韓研究所研究員が北朝鮮専門ウエブサイト「38North」に現場の衛星写真を分析した結果として「ICBM発射の兆候がある」との記事を載せていることにある。

また、亀城市のパンヒョン飛行場が要注意の理由は昨年10月の失敗したミサイルは「ムスダン」ではなく、長距離弾道ミサイル「KN-08」の発射テストの可能性が指摘されていたことにある。

疑問を提示したのはジェフリー・ルイス非拡散センター東アジア担当局長で、当時発射場となったパンヒョン飛行場を撮影した商業用衛星写真を分析した結果、試験場に残されていた焼け跡が「ムスダン」のそれよりもはるかに大きかったことから「KN-08」の可能性をワシントンポスト紙(10月26日付)で指摘していた。

一段部分のミサイルの移動が報じられたのが先週18日。発射台と弾頭の組み合わせは数日もあれば十分と言われていることから準備は整っているはずだ。時期的にはいつ発射されても不思議ではない。後は、金正恩委員長の「ゴーサイン」あるのみだ。

「レッドラインを越えたらただでは済まさない」とのトランプ政権の警告を無視してまで金委員長は発射ボタンを押すつもりなのか。目が離せない。

(参考資料:どうにも止まらない北のミサイル発射 列島をいつ飛び越えるか!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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