トランプ大統領当選で北朝鮮とは電撃和解か、それとも戦争か!

大統領に当選したドナルド・トランプ氏(写真:ロイター/アフロ)

ドナルド・トランプ氏が米国の第45代大統領に当選した。多くの国々が、想定外の「トランプ勝利」に衝撃を受けているが、韓国や北朝鮮も例外ではない。トランプ大統領誕生で朝鮮半島に激震が走ることが予想されるからだ。

トランプ次期大統領が駐韓米軍の防衛費を韓国政府が増額しなければ、撤収すると公然と叫んでいることや来年上半期までの配備が決定した高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の無用論を主張していることに韓国は不安を感じているが、最大の不安はトランプ政権が金正恩政権対して両極端な対応をする可能性だ。

トランプ次期大統領は5月17日に英ロイター通信とのインタビューで「金正恩と北朝鮮核問題について対話することに何ら問題はない」と金正恩委員長との首脳会談に意欲を示す発言を行っていた。

対立候補のヒラリー・クリントン氏から「加虐的独裁者を擁護するのか」と噛みつかれても、翌6月のアトランタでの遊説で「金正恩氏と会うため自分が訪朝することはない」と釘を刺しながらも「話し合うのがなぜだめなのか」と前言を撤回しなかった。さらに「金正恩氏が米国に来るのなら会う。会議テーブルに腰掛けてハンバーガーを食べながら、もっといい核交渉を行う」と言い切った。

この発言に北朝鮮の政治局員である楊亨變最高人民会議常任副委員長は「誰が大統領になろうと関心はないが、(トランプ氏の発言は)悪くはない」と歓迎の意向を表明し、北朝鮮の対外宣伝ウェブサイト「朝鮮の今日」にいたっては論説でトランプ氏を「暴言ばかりの変わり者でも、無知な候補でもない。先見の明がある賢い政治家」と評し、「米国の有権者はクリントン氏を選ぶべきでない」とトランプ候補に肩入れしていた。

(参考資料:「トランプ大統領」で「金正恩訪米」はあり得るか

史上初の米朝首脳会談はトランプ氏が金委員長の訪米を招請しない限り、また、金委員長にその気がなければ、不可能である。知られているように金委員長は海外留学経験もあり、初歩的な英語及び仏語は喋れる。父親の故金正日総書記と違い何よりも飛行機嫌いでもない。自ら操縦桿を操るほど飛行機好きである。仮に金委員長が訪米を決断すれば、トランプ政権が北朝鮮の核とミサイル開発の凍結を条件に交渉に臨む可能性は十分にある。

しかし、仮に首脳会談が開かれない、あるいは米朝対話が決裂となった場合は、トランプ政権が一転して軍事行動に走る可能性もこれまた極めて高い。

トランプ氏が核とミサイル開発を止めない金委員長をこれまで「頭がおかしい」と「狂人」扱いし、北朝鮮に対しては軍事力行使も辞さないと強硬な発言を繰り返してきたのは周知の事実である。実際に共和党予備選でも「今日の世の中で核兵器が最も大きな脅威」としながら「この人物(金正恩氏)が突き進むのを放っておいてはならない」と、こぶしを振り上げ支持者に訴えていた。

Mペンス副大統領候補も副大統領候補TV討論で「トランプ候補が大統領になれば、北朝鮮に米国のパワーを侮るようなことさせない」として「我々は力による平和の時代に戻る」と、共和党政権になれば軍事力を通じた対北圧力措置を取ることを示唆していた。

共和党は7月に発表した政治綱領で北朝鮮を「キム氏一家が統治する奴隷国家」と規定していたし、トランプ大統領の外交・安保の指南役であるマイケル・フリン元国防情報局(DNI)局長は先月訪日した際「核実験やミサイル発射など挑発を続ける北朝鮮の現体制(金正恩体制)を存続させてはならない」と日本のメディアとのインタビューで語っていた。

北朝鮮との交渉に失敗すれば、トランプ氏が北朝鮮を叩く可能性が大であるもう一つの根拠がある。

トランプ氏が2000年の大統領選に改革党の候補として出馬した際に北朝鮮の寧辺核施設ついて「精密打撃(surgical strike)すべき」と主張していたことを知るものは少ない。当時出版した著書「我々にふさわしい米国」で「北朝鮮の核能力は米国に直接的な脅威」とし「経験がある交渉家として見る場合、北朝鮮が核・ミサイルをシカゴとロサンゼルス、ニューヨークに落とす能力を備えることになれば、その時はこの狂った人たちとの交渉は効果がないだろう」と書いていた。

(参考資料:全面戦争を覚悟したクリントン政権時代の「北朝鮮攻撃計画」

続いて「私は核戦争(thermonuclear war)を望まないが、交渉が失敗する場合、北朝鮮が実質的な脅威を与える前に、我々が先に無法者を狙って精密打撃するべきだと考える」とし「私は好戦狂ではない。ただ、北朝鮮の核脅迫と米国の人命被害を防げるなら、大統領として通常兵器を利用して北朝鮮の目標物を打撃する命令を下す準備ができている」と綴っていた。トランプ氏はまた、1981年にイスラエルがイラクのオシラク原子炉を爆撃した例を挙げ、「国際社会から非難されたが、イスラエルは生存のためにするべきことをした」と評価していた。16年前の発言ではあるが、北朝鮮の核問題へのトランプ次期大統領の認識が分かる部分だ。

今月1日、新任のブルックス駐韓米軍司令官は「我々はあらゆる 準備態勢を整えていく中で戦争という最悪の状況は避けたいが、戦争をするしかないという、そういう瞬間には戦争を準備すべきだろう」と語っていたが、トランプ大統領から「レッツゴー」との命令が下れば、米軍はいつでもやれるということだ。

(参考資料:北朝鮮と対話か、それとも先制攻撃か 揺れる米国

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動開始。98年 ラジオ「アジアニュース」パーソナリティー 。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。著書に「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人、残念な日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など25冊

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