北朝鮮への「最大級の制裁」に賛成?反対?ハムレットの心境の中国

北朝鮮の核・ミサイル開発に協力していた中国企業の美人女性オーナー

国連安保理で議論されている北朝鮮追加制裁が「最大級の制裁」(尹炳世韓国外相)になるかどうかは、すべて中国の出方にかかっている。

中国の李克強首相は昨日、国連で演説し、北朝鮮問題について「対話での解決」を強調し、制裁については一言も言及しなかった。オバマ大統領が「代価を払わす」と強調し、安倍首相もまた「北朝鮮の計画をくじかなければならない」と制裁の必要性を訴えたのとは好対照だ。

李首相は直前のオバマ大統領との会談では北朝鮮が新ロケットエンジンの噴出実験に成功したと発表したことに苛立ったのか安保理が北朝鮮の核実験に対して新たな対応措置を取ることに賛成の意向を表明していた。

ところが、20分間の演説で李首相が北朝鮮問題について触れたのはわずか20秒。「我々は朝鮮半島の非核化に専念すべきである」と北朝鮮の非核化では国際社会と協調する姿勢を示したものの、その方策をめぐっては「対話と交渉を追及すべきである」との原則論に終始した。安倍総理が15分の演説の内、半分近くを北朝鮮に割き、北朝鮮の核とミサイルは「人類良心の脅威である」と訴えたことと比べるとはるかに後ろ向きであった。

(参考資料:中朝は寄りが戻るのか

しかし、中国政府は李首相の言葉とは裏腹にその一方で、酸化アルミニウムなど核・ミサイル開発に転用可能な物資を北朝鮮に輸出した容疑で中国企業グループ「遼寧鴻祥実業集団」の捜査に乗り出した。オバマ大統領と李克強首相との会談直後だけに中国が米国の要請に応じ、北朝鮮制裁に本格的に乗り出す兆候ではないかと一部ではみられている。

「遼寧鴻祥実業集団」は北朝鮮との合弁会社を含め、貿易、物流、観光分野など系列会社6社を率いる企業グループで、創業者は2011年に丹東市十大女性企業家、2012年には遼寧省優秀企業家に選ばれている馬暁紅氏(45歳)。会社のウェブサイトには「我々は貿易を通じ、朝鮮(北朝鮮)の社会主義建設の参加者、推進者、目撃者としての使命を果たしていく」との馬氏の挨拶文が掲載されている。

中国当局による「遼寧鴻祥実業集団」への捜査が北朝鮮制裁に自主的に、また本格的に協力する証なのか、それとも米国に証拠を突きつけられたため動かざるを得なかったのか、あるいはセカンダリー・ボイコットを防ぐための防波堤なのか、真意は不明だが、国際社会だけでなく、中国国内でも北朝鮮への制裁を強めるべきとの声が日増しに高まっており、中国政府としても無視できないのが現状である。

英語版の「グローバルタイムス」は21日付で「中国は北朝鮮に新たな制裁を科すことで核開発を防ぐべき」と論じ、また遼寧省のル・チャオ社会科学院研究員は「これまでの制裁ではだめだと分かった以上、新たな制裁を科し、北朝鮮に強力なメッセージを伝える必要がある」と主張している。

(参考資料:異例ではない北朝鮮の対中批判

議会を中心に米国の中国への圧力も増しており、国家安全保障会議(NSC)のメンバーであるベン・ローズ大統領副補佐官とNSCのジョン・ウルフスタール軍縮・核非拡散担当専任局長はそれぞれ北朝鮮への戦略物資の輸出禁止の必要性を強調し、中国に協力するよう促していた。

ローズ副補佐官は国連総会が開かれているニューヨークで記者会見を開き、「遼寧鴻祥実業集団」への中国の取り締まりについての直接的言及は避けつつも「中国には多様な物資や技術の対北輸出遮断を促す内容を含む安保理決議を忠実に履行する義務がある」と迫り、さらに「我々は追加制裁を招く北朝鮮のこのような挑発サイクルに対応するため適切な対応策を論議していくつもりだ」と、中国に追加制裁への同調を求めていた。

ウルフスタル専任局長もまた、ワシントンで開かれた米韓のセミナー「第4回米韓対話」での演説終了後に「中国の遼寧鴻祥実業集団が北朝鮮に輸出した酸化アルミニウムは核兵器を開発するには十分ではない」との質問に「北朝鮮の大量破壊兵器プログラムに少しでも関連がある物資ならば、それが鉛筆1ダースであっても、金1オンス(28.35グラム)であっても、石炭一隻の分量であっても、量が重要なのではない。人道目的の物質であることを確実に証明できない限り、対北輸出は禁止される」と語り、中国による制裁の抜け穴を徹底的に封じ込める考えを明らかにしていた。

韓国の民間シンクタンク「峨山政策研究院」と米国の安全保障シンクタンク「国防問題研究センター」は20日、「国際社会の制裁規定を巧みにかいくぐっている中国企業248社、個人167人、船舶147隻を新たに発見した」として中国当局に規制するように迫っているが、第二、第三の「遼寧鴻祥実業集団」が出るかで、北朝鮮制裁への中国の本気度がわかる。

北朝鮮が安保理の追加制裁の強弱に関係なく、6度目の核実験やさらなる弾道ミサイルの発射を示唆している現状では、中国としても、なす術がないのが実情かもしれない。

(参考資料: 国連安保理は金正恩委員長を制裁対象者に指定できるか

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動開始。98年 ラジオ「アジアニュース」パーソナリティー 。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。著書に「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人、残念な日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など25冊

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