どうして生理の話はタブーなのか

月経前症候群の研究が進まない理由の一つは研究資金不足(写真:アフロ)

フランスのLe Monde紙はこの夏、「誰にも話せない生理」特集を組んだ。その一つは、毎回1ページを割いた世界数カ国の生理事情、「フランス:ホームレス女性はどう生理をサバイバルするか」、「ケニア:生理用品を購入するために売春するスラム街の女の子たち」、「インド:生理で休む女性労働者に子宮摘出」、「韓国:ソウル市で進む中高生の生理用品無償化」などだった。

しかし、それを読んでいると、度合いの違いはあれ、どこの文化圏でも生理はいまだにタブー、恥ずかしいことらしい。私が子どもの頃、日本では「今、アレでね」と指示語を使って話していた。今、暮らしているフランスでは、「ちょっと具合が悪くて」、あるいは「イギリス軍がやってきた」という笑える言い回しもある。ワーテルローの戦いで、ナポレオンが率いるフランス軍がイギリス軍に敗れたことに由来しているらしい。当時のイギリス軍は真っ赤な軍服を着ていたからだ。

生理イコール恥、穢れ

ところでいったいいつから、なぜ生理は恥ずかしいことになったのか?

人類学的な見地から、古代から男性が意志的にする戦いや狩猟で流す血は名誉につながるが、女性の経血は自分の意思とは関係なく流れ、コントロールすることができないことから否定的に捉えられるようになったらしいと考える学者もいる。(最近は、英語でfree flow instinctという骨盤底筋を使って出血をコントロールするテクニックもよく話題になっているが)

また、血を流す女性の存在は、狩猟のときに不運をもたらすと考えられ遠ざけられ、それが疎外につながったとも。

その後、3大宗教は、こうした傾向を言説化することでさらに確固たるものにした。旧約聖書のレビ記15章19節には「女に血の流出があったならば、その女は7日の間、不浄である。その女に触れるものは夕まで汚れるだろう」。コーラン2章222節には「月経時には妻から遠ざかり、清まるまで近づいてはならない」とある。

生理に対するタブーは20世紀になっても衰えなかった。1970年代になってからフェミニズムが盛んになったが、どちらかというと男女平等を求め「男並みにバリバリ働く」ことに価値が置かれたため、女性の身体に特有な問題である生理についての議論は置き去りにされてきたという背景もあるらしい。

そのため、医学的な観点からの生理に関する研究も遅れた。10人中9人の女性にある月経前症候群(生理前に現れる不快な症状)は1931年頃に発見されたが、その理由は、いまだに明確にされていない。それに対して、5人に1人以下の男性しか患わない勃起障害に関する研究はその5倍も発表されている。

初潮の思い出

同紙では読者の初潮体験の思い出をオンラインで募集した。その結果を読むと、今の若い人々の間でも、初潮の思い出が悲惨という人はかなりいるから驚きだ。いくつか抜粋してみよう。

26歳:母から生理用品は自分の部屋に隠し、捨てるときは見えないようにゴミ箱の底に入れるように言われた。

46歳:25歳になるまでなぜ生理が来るのかわからず、当時、恋人だった生物学の学生に初めて教えてもらった。

21歳:父の家にいるときに生理になり、(両親が離婚しているので)どうしていいかわからなかった。義理の母に言いたくなかったので、台所のタオルを挟んで母の家に戻った。

38歳:出血がついた下着を母に見せたら、母が「気落ち悪い」と言って洗濯物箱をよこした。

17歳:母がカップの入れ方もタンポンの使い方も教えてくれた。

28歳:学校で黒板に答えを書くときに立ち上がったら椅子が血まみれになっていて、みんなに騒がれた。このことを家で母に言ったらビンタを食らった。

61歳:生理のときはスポーツをするなと言われ、病気でもないのに理不尽だと思った。

27歳:小学校の最高学年(10歳から11歳)で授業中に習った。母は私に何も教えてくれなかったのでびっくりすると同時に、裏切られた思いがした。

このように、21世紀になった今でも、「女性の性に関わる問題は恥」という感覚は、今も、女性たちを蝕んでいる。

例えば、フランスでは、働く女性の更年期障害の問題についてもほとんど取り上げられることがない。イギリスのチャンネル4局では、この10月18日「世界更年期障害の日」に、更年期障害がある女性に仕事をしやすい環境を作ることを発表した。45歳から55歳の働く女性のうち59%が「更年期障害ゆえに働きにくい」と言っているからだ。辛い症状には有給休暇を、また、ホットフラッシュのある人には涼しくて静かな部屋を用意するなどの工夫がされる見通しだ。