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なぜ起きる? PTA会計担当者が1050万円もの横領

大塚玲子ライター
複数年にわたって横領が続くケースも珍しくありません(写真:beauty_box/イメージマート)

 広島市の公立小・中学校のPTA会計担当者が、およそ1,050万円を横領していたことが報じられ、驚きの声が広がっています。参考)PTA会計担当が1050万円横領 広島市西区の公立小・中学校 | TSSテレビ新広島

 今回は確かに額が大きいですが、PTAにおける横領自体は、決して珍しい話ではありません。数か月に一度は全国どこかしらのPTAで横領が見つかっていますし、去年から全国紙で報じられたものだけでも、こんなにあります。

〇2021年6月 山梨県立高校のPTA職員が527万円を不正に流用

〇2021年3月 埼玉県立高校の主事がPTA会費などから336万円を横領

〇2021年3月 愛知県立高校の事務長がPTA会費や生徒会費から518万円を横領

〇2020年11月 和歌山市立幼稚園の教頭がPTA会費などから約9万円を横領

〇2020年6月 姫路市立中学校の事務職員がPTA会費143万円を横領

〇2020年3月 千葉県立高校の主事がPTA会費などから約22万円を着服

 100万円を超えるものは大体、複数年にわたって横領が続いてきたケースでした。

 なお、新聞等で報じられるのは教職員やPTA職員による横領が多いですが、今回は「会計担当者」としかわかっていません。教職員でなく、保護者である可能性もあるでしょう。

 では、なぜこういったことが起きるのでしょうか。考えられる原因はいくつかあります。

 まず、任意の団体なので、きちんと会計監査が行われていない場合があること。会計監査の担当者が報告書だけを見て、通帳まで確認していないこともあります。

 それから、PTAによっては会計担当者が1人しかおらず、チェック機能が働かない場合があること。「会計は必ず2人以上」と定めているPTAもありますが、担当が1人で、しかも通帳とハンコを一緒に管理しているケースもあります。

 またPTAによっては会計の任期上限がなく、長い間同じ人物が担当しているために、会計がブラックボックス化していることもあります。今回も、2校分とはいえ相当な額なので、何年も横領が続いて、蓄積していたのかもしれません。

 小中学校の保護者としてPTAの会計を担当した経験のある、千葉工業大学の福嶋尚子准教授(教育行政学)は、このように指摘します。

 「多額な予算の処理を会計担当者1人に任せていたのであれば、問題です。チェック機能が働かない環境では、誰が担当でも横領は起こり得ます。今回、横領を犯したのは会計担当者としかわかっていませんが、もし一保護者がそれだけの裁量を持たされていたとしたら、PTAの体制そのものに問題があったという視点をもつ必要があるでしょう。

 また、会費が必要以上に徴収されていたのではないか、ということも懸念されます。会員から集金した会費が容易く横領され、気づかれないような管理だったことが大きな要因と思いますので、この事件を契機に、ほかのPTAでも改めて体制を見直し、会費額の適正化、余剰金の有効活用に向けての動きが求められるのではないでしょうか」

 筆者からも少々付け加えると、PTA会費を払う私たち保護者や教職員が、会費の用途にもっと関心を払うことも必要かもしれません。PTAでは会費額が必要以上に高く設定され、多額の余剰金を抱えていることが多いため、横領が起きやすい面があります。会員が決算書に目を通して、不明な点を追究していれば、こういった事件は起きづらくなるでしょう。

 今年の春、全日本私立幼稚園PTA連合会で4千万円を超える使途不明金が見つかりましたが、これも同様です。子どものためというと、保護者はあまり考えずにお金を払い、すぐに忘れてしまいますが、どこでどんな使われ方をするか、もっと注意深く確認する必要もあるように思います。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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