最近耳にする、コミュニティ・スクール(学校運営協議会)制度。略称、CS。一般保護者にはほとんど知られていませんが、文部科学省は十数年前から、これを全国に広めようとしています。

 CSというのは、地域の人や保護者もいっしょに学校運営に取り組む仕組みです。学校に言われたことをただやるのではない点が、画期的です。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律

 ただ現実には、校長の話を聞いて協議なく承認する「形だけ」の協議会になってしまう例もよく聞きます。また現状、協議会の参加者を校長が選ぶ「関係者だけの仕組み」になっている点にも、疑問を感じます。

 CSを、みんなにとって意味ある有効な場にしていくには、何が必要なのか? 前編に続き、CS先進地のひとつ、三鷹市で長年学校にかかわってきた、四柳千夏子さんにお話を聞かせてもらいました。

*「校長の辛口の友人」が必要なワケ

――CSが形だけの場になってしまう、という話もよく聞きます。どうしたらCSを有効に使っていけるでしょうか?

 三鷹がCSを始めようとしていたころ、当時の貝ノ瀨滋教育長が私たちに繰り返し言っていたのは、「校長先生の辛口の友人でいてください」ということでした。CSって、よりよい学校をつくるために地域や保護者も当事者として話し合っていく場なので、ただ承認するのでなく、言うべきことは言わないといけません。

 だから本当に辛口で、「校長先生、それ違うよね」ということも平気で言っていました。でも言ったからには、私たちもいっしょにやるよ、という感じです。校長先生も私たちも、言いたいことを本音で言い合っていました。お互いに信頼関係があったんですね。

 校長先生にはやはり「どういうことがしたいのか」を語ってもらう必要があるので、私たちはそれを求めていかなければならないし、もし校長先生のビジョンが私たちの地域や学校の子どもたちに合わないと思ったら、それを発言しなければいけません。

 だから、校長先生の意識やマネジメントというのが、すごく大事ですよね。「自分の学校経営にこの人たちが必要で、意見を言ってもらわないといけない」ということを、認識していていただかないといけない。

 もし「保護者はクレームを言う人たちだ」くらいにしか思わない校長先生だったら、うるさく言われないようなことしかCSで言わないようになってしまって、それではもう、いい議論はできなくなりますよね。

 そうではなく、校長先生が地域住民や保護者を「本当に頼りになる人たちなんだ」と思っていれば「こういうとき、どうしたらいい?」と相談したり、こちらもアドバイスをもらったり、という関係になると思うんです。だから本当に、校長先生の考え方次第というところはあるのかな、と思います。

――まずはやはり校長先生ですね。PTAでもたまに、校長と保護者の話し合いの場を提供する例がありますが(関連記事)、これも校長先生がその気にならないと、実現しないようです。

 そこはCSもPTAも同じかもしれないですね。アンテナの高い校長先生なら、CSをものすごく利用すると思うんです。「地域の力、使っちゃおう」みたいな感じで、こちらも「応えちゃおう」となって、いい循環ができていく。でもそれって、校長先生が替わった途端にしぼんでしまうこともあって、それはやっぱり校長先生がCSをどんな存在と捉えて、自分の学校経営にどう生かしていこうと考えるか、によるところが大きいと思います。

*PTAを「CSの一員」と見る視点

――保護者の代表は、CSの場において、どんな意識をもつことが必要でしょう?

 現状、CSの保護者の代表は、あて職としてPTA会長さんが出ていることがほとんどですが、PTA会長さんはそこで、保護者を代表した意見を言わないといけないですよね。

――それができたらいいですが、現状ほとんどのPTAは、保護者みんなに意見を聞くような活動をしていません。会長さん個人の考えを話すことになるのでは?

 そこで、学校の外部評価アンケートというものがあるんです。いまどこの学校でも、年に1回、学校から各家庭に「お子さんは学校を楽しいと言っていますか」といったアンケートを取っていると思うんですが、そこに自由記述でいろんなことを書いていただく。そうすると、CSをやっているところでは、そのアンケートを分析して、成果や課題を来年度の学校経営計画に反映させることになっているんです。

――そうなのですか。でも一般の保護者は、学校の経営計画も、アンケートがそのように使われることも、知らされていないことが多いです。

 そこは先ほども言いましたが、外部評価アンケートに書かれたCSや保護者の意見を、校長先生がどう受け止めているかによると思うんですよね。意見を生かしていきたい、と思えば、建設的な意見が出てくるように、学校のホームページや学校通信を通じて、教育の基本方針や具体的な教育活動などを具体的にわかりやすく、多くの保護者に理解してもらえるような発信をするようになるでしょうし、アンケートの重要性なども説明するようになるでしょうね。

 だから校長先生はもちろんですが、学校運営協議会委員がCSの本質を理解して、その機能を最大限に生かすことを考えていくことが、とても大切になります。

――これからのPTAは、「学校のお手伝い」は地域学校協働活動に、学校に意見をあげる役割はCSに任せて、「CSに保護者全体の意見を届ける」役割を担う部門に変わってもいいのかもしれないですね。Webアンケートで保護者の意見を集めたりして。

 CSの側からPTAを見たときに、保護者の作る組織としての期待感があります。子どもたちの育ちへの直接的な当事者なわけですから、学校を知ってもらい、たくさんの意見を出してもらいたいですし、ときには熟議を通して対話しながら、学校と相対する団体ではなく「当事者同士」として相互理解してもらいたいと思います。

 一方、PTAの側からCSを見たとき、自分たちの組織の在り方も含め、「CSの一員」という視点で役割を見直してもいいのかな、と思います。これからは、CSや地域学校協働活動があることを前提に、多くのPTAが抱えている担い手不足や活動の義務感、そもそも「P」と「T」であらねばならないのかなど、PTAの困り感をCSに投げかけてみてもいいのではないかと思います。

*「会長ではなく、代表」の意味

――もう一点気になるのが、現状のCSには、PTA会長さんなど本部役員経験者しかかかわれない点です(*1)。私のようにPTAで本部役員をできなかった人は、望んでもCSに近づけません。

 公募とかも、あっていいのかもしれないですね。CSの委員は校長の推薦を受けて、教育委員会が任命しているのですが、多くの校長先生は、この人なら学校の応援をしてくれそうだ、と思える顔のわかる人を選んでいるかと思います。それが保護者の代表としてはPTA会長さんだったわけですが、これからCSの基盤がしっかりできてきたら、一般公募を入れる決断もできると思うんです。

――ひっかきまわされたくないから校長先生が選びたい、というのも現実問題としてよくわかるのですが、でもそれはやはり、民主的なやり方ではないですよね。

 そうですね、そこはこれから。三鷹市の場合は風通しをよくするため、委員の任期が最大でも8年と決まっているので、じゃあ次に誰がやるのか、というところで、委員選びをすることになります。

――あとは、先ほどおっしゃったように、誰がCSに出るとしても、その人が「保護者を代表した意見を言わないといけない」と意識することも大事ですね。

 そうなんです。ちょっと話が遡りますが、うちの小学校のPTAって、私がやっていた頃は代表制だったんです。「会長」じゃなくて「代表」。P連の名簿をつくるときも、うちだけ必ず名前の前に「代表」と但し書きを入れるから、名前の文字が小さくなるんです(笑)。これは、代々の先輩から必ず言われていたことでした。

 その後、いちいち「代表」というのがめんどうで、「会長」に変えようとしたときがあって。そのときたまたま、代表制になった当時のPTA会長だった大先輩に当時の話を聞く機会があったんです。「私たちはたくさんいる保護者の代表なの。たとえば会社の代表取締役のような、ピラミッドの頂点にいる会長ではないんだ」って。会長制だったものを代表制に変えた、すごいこだわりがあったことを知ったんです。

――その認識は、ものすごく重要ですね。

 そうですね。「会長」でも「代表」でも、たくさんいる保護者の「代表」という役割を担っていることは、肝に銘じなければいけない。「会長」ということで、なにか自分にすごい特権が与えられているわけではなく、あくまで「代表」だということを自覚しないといけない、っていうことだと思っています。

*「親でも先生でもない大人」としての地域

――CSに地域住民が入ることには、どんな意味があるのでしょう?

 CSが始まった最初の頃は私も保護者でしたし、地域が入るということに違和感がありましたけれど、今では当然のことと思っています。子どもたちは学校のなかだけで生きているわけでなく、大半は地域で生活しているので、その子どもたちをどう育てていくかというのは、地域の問題でもあるわけです。

 たとえば、地域学校協働活動で中学校の花壇づくりをしていると、子どもたちが「何やってんの」と言ってきて、「じゃ、いっしょにやろうよ」みたいになったりする。そういう、先生でも親でもない大人が周りにいるというのは、子どもにとっていいことじゃないかなって思うんですよね。

 親はどうしても子どもにうるさいことを言っちゃったりするし、先生は最終的には子どもを評価する人だったりするけれど、地域の私たちって、その子が家や学校でどういう子かって、全然関係ないんですよ。目の前で悪いことをしたら「ダメだよ」って言うし、いいことすれば「すごいじゃん」ってほめる。そういう大人がたくさんいることって、子どもたちがいろんな目で見てもらえることになります。

――「親でも先生でもない大人」の目が、子どもたちのまわりに複数あることは、大事なことと思います。よく学校が口にする「地域」って、寄付やお手伝いのリソースとしてのそれだったりするので、もやっとするのですが。

 ありますね、「地域のおかげで助かってます」と言っておけばいい、みたいなところ。地域のほうも「学校のためにやってあげている」「だからちょっと特別扱いしなさいよ」みたいな、そういうちょっと貸し借りの関係になりがちだな、とは思います。

 私は学校から「助けていただいて、ありがとうございます」と言われると、何が「ありがとう」なの? と思ったりもします。だから「すみません、私たちが助けてるのは先生じゃなくて、子どもたちですから」と言っている。辛口なんです(笑)。

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四柳さんのインタビューは、以上です。この取材に関する筆者の考察は『教職研修』(教育管理職のための総合研修誌)の連載に執筆します。