過去長い間、多くのPTAは保護者と教職員を自動入会させ、本人の意思確認をせずに会費徴収を行い、活動を強いてきました。でも最近は、本人の意思を尊重する運営方法に改めるPTAが増えつつあります。

 たとえば千葉県の松戸市立栗ケ沢小学校PTAは、ポイント制(*)を廃止して手挙げ方式に変更し、入退会自由を前提に仕組みを整備。さらに周年行事を見直す、近隣の町内会との関係を再構築するなど、さまざまな取り組みを進めてきました。前回に続き、栗小PTA会長の竹内幸枝さんに、お話を聞かせてもらいます。(取材は2020年12月)

*休止した活動も、やりたい人が現れれば復活

――2019年度からポイント制をやめて、やりたい人が委員をやる形にしたということですが、その後、何か変わったことはありますか?

 活動の雰囲気がとてもよくなりました。以前はポイント制で、活動しない人・活動できない人が高学年で矢面に立たされるシステムでしたから、「スリム化して負担が減った活動に5ポイントも与えるのは多すぎる」とか「サークル活動やPTA活動ではないものにまでポイントをつけるべきでは?」など、ポイントに関する議論が白熱することが増え、子どもたちのPTAではなく、ポイントのためのPTAになりかけていました(苦笑)。

 ポイント制をやめたことにより、活動する人数はとても少なくなってしまいましたが、自ら手を挙げてくれた前向きな人たちの集まりですから、何しろ活動の雰囲気がいい。互いが思いやり、協力しあって楽しく活動できているようです。

――PTAが保護者の関係を荒ませるより、断然いいですね。活動の中身はどうですか?

 2019年度は人が集まらなかった広報委員会と推薦委員会を休止にしたんですが、今年度は広報が復活を遂げました。「広報って休止してますけど、やってもいいんですか?」と問い合わせがあり、「やりたい人がいたらスタートするシステムなので、どうぞどうぞ、手を挙げてください!」と言って。「やっぱり新学期の先生紹介号は出したいですよね」といった辺りからスタートして、今いろいろと、一番活発です。

――私はPTAの広報はお金がかからないWebもいいと思いますが、顔写真などWebでは出しづらい情報もありますね。

 ちなみにうちは、ホームページとLINEの公式アカウントももっています。印刷するほどじゃないけれど広報したい内容は、ホームページに載せたり、LINEで配信したりして。たとえば読み聞かせサークルさんが、今日は何年何組でこんな本を読みました、と絵本の画像とともにLINEで配信すると、後で親御さんがお子さんと「今日なんとかって本の読み聞かせしてくれたんだって?」なんて会話ができるんですね。LINE配信、便利ですよ。コロナ禍でも、PTAからの発信は一切滞りませんでしたし、むしろコロナ禍だからこその発想で活発な1年でした。

読み聞かせを報告するLINE配信の一例
読み聞かせを報告するLINE配信の一例

――手軽でいいですね。LINEの公式アカウントというのは、簡単につくれるんですか?

 はい、PTAなら無料の「未認証アカウント」というのでOKです。応答モードを「bot」にすると一方通行で配信できますし、「チャット」にすると個別にやりとりもできます。うちの場合、在籍保護者の個人情報をなるべくもたないようにするため、PTA内は「bot」モードで運用していますが、町会・自治会など地域の方向けのアカウントは「チャット」モードにして、情報収集にも使っています。

*周年行事も根本から見直し、積立金もナシに

――前回、「保護者全員で割り勘するのが妥当だ」という話になるような支出を一切やめた、というお話を聞かせてもらいました。そのとき、周年行事の積立金もやめたそうですが、よくやめられましたね。校長先生は、嫌がりませんでしたか?

 2019年度に迎えた新校長が、そこも賛同してくださったんです。前年度までに決めた新しいやり方全般について、「そういうPTAなんだ、いいんじゃない」という感じの方で。周年行事の積立金も「あったらありがたいけれど、なかったらないでどうするかは、そのときの校長先生の判断でよいと思う」と言ってくださって。

 うちはもともと地域の方をもてなす祝賀会(宴会)のようなものはなく、式典の後に演者を招いた舞台をお見せしていたようです。それと記念誌、航空写真、記念品といったところで、よそと比べるとお金はかかっていないほうだと思います。2018年度に行った周年行事では、プロの舞台ではなく子どもたちの合唱祭を余興とすることで、予算を抑えると同時に、お招きした地域の方々にとても喜んでいただくことができました。

――いいですね。周年行事は、手やお金をかけすぎているPTAや学校が本当に多い印象です。

 そもそも、周年行事の主催者は誰か。確認した結果、うちは「学校」でした。主催者である学校とどのような関わり方をするかは、きちんと合意形成をはかったほうがいいと思います。そして「周年行事は何のためにあるのか」というところも、もっと考えないといけないですよね。それはやはり、学校の歴史の節目をみんなでお祝いして、過去から現在、未来というふうに思いをはせる、ということだと思うんです。だとしたら、何十万とか百万とかいうお金をかけなくても、できる範囲のことをやるべきだし、卒業生や招待状が来ていない地域の方を学校から締め出すのもおかしいんじゃないかと思います。

 本当は周年行事は、招待状をお送りする来賓だけではなく、どんな人が来てもいっしょにお祝いできるような場にするべきなんじゃないでしょうか。たとえば、創立以来50年の卒業アルバムを陳列して、どうぞ、皆さんどなたでも見に来てください、とかね。この時代は写真がモノクロだったねとか、このときは制帽があったんだとか、みんなで見て楽しめますし。

――とても賛成です。周年行事はこれまで、準備の負担が大きくて役員さんたちも先生たちも困ってきたわりに、誰も表でそれを口にしませんでした(笑)。

 たぶん、学校と保護者の忖度関係ですよね。周年行事に限りませんけど。学校は、PTAがお金を用意してくれているから無下にできなくて、本当は「いらない」と思っていても「ありがとうございます」と言う。学校を忖度する保護者は「いや、竹内さんはそういうけど、学校はお金がないんだから、そこまで切っちゃダメだ」という。それではキリがありません。

 だから私は学校や教育委員会に直接「本当に学校は、PTAのお金がないとそれ買えないんですか?」と聞いてしまいます。すると教育委員会は「いや、それは学校が言ってくれればお金は出すんですけれど、学校がいってこなから出さないだけで…」とか言うんです(笑)。まあ、限られた教育予算を市内の小中学校に割り振るわけですから、実際学校からは言いづらいでしょうし、これまでPTAで出していた分を急に全部公費にするのは難しいのもわかるんですけれど。

*「適法化」と「適正化」はパッケージで提示を

――これまでPTAを改革してきて、「こんなふうにすればよかったな」と思うことは、ありますか?

 「時間をかけて少しずつ変えていこう」という話をよく聞きます。私も「性急すぎる」とか、「あなたのやることは、後世の役員に否定される時がくる」などの批判を受けました(苦笑)。でも、時間をかけるべきは、PTAが抱えている問題や課題を洗い出す作業と、その解決策を策定する作業でしょう。

 いざ実行に移す際は、改革案をパッケージで提示することをお勧めします。パッケージとは、「適法化」と「適正化」をセットでやるということ(*1)。大前提として、PTAは「適法化」しなきゃいけないですよね。法治国家ですから、法令にのっとった活動をしなければいけない。つまり、入退会の自由を確保するため仕組みをととのえる必要があります。それと同時に「適正化」も必要です。自動入会をやめたら、意味ある魅力的な活動をしないと誰も入会しなくなっちゃうので、活動内容ややり方を見直していかなければなりません。

 その両方を、パッケージで最初に出しちゃうのがいいいと思うんです。実際にやってみて思いますけれど、案を出したところで合意を得るまでに1年はかかりますし、動き出してからも微調整に1年はかかる。その間に執行部のメンバーが入れ替わったりするので、そのときに揺り戻しが起きたり、論点がずれたりしないよう、最初に方向性を一括で打ち出しておくのがいいんじゃないかなと。

 私の場合、2017年に「いっちょ変えたろう!」と共に尽力してくれたメンバーが翌年にほとんど入れ替わりまして。苦肉の策で、会長の私的諮問機関「改革推進事務局」という時限組織のメンバーとして継続支援してもらえました。これがなかったら、今の栗小PTAは存在しないのです。

――私も小、中学校のPTAでは、改善点を全部提案できないまま時間切れになってしまったので、高校では入学するなり全てまとめて提案しました。

 ちなみに、いまのやり方を後世の役員に否定されるのは大歓迎です(笑)。前例踏襲にとらわれず、時代の要請、会員のニーズに応えていくべきだと思うからです。

 あと、もし役員さんだったら、改革の芽が出た瞬間に、同じ方向性の仲間を集めるところに尽力することもだいじだと思います。そのときに全体像として、パッケージ(適法化と適正化)があるといい。「全部一気にやるのは難しいから、今年はこのフェイズ1までを一緒にやりませんか」っていうふうにお誘いできるので。私はそれができなかったから、つまづいた部分がありました。

*P連は抜け独自のネットワークで情報交換

――竹内さんは市内の他のPTAの人たちとつながって活動していますね。私も以前、集まりにお邪魔させてもらいましたが皆さん楽しそうでうらやましくなりました。P連にも入っているんですか?

 いえ、P連は抜けました。委員会活動をいまだ輪番で運営するのはうちの活動方針に反するし、P連の存在意義と実態との乖離を感じていたので。そもそもP連って、教育委員会など行政側から「保護者の代表」として必要とされる場面が多いですよね。P連側も、その役割をしっかり果たそうとしがちですが、でも本当は違うんじゃないかなと。私たちは行政の使い勝手のよい存在であるためにP連にお金を払っているわけではないし、仮にその役割を本当に果たそうと思うなら、もっと単Pの意見を大事にするべきでしょう。

 P連が単P同士の情報共有などのつながりに重きをおき、それこそ適法で適切な運営を目指す単Pの力添えをできるような存在に生まれ変わることを期待して、退会することにしたのです。他のPTAや保護者同士が横のつながりを持つことには意義を感じているので、いまは独自でネットワークをつくっています。

――P連を抜けますと言ったら止められた、といった話をよく聞きますが、それはなかったですか?

 松戸市ではすでに退会実績があったので、退会届は整備されていました。ただ、PTA会長印だけでなく、なぜか校長印を押す欄が。「抜けるのは栗小PTAなのにね」と校長先生も釈然としない様子でした(苦笑)。また、退会を決議した総会資料の添付を求められました。うちはうちの規約にのっとって、PTA会長が手続きすることがすべてだと思うんですけどね。だからうちは総会ではなく運営委員会で話し合い決めました。

――そもそもP連に所属することについても、現会員の同意はとっていないですよね…。PTAのやり方を変えることについて、OBに止められることはなかったですか?

 OBや地域の方がPTAの運営に口を出してくる地域ではないですね。こちらから地域活動に動員されるような活動も、いまはないです。私たちはPTA会員であるとともに地域住民でもあるので、学校と地域とのつながりの中にPTAが存在できたらと思っています。松戸市内ではまだ実績が少ないのですが、学校支援地域本部またはそれに似た活動主体を町会・自治会側で立ち上げたいですね、って働きかけを行っているところです。学校は校長先生が、PTAは役員が、短いスパンで交代します。そのたびに地域との協働方針が変化するかもしれないなか、子どもたちの健全育成を見守る拠点を地域に持っておくのは有益だなぁ、と思っているので。

 いまはその前段階として、地域の方向けの公式LINEアカウントをつくって、希望者の方に配信しています。ここにPTAの情報を流して、逆に地域の方から情報をいただいたら、PTAのほうのアカウントで会員に流しています。たとえば、ある町会から「そうめん流しをするんだけど、別の町会の子でもどんどん来てほしい」という情報をいただいたら、PTAのアカウントで、「今度の週末は、どこそこのそうめん流しへゴー!」と流すわけです。

 子どもは町会・自治会の区分ではなく、学区で生きていますから、このように町会イベントを開放していただくことで、子どもたちが参加しやすくなると思いまして。そしてその先に、高齢化に悩む町会・自治会の世代交代が円滑に進むことにも期待しているのです。

 2019年に台風の豪雨災害がありましたが、市役所のホームページが機能不全になる中、避難所の状況など途切れない安全情報を地域の方が提供してくださり、PTA公式LINEで配信することができました。あのときは校門前の倒木を見つけ、撤去作業までしてくだって。そのおかげで子どもたちは安全に登校できたわけです。私たちPTAも学校も、この地域に生きている人たちとともに子育てしていることを肝に銘じなければなりませんね。

――参考になるお話を、ありがとうございました。

  • *1 筆者自身は、適法化も含めて「適正化」という語を使っています