今年度前半、保護者によるコロナ感染拡大を防ぐため、活動をストップしたPTAは多かったでしょう。これを機に、いままでの活動について見直しを始めた、という話もちらほら聞こえてきます。

 休校期間中にボランティア制(手挙げ方式)を加速させ、集団登校などこれまでのやり方について、見直しを進めている――。こう話すのは、横浜市立日枝小学校校長・住田昌治先生です。

 新しい学校の在り方を実践してきたことでも知られる住田先生は、PTAについても保護者とともに見直しを進め、前任校(永田台小)ではPTA改革をバックアップしてきました。

 コロナ禍の今年度、住田先生の小学校で、どんなことが起きているのか、聞かせてもらいました(インタビューは2020年8月、ZOOMにて行いました)。

*コロナを機に「よりよい日常」を探る

――住田先生が今の日枝小に来られて3年目になりますが、PTAもだいぶやり方を見直してきたそうですね。今年度、コロナの影響で変わったことはありましたか?

 本校もコロナ禍でPTAが動けなかったときに、横浜市でやっとZOOMを使えるようになって、役員会をやったんです。それで「学校でいま新たな仕事がいろいろ出てきて、助けてもらいたいことがあるんだけど」という話をしたら、「それなら、今年度のPTAは全部ボランティアでやりましょう」ということになって。それは、望むところですよね。

 それで、特別教室や体育館の消毒作業と、登下校の見守りボランティアをお願いできないか、とメールで募集したら100人ちょっとくらいの応募があって、毎日入れ替わりでそういう作業をしてもらいました。

 よかったのは、いま在宅勤務の職場が非常に増えたので、わりとお父さんたちが消毒作業に参加していたんです。あとは、休校期間中に校庭で子どもたちが遊んでいたとき、その見守り活動も自主的にしてくれたりしました。

――新聞記事で読みましたが、直接保護者にボランティアの募集をかけたとのこと。一般に、学校がPTAを通してお手伝いを募集すると「必ず来てください」となりやすいので、直接募集はありがたいです。なぜ、そのように?

 役員さんとも相談したんですが、今回役員さんは敢えて参加しなかったんです。役員さんが出ると、どうしても「なんで、(他の保護者は)みんな来ないんだろう」という話に、やっぱりなっちゃうじゃないですか。だからそこはもう、役員さんはプランニングしたからOKということで、あとは学校がメール配信で募集した形です。

 今後こういうやり方を持続できるかは、なかなか難しいですけれど、もし継続的にやっていく場合は、窓口をPTAにするのか、学校運営協議会(学校地域協働本部)にするのか、という辺りは、まだちょっとこれから検討するところですけれど。

――コロナを機に、これまでと違うやり方を試すことができたんですね。

 そうですね、活動が止まってみて、いままでPTAが「やらなきゃいけない」ということでやっていた活動は「やらなくても全然大丈夫」ということがわかったわけです。それが保護者のなかにも浸透したので、「本来子どものために、学校と保護者で何ができるか」ということを探っていくチャンスになっているのかな、という気がします。

――PTAや学校など、前例踏襲に縛られがちな組織にとって、こういったきっかけは貴重です。

 昨日、あるオンラインセミナーで聞いた「ベターノーマル」というのが、いい言葉だなと思いました。「ニューノーマル」というと「新しい日常に合わせなければいけない」みたいな感じがするけれど、そうではなく「より良いものを、自分たちでつくっていこう」という言葉。学校でも、そういう考え方にシフトしていくことはすごく大事だと思います。

*密を避けるため分散登校にして気付いたこと

 たとえば、うちは集団登校をやってきたんですけれど、その是非はずっと問われてきたんですね。安全性が高いということで続いてきたんですけれど、分散(個別)登校にも良さは当然あって。子どもたちが自分で交通安全のことについて考えたり、登下校について考えたりする。

 集団登校だと、たとえばマスクをしていない子は、たぶん同じ班の上級生から「マスクをしなさい」と言われたりすると思うんですけれど、今年度は(密を避けるため)個別登校になって。様子を見ていると、登校中はマスクをしないんだけれど、校門に入るとき自分でマスクをつけたりして、子どもが自分でいろいろ考えながら登校しているのがわかるんですね。

 だから集団登校の良さもあったんだけれど、分散登校によって、個々の子どもが自由に、自分で考えながら行動できるという良さもある。「より良い日常」として考えたとき、そのほうがいいんじゃないかということで、いま保護者と学校とで話し合ったりしているところです。

――私も以前、見守り当番をしていたとき、上級生とグループで登校する低学年の子は、注意散漫になる傾向を感じました。1、2人で歩く子のほうが周りを見ている。

 だから、子どもが自立するという点から考えると、やっぱり個別登校はいい。ただ、いままでずっとやってきたことをやめるって、ラクになることでもあるんだけれど、すごくハードルが高いことでもあります。だからそこは、学校が「こういう子どもたちを育てたいわけだから、ここはこういうふうにしましょうよ」と話をしていく必要があると思うんですね。

 あとは、その地域の実情に合わせて考えることも大事だと思います。いまよくテレビで「(密を避けるため)傘をさしながら登校」というやり方を紹介しているけれど、あれをもしうちの学区でやったら、大変なことになります。歩道橋があるので雨の日は(傘のせいで)いつも大渋滞になって、地域住民の方から「登校時間をそろえないでほしい」と、厳しくご意見をいただいていたので。

 だから集団登校に限りませんが、これまでのやり方を変えるようなときは、さっきの「どんな子どもを育てたいか」ということと、もう一つ「その地域の実情によってできること」というのを話し合って、よく考えないといけない。そのためには、コミュニケーションをちゃんとしていかないとダメですよね。

*PTAも話し合って決めていくしかない

――「PTAは何のためにあるのかな」と思っていた、というお話が前々回にありました。いま、どう思うでしょう?

 PTAはもともとこういうことから始まりました、みたいな定義はどこかにあると思うんですけれど、それって今、あんまり意味はないんですよ。おそらく答えはないですから。よく言われるように、これからは答えのない時代で、だからコミュニケーション、対話をする場をすごく大事にしなければいけない。PTAもやっぱり、話し合って決めていくしかないと思うんです。

 そのときのビジョンが何かというと、たぶん学校だと「学校教育目標」なんですね。それぞれの学校で「児童生徒を、こんな子どもに育てたい」という教育目標があるんじゃないですか。そこに保護者もかかわっていくということです。本来であればね。

 その教育目標って、本来学校だけで勝手に決めたのでなく、保護者や地域の意見を聞きながら決めてきているわけです。だから、たとえば「自分で考えて行動できる子を育てる」という教育目標があれば、「そのためにPTAの立場では、どうアプローチすればいいか」ということを、話し合って決めればいいですよね。

 だから基本的には「一緒に学校をつくっていく」ということ。何かあったとき、じゃあ文句を言ってやろうというより、「学校がやっている、この点がどうもわからないから、ちゃんと説明してほしい」とか「ここはちょっとやめてほしいんです」といったことを、ちゃんと伝えて話せばいい。結果、子どもが良くなればいいわけですよね。

 だからやっぱり、話し合う場を設けていく必要があります。いま学校運営協議会やコミュニティースクールが広がっていますが、あれはまさに、学校だけが子どもを育てているのではなく、学校と地域と一体となって子どもを育てる、という動きとして出てきているわけですよね。

――ただ、いまの多くのコミュニティスクールは、PTA役員さんや役員経験者しか関わることができません。大半の一般保護者が学校と話し合える場は、残念ながらほぼ見当たりません。そこは、どんなふうに実現できるでしょう?

 ワークショップをやったらいいと思うんですよ。たとえば私のところでは、PTA総会のあとの時間を活用しています。総会は各自書面を読んでおけば、短時間で済ませられるので、「ではこれから学校の子どもたちをどんな子どもに育てるか、そのためにどうすればいいか、先生たちと保護者の皆さんで話し合いましょう」みたいなことをやって、それを広報していくんです。

「えんたくん」を使って行うワークショップの様子(写真提供:住田先生)
「えんたくん」を使って行うワークショップの様子(写真提供:住田先生)

 あとは子どもの参画というのも、一つ大事な視点かなと思います。たとえばPTA総会に子どもが参画するというのも面白いかもしれませんね。いま、子どもたちが地域参画する話は結構あるじゃないですか。そんなふうに「PTAはどんなことをしてくれるといいかな」みたいなことを、子どもが話し合うことがあってもいいかもしれません。

 以前、スクールゾーン対策協議会に子どもが参加したことがあったのですが、子どもたちが調べて質問したことには、区役所や警察の方も丁寧に応えてくれました。大人がやるものだと思っていたことに子どもが参加することで、停滞していた案件も進むかもしれません。PTA総会にも子どもが参加するようになると、形骸化した組織だと子どもに質問されたり指摘されたりすることで、問題点が明確になるかもしれません。

 子どもから学ぶということは、教育においては大事な視点です。そこからイノベーションが起こるかもしれません。PTAの目的や必要性も問われるかもしれませんね。

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 住田先生のお話は、以上で終わりです(全三回)。今回のお話に関する筆者の考察は、月刊誌『教職研修』に執筆します。

  • 参考書籍/『カラフルな学校づくり:ESD実践と校長マインド』(住田昌治・学文社)、『校長の覚悟 稀代の校長5人に問う、校長のなすべきこと』(教育開発研究所)