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生徒に説明不要? コロナ禍で修学旅行の行き先変更、起きる問題

大塚玲子ライター
大人はつい子どもへの説明を省略しがちです(写真:ミラタス/アフロイメージマート)

 コロナの影響で修学旅行が日帰りに変更になり、県内リゾート施設を訪れた兵庫県のある中学校の生徒会が、隣の中学校はUSJに行けたことについて「対応が異なったのはなぜか」と教育委員会に説明を求めた、というニュースが先日話題になりました。

 SNSではこの生徒らをわがままなどと非難する声もありましたが、筆者はそうは思いませんでした。自校の生徒たちが感じていることをアンケートでとりまとめ、代表として教育委員会に問い合わせたというのは、むしろ優秀な生徒会ではないでしょうか。それはつまり、学校もいい教育をしているのでしょう。

 かといって学校が決めた行き先が間違いだったとも思いません。経緯や理由(県外、特に感染者数の多い大阪府を避けた)を聞けば「なるほど、そういうことか」と思う人が多いと思います。しかし、それは生徒会が問い合わせたから聞けた説明であって、説明がなければ「なぜ?」と生徒や保護者が疑問を抱いて当然だと感じます。

 今年度、学校や先生たちはコロナ禍でイレギュラーな対応が多く、本当に、大変でしょう。本来なら生徒らの意見も十分に聞いたうえで行き先を決めたいところ、この状況では意見を聞く余裕はないし、説明も不要だろう、と思ってしまったのかもしれません。

 でも、修学旅行をずっと楽しみにしてきた子どもたちからしてみれば、それは納得しかねる話です。コロナは誰のせいでもないですが、子どもたちのせいでも全くありません。生徒の意見をよく聞けなかったことは仕方がないとしても、せめて「なぜその行き先に決まったか」の十分な説明は必要だったのでは。

 神戸市の中学校のPTAで、校長と保護者の定期的な意見交換会を実現・継続してきた元PTA会長の今関明子さん(『PTAのトリセツ』著者)は、こう話します。

 「学校と生徒や保護者の間で情報共有や意思疎通ができていれば、もっとスムーズだったのではないでしょうか。情報共有が不足していたために、学校は生徒や保護者のニーズを読み違え、説明不足から不信感を招いてしまったように思えます。

 たとえば、県内のある高校は修学旅行をとりやめにしましたが、校長が自分の口から直接生徒に説明したので、苦情はなかったと聞きます。教育委員会に問い合わせをした生徒会の子どもたちは何も悪くないでしょう」

 なお、学校に限りませんが、大人たちは「子どもへの説明」をしばしば省略しがちです。筆者はよく親子の問題を取材しますが、離婚や再婚など家族の一大事に大人から説明をしてもらえなかった子どもは疎外感を味わい、自分は大切にされていないと感じやすいものです。

 学校と生徒、保護者の間でもっと情報共有があれば、防げるトラブルはたくさんあります。生徒会やPTAでも、それ以外の場でもいいので、何かしら情報共有の仕組みが必要ではないかと感じます。

  • なお筆者はコロナと関係なく修学旅行の見直し(規模縮小)には賛成です
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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