PTA改革や適正化、改善について、筆者はこれまでたくさんの役員さんや会長さんたちに取材をしてきました。振り返ると、そういったことを実現できたPTAの傍らには、高確率で、覚悟ある校長先生の影が見えました。

 そんな校長先生の側から見たPTA改革とは、一体どんなものなのか? 役員さんたちの傍らで、校長先生は何を考え、どう振る舞っていたのでしょうか。

 今回お話を聞かせてくれたのは、新しい学校の在り方の実践で知られる、住田昌治先生(横浜市立日枝小学校校長)です。住田先生は、持続可能な社会を実現するための教育をベースに、先生を元気に、そして学校、生徒を元気にしてきました。

 住田先生が初めて校長として着任した横浜市立永田台小学校のPTAは、加入や活動を強制せず、会員の意思確認をする形になったそう。本来なら当たり前の話ですが、5年前はいまよりさらに珍しかったはず。どんなふうに、それを実現できたのでしょうか。

 インタビューは2020年8月、住田先生を紹介してくれた『教職研修』編集長・岡本氏とともに、Zoomでお願いしました。

*時間をかけて保護者の考えをほぐす

――PTAは長い間さまざまな問題点を指摘されながら、変わらずに来ました。住田先生はPTAをどんなふうに見ていましたか?

 教員時代は、私も非常に助けられました。でも本当に役員さんが大変で、なり手がいなくて苦労している。だから「何のためにPTAってあるのかな?」ということは、ずっと思っていました。

 ただ恐らく、学校の先生たちも保護者の方々も、あんまりそういうこと(何のためか)は考えていないんですよね。もう「当然あるものだ」と思っている。学校にくっついているような感じなので、一体どこが主体でやっているのか、よくわからない。

 子どもが入学したら(保護者は)何となくPTAに入っちゃっているし、PTA会費も当然のように集められて、引き落とされている。なので「学校がやっているような感じ」が、やっぱりすると思うんですよね。

 これを「自分たちが思うように変えていこう」というふうには、(保護者も先生も)なかなかお互いにならなかったんだろう、ということはすごく思っていて。こういった状況に対して最近いろいろと異論も出てきて、議論する場ができてきたのかなと思うんですけれど。

――とても頷かされます。そんな疑問を抱きつつ、11年前に初めて校長先生として着任したのが永田台小学校でした。すぐに、PTAに何か働きかけを?

 いえ、校長になったときはまず初めに、PTA(保護者の)方々は一体どういうことを考えているのか、ということを聞きたかったので、役員さんたちとランチミーティングを始めました。委員さんは大体毎年交替するので、数年やる方が多い本部役員さんの話をまず聞いたほうがいいかな、ということで。

 そうやってお話を聞いたり、学校のことを相談したりしていくなかで、だんだんと「学校の働き方改革」ということが言われるようになってきて。そのときに役員さん、委員さんたちも「私たちも、PTAの働き方改革がしたい」って言い始めたんです。

 PTAは仕事じゃないので「働き方改革」というとおかしいんですけれど、「今までやってきていることを全然変えられない」という点は、PTAも同じだというんですね。変えるとなると、いろんな先輩方にも相談しなきゃいけなかったりして、えらい大変だというんです。すごくエネルギーが要る。

 委員さんにしても、仕事の有給休暇を取ったりしながらPTA活動に参加している人がいて、いざ子どもが病気になったときに休めない、みたいなこともあって。これはおかしいよね、本末転倒じゃないか、という話がだんだん出てきました。

 そのときに、「じゃあ、それ(PTAの改革)やったら?」って(私が)言ったら、「いやいや先生、それはちょっと、私たちには…」と言う。でも思っているときにやらないと、何も動かないよ、ということでやり始めた。それが、私が永田台小に居た最後の2、3年頃の話なんです。

――おそらく住田先生は、「変えたい」と言い出す保護者が出てくるのを、内心ずっと待っていたんですよね?

 そうですね、基本的に私は「自分の考えで人を何とか変えよう」という考えはないんですよ。だけど、変わろうとしている人たちを応援したいと思っている。「変えよう、変えよう」って(私が)言うと、こちらの意図で「変えさせられた」と思っちゃうから、それはそれであまりよくないですよね。

 だからPTA活動においても、会長さんや役員さんたちとランチミーティングでいろいろ情報交換をしたりするなかで、おそらくだんだんと私の考えていることが浸透していくじゃないですか。「別に無理してやらなくてもいいんですよ」とか、「いや、それはチャレンジしましょうよ」みたいな話を常々していると、「学校がそういうふうに思っているんだったら、やってみようかな」って思う人が出てきますよね。

 だから、(保護者が)そういう気持ちになるためにどうやって仕掛けるか、どう気持ちをほぐしていくか、ということは当然ありますけれど、それにはある程度時間もかかる。

 そこでランチミーティングっていうのは、すごく意味があるんです。飲むっていうより、一緒にものを食べる。そうすると、「真面目な話を、気楽にする」ことができるんです。飲んじゃうと「気楽な話を、気楽にする」場にはなるけれど、真面目な話はしづらい。運営委員会みたいな場は、「真面目な話を、真面目にする」しかないじゃないですか。どちらでもない、「気楽に、真面目な話をする」場づくりっていうのは、教職員とも、PTA(保護者)ともやっていく必要性を、すごく感じています。

*「強制するものではない」を基本に

――PTAを変えたいという話が出てから、どんなふうに進んだのでしょう。

 まずはやっぱり、「何のために(PTAを)やっているのか」ということは、すごく突き詰めて皆さん議論をしていたんですね。結局「すべては子どもたちの笑顔のためだよね」という話になり、そこをテーマとして改革していこう、ということが本部役員のなかで話し合われて、それを広げていったんです。

 そうなってくると、まず一つ言われたのは、「強制されたら楽しくないよね」ということです。「やらなければならない」っていうものは、やっていたって楽しくない。いままでのやり方でやります、という人ももちろんいるので、それは否定しないんだけれど、ただやっぱり強制するものではない、ということ。

 あとはやっぱり「やれる人とやれない人が当然いる」ということを、お互いに認め合うことも必要ですよね。だからたとえば、「PTAに入ったら、必ず何かやらなきゃいけない」というような縛りもなくしたほうがいいし、そもそも任意の団体なので「入るかどうか」というのも、きちんと意思確認をしなければいけない。

 いままでも(意思確認を)やっていることにはなっているんですよね。入学式のときとか、会長さんが「ぜひご協力ください」とPTAの案内をして、そこで「いや、やりたくないです」という人がいれば問題になるんだけど、大体そういうことがないので、そこである程度、意思確認したということになっている。でもそのとき体育館に閉じ込められて役員決めをしたりして、それはある面ちょっと、騙されたと言うと言い過ぎかも知れないけど、そんなことを聞くこともありました。

――意思確認をしているとはとても言えない状況が非常に多いです。いまから5年前だと、なおさらだったのでは。そのなかでよくぞ、切り替えを。

 当時の会長さんは、本当に勇気があったと思うんです。それ(加入意思確認)をやって、もし半分しか入らないとか、ほとんど入らないという状況になったらどうしよう、ってすごく心配されていて。だけど、「子どもたちの笑顔のために」という目的をもって、みんなで本気でやっていこう、ということを当時の役員の皆さんにはすごく伝えていて。役員さんたちは、PTA活動の具体的な内容や魅力のアナウンスをしたりして、結果的に97%くらいの参加(加入)率だったんです。そこは、本当にエネルギーが要ったと思います。

 どうしても入りたくないという方も当然いて、それはそれでいいですよ。ただそのとき、入らないからといって子どもに不利益がないようにしましょう、(子どもの扱いを)同じにしましょう、ということも当然共有しました。

(続く)

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 今回のお話に関する筆者の考察は、月刊誌『教職研修』に執筆します。

  • 参考書籍/『カラフルな学校づくり:ESD実践と校長マインド』(住田昌治・学文社)、『校長の覚悟 稀代の校長5人に問う、校長のなすべきこと』(教育開発研究所)