PTAがNPOと違うのはなぜ? 行政・学校と“共依存関係”になる理由

相互に依存する関係なため、行政も社会教育関係団体も互いに縛られている(写真:アフロ)

 なぜ同じ任意の団体なのに、PTAとNPOはこうも違うのか? 長年、疑問だった。

 筆者は仕事等でさまざまなNPOとかかわってきた。NPOでは当然のこと、強制加入や強制動員など、誰も考えない。最初から活動したい人が活動しているので、「強制しないと成り立たない」などという発想は、誰一人もたない。

 活動資金の調達はNPOにとっても悩みどころだが、だからといって「行政(学校)がもつ個人情報を使って会員を獲得し、会費も代理徴収してもらおう」などという団体は、あるはずがなかった。

 なのになぜPTAでは、そのような行為が当たり前に行われ、且つ許されてきた(黙殺されてきた)のか? PTAのほかにも、子ども会など似たような問題を抱える団体は、いくつか思い当たる。

 疑問を抱えていたところ、ある報告書に出会った。『地域共生社会と社会教育関係団体をつなぐ行政の役割 ~団体と行政の協働が生み出す、社会教育のカタチ~(マッセOSAKA平成28・29年度広域研究活動報告書)』

 「社会教育関係団体」とは何かというと、社会教育法第10条で「公の支配に属しない団体で社会教育*に関する事業を行うことを主たる目的とする団体」と定義されており、PTAや子ども会、婦人会、青年団、スポ少などがこれにあたるとされている。

  • * 社会教育とは、学校教育・家庭教育以外のものを指す

 疑問を解く糸口が見えた。研究活動を中心となって取りまとめた、泉大津市教育委員会事務局の西田章恵さん(同市P連* 担当)に話を聞かせてもらった。

  • * P連=市区町村、都道府県など自治体ごとに作られるPTAのネットワーク組織

*行政と社会教育関係団体は相互に依存している

――この報告書は大阪府内の自治体(池田市・泉大津市・貝塚市・守口市・阪南市)で社会教育行政に携わる職員有志の方たちで作られたそうですが、なぜこのような研究を始めたのですか?

 各自治体で社会教育行政に携わる職員たちは皆、同じような課題を抱えていました。一言でいうと「行政と社会教育関係団体が、お互いに自立した関係を十分に築けていない」こと、つまり依存し合っている部分があるということです。

 PTAを例に挙げると、たとえばP連の事務局は行政のなか(教育委員会事務局)に置かれていることが多く、また事務仕事をすべて行政職員が担っていることもあります。べつにPTA側の依頼でそうしているわけではないのですが、昔からそうしている(※1)。

 逆にPTAの側からすると、行政から「研修会をやるので来てください」と動員をかけられたり、市の主催する会議に充て職で入れられたりして内心困っているのに、断れずにいることなどがあります。

――全国的にある程度共通する課題ではないでしょうか。教育委員会に運営を大きく依存したP連を見かけるたび、疑問を感じてきました。相互依存的な関係なので、互いにやめたいことがあっても、言い出せないのですね。

 基本的に社会教育関係団体の活動は、自主的・自発的なものであるはずです(※2)。しかし実際には、そうは言い難いケースがよく見られます。

*社会教育関係団体の歴史的経緯

――なぜ共依存の関係になるのか、報告書の「社会教育関係団体と行政の関わりの歴史」を読んで腑に落ちました。つまり昔から存在する、住民と行政の間にある地縁団体(子ども会、婦人会や、GHQの指導のもと各地に設置されていったPTAや文化協会等)を「社会教育関係団体」として位置付け、これらの団体が行政の社会教育を代行する代わりに、行政が団体の仕事を肩代わりするようになったから、ということですね。

 結局はそういうところがあります。ただ、そういった地縁団体も、核家族化や共働き家庭の増加など社会の変化が進むなか、だんだん時代に合わなくなってきています。

 背景には、人々の活動の場が昔と比べて広がっていることもあるでしょう。昔の娯楽は、餅つき大会など地元でやるものが多かったと思いますが、いまはインターネットなどもあり、たとえば「バンドをやりたい」と思ったらネットで仲間を探し、市外に出て活動することも簡単にできます。世界が各段に広がっている。

 いまは地縁型ではない「テーマ型の活動団体」が増えています。かつてのように、「婦人なら婦人会へ入れ」「青年は青年団へ入れ」というのではなく、「私は編み物が好きやから、編み物サークルに入ります」とか「環境系のことに関心があるので、ゴミの削減に取り組むボランティアサークルに入ります」といったように、個々人の好みで活動するというほうにシフトしている。

 そんなふうに中身が変わってきているのに、かつての歴史的な経緯から、行政と社会教育関係団体の相互依存関係が変わらずに残ってしまっているので、弊害が出てきているのではないかと感じます。

――報告書によると、府内の約8割の自治体で、社会教育関係団体に対する施設使用料の減免や補助金支出などの支援があったそうですね。しかしNPOなど新しい社会教育の担い手には支援が少ないので、整合性がないという指摘もありました。確かにそう思います。

 今はやはり、テーマ型でつながるNPOなどの団体は活発で、いわゆる地縁団体、社会教育関係団体はどちらかというと縮小傾向です。そういったなか、行政は社会教育関係団体とばかりかかわりを深めるのでなく、新たな社会教育を担う活動団体とも、もっと連携していく必要があるのではないでしょうか。

*「社会教育関係団体」という枠組みをやめる自治体も

――横浜市(神奈川県)や阿智村(長野県)など、「社会教育関係団体」という枠組みをやめた事例も紹介されていますね。正しい方向のように思いました。

 横浜は都市部で人口が多いので、やる気のある人が自分でどんどん活動できるよう制度を整理したことで、効率がよくなったのではという印象です。阿智村は逆に人口が少なく、市民をじっくり育てる・支援する制度が有効なのだと思います。担当の方が「そこにあるヒトとモノでなんとかするしかない」「やる気のない人には支援しない、やる気のある人は全力でサポートする」と話されていたのが印象的でした。

――ただし横浜では、PTAだけは「社会教育関係団体」として残っています。PTA問題の根深さを感じますが、なぜ残ったんでしょう?

 これは私の主観ですが、婦人会や青年団などと比べると、PTAは「保護者がそこにまとまっていてくれる」という点で行政にとってのメリットが大きいのではないかと思います。

 多くの自治体ではP連の事務局が行政(役所)のなかにありますが、これもたとえば、教育委員会が保護者に「こういう方針でやっていきたい」などと話を通さないといけないとき、各PTA会長さんと情報共有しやすいからでは。普段からコミュニケーションがとれていれば、教育委員会とPTAが正面衝突するといったことも起きにくくなると考えられます。

*P連のあり方ももっと自由でいいのでは

――P連の担当をされてきて、問題を感じる点はありますか?

 そもそもP(保護者)とT(先生)が最初から一緒になっている点が、保護者にとってしんどくないのかな、と思うことがあります。まずはPの会があってもいいのでは。

 もし自然発生的にできた団体なら、まず「保護者だけで何か話したいよね」ということでPが集まり、次に「やっぱり学校のことだから、先生がたとも協議する場がいるよね」といって、PTAができるのが自然と思うのですが。行政が主導し全国に広めたので、ちょっと不自然なところを感じます。

――なるほど、そうですね。先生たちは毎日顔を合わせて話をしていますが、保護者同士は意見を共有・議論する場がありません。たまにPTAの会議で保護者同士が意見を戦わせているとき、先生たちは遠い目をして佇んでいます。それから、よくP連の活動が単P(各PTA)の負担になっているという声を聞きますが、これについてはどう思われますか?

 そもそもP連は単Pを支援するためのものですから、単Pの負担になるというのは本末転倒だと思います。

 P連のあり方も、本当はもっといろんな形があるのではないかと思います。現状、これまでの歴史に引きずられているところが大きいですが、もっとやりやすい方法を探っていいのでは。たとえば、団体にしないで「協議の場」だけでもいいのではないかな、といったことも思います。

――賛成です。PTAもP連も、いまある形を前提に考えるのでなく、ゼロから必要なものを考えられるといいですね。今日はお話を、ありがとうございました。

  • ※1 P連と教育委員会の関係性は、自治体によって大きく異なる。教育委員会が事務局機能をほぼ100%担っているところもあれば、ほとんど行政に頼らず、保護者(各学校のPTA会長・役員)等で運営しているところもある
  • ※2 社会教育法第11条には「第1項 文部科学大臣および教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、専門的技術的指導または助言を与えることができる」「第2項 文部科学大臣および教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、社会教育に関する事業に必要な物資の確保につき援助を行う」とある