母親たちを苦しめる「委員決め」に終止符 吹上小PTAが「希望参加制」でラクになった理由

メールサービスの活用で、役員の負担は各段に減ったという(写真:アフロ)

 子どもの入学、進級。春は親にとっても晴れがましい季節のはずだが、「PTAのクラス役員決め(委員決め)を思うと憂鬱になった」という人は多い。

 もしPTAの委員決めがなかったら、もっと明るい気持ちで新学期を迎えられたのでは? そんなの無理、と思うかもしれないが、決して無理な話ではない。委員会制をやめ、本人の希望に基づいて参加者を募集するPTAは少しずつ増えている。

 「委員決めのない春は、今年で3回目。PTAの運営の負担を軽くするのには、委員をなくしてしまうことが一番です」と話す、名古屋市立吹上小学校PTAの元会長・下方丈司さん(現副会長)に、切り替えの心がまえや、利点を教えてもらった。

*メールサービス活用で負担を大削減

 吹上小PTAは、2017年度から活動ごとに人を募集する「活動エントリー方式」(希望参加制、手挙げ方式などとも呼ぶ)を採用している。4月の憂鬱な“クラス役員(委員)決め”とは、もはや縁がない。この方式を技術的に支えてくれるのが、メール配信サービスだ。

 「PTAで活動するときは、配信サービスを使って、登録者に案内メールを送ります。参加したい人は、リンクのURLから申し込めばOK。日程が近づいてきたら、申し込んでくれた人にだけ詳細を流します。

 募集する内容は、たとえば運動会の手伝いの協力のお願いとか、口腔衛生(歯磨き)セミナーの参加、県の安全ボランティア講習会の参加の案内など。申込者が少ないときは再送信することもありますが、そうすると大体想定した人数をオーバーします」

 もちろん紙のお便りでも活動エントリー方式は導入できるが、メールサービスを活用することで、申込みや受付を統括する役員の負担は大きく軽減されたという。

 「昔なら、お手紙を印刷してみんなに配り、記入された申込書を子ども→先生経由で回収し、詳細を書いたお手紙を印刷したら、申し込んだ人の名前を入れて先生→子ども経由で渡して……、という手間がありました。時間も労力もかかるし、役員はお手紙を印刷するたびに学校へ行かなければならず、負担は大きかった。

 でもいまはメールサービスのおかげで、申込者に直接すぐ連絡できるようになり、アンケート機能で希望の集計なども簡単に行えるので、運営側は格段にラクになりました」

 メールサービスに登録しているのは、会員のうち7~8割ほど。学校によるメール連絡システムは、ほぼ全世帯が登録していると聞くので、未登録の2~3割はメールを使えない(ハードがない)わけではなさそうだ。そのため「活動するつもりはないけれど、会費は払う意思がある会員」と受け止めている。

 活動エントリー制をスタートした2017年度は、あるグループウェアを利用したが、あまり使い勝手がよくなかったため、全部で20種類のメール配信サービスを比較・検討した。3つに絞り込んだうち、運営会社が比較的近隣(岐阜県)にある「マメール」を採用し、2018年度から導入している。

 「サービスを選ぶ際に重視したポイントはいくつかありました。ひとつは登録時のハードルを下げるため、空メールの送信から手続きを始められること、もうひとつは配信先のグループを複数登録できること、さらに複数の人が配信できること、それから利用料です。広告配信がないことや、アンケート機能があることも最低限の条件でした。

 マメールを選んだ決め手は、メールを返信するだけで活動への参加の意思表示をできる機能があったから。ガラケーでリンクに飛ぶのを嫌う人もいるかな、と思ったので。でも実際に使ってみたら、その機能を使う人はおらず、みんなリンクから申し込んできました」

下方さんが当時作成したメールサービスの比較表。最終的に絞り込んだのは、「マメール」「39mail有料版」「ミマモルメ」の3サービスだった
下方さんが当時作成したメールサービスの比較表。最終的に絞り込んだのは、「マメール」「39mail有料版」「ミマモルメ」の3サービスだった

 ただし、多少は手間がかかることもあるようだ。たとえば登録を行う際は、キャリアメールしか受信しない設定にしているためエラーになる人が必ず出る。そこで、受信フィルターの設定を変えてもらうようお願いする必要がある。

 また、年度途中で携帯を乗り換えてアドレスが変わり、「メールが届かなくなった」と相談してくる人もときどきいるため、そういった際は再度メールサービスに登録してもらうよう伝えるなどといった個別サポートも必要になる。

 そういった「小さなデメリット」はあるものの、それでもやはり、メールシステムのおかげで作業が減った部分のほうが、はるかに大きいという。

*個人情報の取扱いもより安全に

 使ってみて気付いたメリットもあった。それは会員(保護者等)の個人情報を、PTA(役員)が手元で管理せずに済む、という利点だ。この利点を活かし、今後は入会申込みもメールサービスで行うことを検討しているという。

 「いまは紙で入会申込書を集めて、連絡先などの個人情報を役員がエクセルに入力し、申込書は金庫で管理していますが、メールサービスのアンケート機能を使って申し込んでもらえば、こちらの入力の手間が省けるうえ、個人情報をPTAが管理しなくて済む点も安心です。

 必要なときだけ管理者(現在は会長1人)がデータをダウンロードして、必要がなくなれば、その都度データを廃棄する。そうすれば個人情報が流出する危険もありません。今後この方法を導入できないか、役員のみんなと検討、相談中です」

 以前の記事で紹介した、Googleフォームによる入会申込み(リンクはこちら/都内の区立中学校PTA副会長の男性がサンプルで作成)も同様の利点をもつが、メールサービスのアンケート機能を利用するのもよさそうだ。

 なかには「紙の申込書のほうがいい」という人もいるかもしれないが、その場合は紙で提出してもらい、役員が代わりに登録してもいいだろう。それでも、全員の分を入力するのに比べたら、作業ははるかに少なくて済むはずだ。

*大事なのは、参加者の主体的な決定

 なお、委員会制をやめて“活動エントリー方式”やメールサービスを採用する際には、ある種の“覚悟”が必須だと下方さんは話す。

 「エントリー制を導入する際は、最悪“もし人が集まらなかった場合、その活動はやめる”という覚悟も必要です。もちろんそうならないように、広報活動にも力を入れていますが、それでも集まらないときはあるので。

 また、もし外部から動員がかかり、人数通りに人が集まらなかった場合には、無理にかき集めるのではなく、出せないことを外部に謝って断る覚悟も必要だと思います。集まった人で、主体的に活動内容や量を決めることが大事だと思うので。

 メールサービスについては、会員全員に登録させることにこだわらないのもポイントだと思います。“活動に参加したい人は登録してください”という形でも、エントリー制は十分に成立します」

 これまでのPTAのやり方――6年間に1度は必ず委員をやる、あらかじめ決められた人数が集まらなければ「できない理由」を言わせてでも誰かにやらせる、ジャンケン・くじ引きで泣く人が出てもやらせる、等々――に縛られず、「嫌な思いをする人が出ない形」を目指せば、自ずと、こういったやり方に向かうのではないだろうか。参考にされたい。

  • 下方さんが作成した「希望参加制を導入する際の心構え」からの抜粋

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