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なぜPTAは「必ずやってください」と強制できるのか? ふつうなら炎上するやり方が通用するワケ

大塚玲子ライター
強制をやめたら、やる人はいなくなる? そもそも、なぜ強制できるのでしょう?(写真:アフロ)

 今年も、保護者たちの頭にPTAのことがちらつく季節が近づいてきました。

 繰り返しお伝えしてきたとおり、PTAは本来、入りたい人が入る団体であり、やりたい人がやる活動です。本人の意思に関係なく加入させたり、会費をとったり、活動に参加させたりできる法的な根拠はありません。もともとPTAは、アメリカで2人の母親が自主的に始めた活動です。

 けれど、これまで日本の多くのPTAでは、加入・会費の支払い・活動のどれも、保護者本人の意思とは関係なく、「必ずやるもの」とされてきたため、PTAは嫌われてきました。またこれにより、辛い状況の保護者はより追い詰められ、「なぜその活動をやるか」「もっとよいやり方はないか」といった根本的な問いが置き去りにされるなど、さまざまな問題を生じてきたのです。

 「そうはいっても、強制しなければ誰もやらなくなるのでは?そこをどうしたらいいか考えないと、強制はやめられないよ」という声も聞きますが、そこは、一般の団体と同様の努力をするしかないでしょう。

 たとえば筆者は「定形外かぞく」という任意の団体(活動)をやっていますが、人集めや資金調達は、やはり課題です。何かイベントを行うたび、集客、運営スタッフの確保、お金の集め方(またはお金をかけないやり方)をどうするか、頭を悩ませます。

 というのは、当然ですが、一般の団体はPTAのように「必ず来てください」とか「必ずお金を払ってください」とは言えないからです。言いたければ言ってもいいのですが、炎上するか捕まるかでしょうし、だいたい誰も言うことを聞いてはくれません。

 PTAも強制するのではなく、一般の団体と同様に労働力やお金をどう調達するか、知恵を絞っていくしかないでしょう。団体の目的を広く伝え、活動の魅力をアピールし、多くの保護者に自分から「やってみたい」と思ってもらえるようにするのです。

 ここで逆に、私たちはよく考えなければいけないのではないでしょうか。

 なぜPTAは、これまでそういった努力をしないで済んできたのか?ということを。PTAはなぜ、「必ず入ってください」とか「必ずお金を払ってください」と言えたのか? そしてなぜ、保護者たちはその強制に従ってきたのか?

 先を読み進む前に、ここでしばし、その理由を考えていただけると幸いです。

*誤解をベースにしている

 理由のひとつは、おそらく、PTAが学校の一部と思われてきたからでしょう。学校の権威をまとってきたから、ということもできます。PTAは学校とは別の団体ですが、子どもが学校に入学すると保護者は自動的に会員にされるので(残念ながらこれは違法なやり方です)、そう思われるのは当然です。

 学校がPTAという団体の会費の徴収を代替することも多いため、保護者はPTA会費を学校徴収金(学級費等)の一部と誤解します。

 ですから保護者たちは、PTAから労働力の無償提供を求められることにも疑問を抱きづらく、なんとなく従うのでしょう(でもモヤッとはする)。

 さらに、同調圧力もあるでしょう。「ほかの人も全員そうしている」と聞くと、日本人はなかなか別の行動をとれません。本当は非加入の保護者がいたとしても、ほかの人はそれを知りようがないので、「みんなやっている」と信じ、強制に従い続けている面もあります。

 「いままでずっと、このやり方でやってきたんだから、強制のままでいいじゃないか」と思う人もいるでしょう。しかし、しつこいですが、そこに法的な裏付けは何もありません。実際に訴訟も起きています。

 強制をやめればやはり、やる人は減るでしょうが、「全員」じゃなくても問題はないはずです。これまでは「全員」が前提だったので、最初は不安かもしれませんが、「それはそういうもの」と頭を切り替えていくしかないのでは。人数が減ってもやりたい人でやるほうがたのしいし、満足感も、効率もあがると思います。

 もし、できるだけ多くの保護者に加入してほしいのであれば、活動(労働力の提供)だけでなく、会費の支払い(お金の提供)についても、強制をやめるといいでしょう。そうすれば、保護者が「加入したくない」と思う理由は、ほぼなくなります。

 強制して加入者をキープするのでなく、強制をやめることで、加入者をキープするのです。運営する側の方たち(とくに管理職の先生たち)は、「PTAも一般の団体のひとつだ」ということを、忘れずにいただけたらと思います。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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