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部活動とPTAは、保護者と先生が互いに協力しながら、縮小&改善していこう

大塚玲子ライター
先生も保護者も一緒にラクになりましょう(ペイレスイメージズ/アフロ)

 いま中学校などで、部活動の顧問を担う先生たちの過度な負担が問題になっていますが、部活動の問題とPTAの問題にはよく似たところがあります。

 どちらも本来、必ずやらなければいけないものではないのに、必須のもののように扱われており、先生や保護者にとって大きな負担となっているのです。

 間もなく、「学校リスク」に詳しい内田良先生の新刊『ブラック部活動』(東洋館出版社)が発売されますが(7/31)、筆者は一足先に同著をご恵投いただき、改めて部活動問題とPTA問題の類似を感じました。

 同著1・2章では、部活動が「グレーゾーン」に置かれた「(建前上)自主的」な活動だからこそ、「強制」や「加熱」が起こりやすい側面が指摘されています。正規の教育内容ではないからこそ、行き過ぎた無法地帯となりがちだ、というのですが、これはPTAについても、いろいろ当てはまるところがあります。

 たとえば、PTAで徴収される会費(や保護者の労働力)も、公費(市区町村から学校に割り当てられるお金、税金)を代替する「非公式な手段(グレーゾーン)」として定着していますが、加入意思確認をしないPTAや学校でこのようなやり方をすることはとくに、地方財政法に抵触するでしょう。(※自治体や学校によっては、行わないところもあります)

 ところがPTAの問題は、教育委員会などに指導・改善を求めても、なかなか応じてもらえません。「PTAや学校がそれぞれ自主的な判断でやっていることだから」といって、放置されがちなのです。

 また同著3・4章では、部活動は「自主的なのに強制されること」や、「全員顧問」を強いられる教員の苦しみが書かれているのですが、これもPTAと近いものがあります。

 筆者もこれまでひたすら指摘してきたとおり、PTAにおける一番の問題点は活動への参加(労働力の提供)や、会費の支払い(なぜかPTA入会とセットになっている)が、あらゆる保護者に強制されてしまうところにあります。

 この強制によって、自主性は吹き飛んで建前上のものとなり、「楽しさ」よりも「辛さ」が上回ってしまうのです。

*先生の負担の背景には一部の保護者の圧力も

 同著を読むと、部活動の顧問をする先生たちの苦しみの背景に「一部の保護者の強い圧力」があることも見えてきます。

 たとえば、「練習を休みにすると、学校に電話をかけてきて苦情を言う保護者」や「自分の子どもがレギュラーになれないのを顧問の指導のせいにして、口を出してくる保護者」などがいるため、心身に不調をきたす先生が少なくないというのです。

 なるほど、これは大変です。

 たしかに筆者も、中学生の子をもつ一保護者として、「もし部活動の練習がなくなって、子どもが夏休み毎日、家でゲームしながらゴロゴロしていたら…」と想像するとおそろしく、部活はとてもありがたいのですが、しかしだからといって、先生が負担を感じて苦しむまで指導をしてほしいとは、まったく思いません

 自分の子どもが、先生を見習って、将来そんな働き方をするようになったらイヤだと思います。

 筆者を含め、筆者の周囲は「部活の練習は、もっと減らしていい(減らしてほしい)」という保護者のほうが多いです。だから「いやいや、先生、そんな保護者ばかりじゃありませんよ」と言いたくもなるのですが……、でも実際のところ、そうやって先生の時間や労力をもっと差し出せとプレッシャーをかけてしまう保護者も、存在するのでしょう。

 同著でも指摘されているとおり、おそらくそのような保護者たちは、顧問の先生たちがほぼ無償で部活動の指導を担っていることや、どれほどの負担を背負っているかという現状を、まだまだ知らないのでしょう。

 現状この問題は、保護者のなかでも、かなり温度差があるものと思います。

 先生たちのなかには、部活動指導が好きでたまらず、「時間や労力をいくら割いてもかまわない!」という人もいるにはいるので、一度そういう顧問の先生にあたった保護者は、つい他の先生にも同レベルを求めてしまうのかもしれません。

 しかし当然のこと、先生の全てが、部活動をやりたくてたまらないわけではありません。「もっと自分の子どもや家族と過ごしたい」とか「休みの日(勤務時間外)は好きなように時間を使いたい」と思っている先生だってたくさんいるであろうことを、保護者はもっと想像し、わきまえていく必要があるのではないでしょうか。

 いまようやく、一部の先生たちが勇気を出して、声を上げ始めています。

 保護者のほうも、ぜひ気が付いた人から、「ムリをしてまで、部活動指導を頑張らなくていいですよ」と、先生たちに声をかけていけるといいのでは、と思います。

*保護者は先生を、先生は保護者をラクにしよう

 翻って、PTAについても、同様のことが言えるかと思います。

 保護者は往々にして「学校が望んでいる」と思い込み、“前年通り”のPTA活動を必死でこなしているのですが、話を聞いてみると、先生たちはじつは「お母さんたち、そこまでやらなくていいのに……」と思っていることが多いのを感じます。

 ですから先生たちも、もしそんなふうに「保護者が行き過ぎている」と感じたときは、「そこまでやらなくていいですよ、やりたい人で、やれるだけのことをすればいいですよ」と、保護者に言ってもらえたらと思うのです。

 これからはそうやって、保護者は先生に、先生は保護者に、「そんなに頑張らなくていいですよ」とお互いに声をかけあいながら、一緒にラクになっていけるといいのではないかな、と思います。

  • 部活動の諸問題については、島沢優子さんの新刊『部活があぶない』(講談社現代新書)も大変参考になります
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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