「勉強をしない」と決めることも主体性。「やる気スイッチ」より「やる気すごろく」

イメージ(写真:アフロ)

東海大学情報教育センター専任講師で博士(工学)の白澤秀剛さんは、数千人単位で大学生と高校生の「主体性」について調査を行っている。一般に主体性というと、自ら進んで勉強するようなことを示すと思うが、白澤さんの調査で興味深いのは、「何かをしない」と決めることも主体性であるとしたことだ。

白澤さんは「『今はやらない』と決めることも主体性ですよね。面倒くさいけど取りあえず覚えるというのも主体性ですよね。嫌なことを避けるのも、本人の意思に基づいて決めたことなら主体性ですよね。それらの主体性を否定しておいて、都合のいい部分だけを主体性と呼ぶのは無理がある」と言う。

実際、2000人の高校生を対象にした調査の結果、彼らの主体性を「獲得行動」と「回避行動」の2つの因子に分類できることがわかった。

獲得行動とは、「満点や高得点を目指して練習問題を何度も行う」「勉強してもわからない内容があるときは先生に質問する」のような、何かをできるようにするために行う主体的な行動である。回避行動とは、「努力しても無駄と感じたときは勉強を諦める」「授業中に当てられないように、わからないふりをする」など、ストレスや葛藤を回避するために行う主体的な行動だ。

獲得行動の頻度が多く回避行動の頻度が少ない状態が、いちばん「やる気」に満ちあふれたように見える。白澤さんはこの状態を「成長志向」と名づけた。さらに、獲得行動は多いけど回避行動も多い状態を「完了志向」、獲得行動は少ないが回避行動も少ない状態を「参加志向」、獲得行動が少なくて回避行動が多い状態を「防衛志向」と名づけた。

提供:白澤秀剛氏
提供:白澤秀剛氏

「成長志向」がいちばんやる気があるように見えるのは当然だが、いちばんやる気がないように見えるのは一般に獲得行動頻度は少ないけれど勉強を避ける行動が多い「防衛志向」の状態であるはずだ。でも、最も主体性が少ないのは実は「参加志向」なのである。

子どもたちのやる気を引き出し勉強時間を長くさせようと思ったら、いかに「成長志向」に導くかが大事になるが、その移行には明らかなパターンがあることが、調査の結果わかった。すごろくのように、「参加志向」→「防衛志向」→「完了志向」→「成長志向」の順番でしか状態が移行しなさそうなのだ。

提供:白澤秀剛氏
提供:白澤秀剛氏

つまり、「勉強しない」ことすら選ばない状態よりは「勉強しない」ことを選ぶ状態のほうが「やる気すごろく」では前にいるということ。勉強することに不安や恐怖を感じて逃げている子どもに対して、「逃げるんじゃありません!」と叱ることは、実は「やる気すごろく」では「1マス戻る」ことになってしまうかもしれない。

「防衛志向」の状態になってしまった子どもには、まずは「いったんは逃げることを認めてあげることが有効なのではないか」と白澤さんは訴える。そのうえで、「最低限これだけは暗記しよう」などと成果の表れやすい努力を促すことが、やる気すごろくのコマを進めるコツだと提唱する。

やる気すごろくのコマの進め方に関するさらに細かい情報については、こちらの記事「「勉強しない」と決めることがやる気への第一歩」も参照されたい。

現在、白澤さんは教育ベンチャー「トモノカイ」と協力して、全国の学校をまわって同様の調査を行っている。調査を行うと、学校ごとに生徒の主体性の表れ方の傾向が顕著にわかる。それをもとに先生たちへのアドバイスもしている。調査に関する問い合わせ窓口は「株式会社トモノカイ」