カンボジアのゴミ山から子供を救う~元不良青年の奮闘記~

雇用を創ろうと奮闘する山勢拓弥さん(本人提供)

カンボジア・シェムリアップ州は世界遺産のアンコール遺跡があることで有名だ。年間500万人もの観光客が訪れる。しかし郊外には、観光地から出される大量の産業廃棄物が積まれ、異臭を放っている。その量は東京ドームが満杯になるほどだ。カンボジアにはゴミ焼却場がない。そのためゴミは溜まる一方で、そのゴミ山では多くの子どもが働いている。集めたゴミを売って生計を立てる村人も多い。だが、その労働環境は不衛生で、人間だけではなく自然環境にも害を与えている。その現状を目の当たりにした24歳の元不良青年。彼はカンボジアに雇用を創り、ゴミ山で働く人々や自然を救いたいと奮闘中だ。

山勢拓弥さん(24)は1993年東京生まれ、福岡育ち。中学、高校では授業をサボったり、喧嘩に明け暮れたりするなど、いわゆる”不良”だったという。かろうじて入学した大学で1年生(19歳)のとき、知人から誘われボランティア活動のために初めてカンボジアを訪れた。

「カンボジア第2の都市であるシェムリアップの郊外に行った時、ゴミ山を目の当たりにしました。量や異臭に圧倒され、さらにそこで働く子どもたちを見てがく然としました。何とか救い出せないかというのが出発点です」(山勢さん)

山勢さんは両親の反対を押し切り、大学を中退。2015年にゴミ山で働く人の生活水準の向上を目指し一般社団法人「Kumae」を立ち上げた。そして自生するバナナの木の繊維からバナナペーパーを作り、ポストカードや財布、バッグ、パソコンケースへと仕上げる工房を作った。経営は少しずつ軌道に乗り、当初3人だった従業員は今では9人に増えた。平均年齢は約25歳。みな、かつてゴミ山で働いていた。

「ゴミ山の仕事は過酷で辛かった。でもここでの仕事は楽しい」(従業員Aさん)

注目集めるバナナペーパー事業

山勢さんの工房で作られた製品は、自然環境にも優しいということもあり、注目を集めている。大学での国際的な自然環境保護を考えるシンポジウムにゲストとして招かれたり、海外のデザイナーからコラボレーションして新製品をともに開発したいというオファーも相次いだりしている。見学者やインターン希望者、取材もあとを絶たない。一方、課題といえば市場での売上が今ひとつで赤字が続いている点だ。その原因のひとつは販売をするための店舗の立地にあった。彼が出店した店舗は多くの観光客が集うナイトマーケットにある。安価な衣類品や派手な土産物が並ぶそのエリアに溢れる通りすがりの観光客たちにはなかなか彼の製品のコンセプトや魅力が届きにくいのだ。

自身の経営力やマーケティング能力の欠如を今の課題と考えている彼は、いちからビジネスを学ぶためカンボジアの大学に通っている。現在は週2日、それぞれ3時間、主に経営学の授業を受ける。来季からは週4日に授業が増える。今後の目標はバナナペーパー事業を軌道に乗せ国際的な市場に乗せることのほか、シェアハウスの運営や日本語学校の運営を通じた日本語ガイドの育成、ゴミ山の歴史を語り継ぐための資料館の設立など、枚挙に暇がない。

いつまでカンボジアにいるのか?

取材の最後の問いに、山勢さんは笑顔でそして力強く答えた。

「カンボジアを離れるつもりはありません」

画像

 (筆者撮影)

(この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。)