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親の心身の衰えは「冷蔵庫の中」でわかる 年末年始に帰省したらチェックしたいポイント ~介護の兆し?

太田差惠子介護・暮らしジャーナリスト
(写真:Paylessimages/イメージマート)

 この2年間、コロナの影響により、遠方で暮らす実家への帰省頻度が激減した人が多いと思います。間近に迫った正月も、オミクロン株の影響でどうしたものかと決めかねている人もいるかもしれません。

 いずれにしても次に帰省するとき、親の心身の衰えが気になっている人は、実家の冷蔵庫の中をチェックしてみましょう。

電話やメールだけで異変察知は難しい

 親に会えない期間が長くなると、「元気なのかどうかよくわからない」という声が聞こえてきます。

 電話やメールで連絡を取り合っていても、親のようすをしっかり把握することは簡単ではありません。子に心配をかけたくないとの思いから、具合の悪いことを隠す親もいます(逆に大げさに言って心配をかけようとする親もいます)。

 そこで、久しぶりに帰省するなら、対話を楽しむだけでなく、「変化はないか?」という目で実家を観察することをお勧めします。

 これまで多くの事例を見てきましたが、「実家の冷蔵庫をのぞいて、親の異変に気付いた」とか、「冷蔵庫の中を見てガクゼンとした」という声が結構多いのです。

Aさんのケース:冷蔵庫内がグチャグチャだったことから体調異変を発見

 Aさん(50代)の両親は実家で2人暮らし。どちらも80代です。もともと母親は几帳面で、キッチンはピカピカに拭かれており、食器棚や冷蔵庫もキチンと整理整頓されていました。

 ところが、久しぶりに帰省して、飲み物を出そうと冷蔵庫を開けたところ、モノがグチャグチャに置かれていてビックリ。庫内は汚れ、賞味期限の過ぎた総菜もあります。Aさんは母親のいないところで父親に「お母さん、だいじょうぶ?」と聞いたところ、「実は、口止めされているけれど……」と前置きした後、このところ母親は体調が悪く、床に臥せていることが多く、父親が家事を行っているのだと打ち明けました。

 離れて暮らしているAさんに心配させたくないとの母心だったのでしょう。

 翌日、Aさんは母親を診療所に連れていきました。病気が見つかり、間もなく入院となりました。

Bさんのケース:冷蔵庫内に同じ食パンが大量に。認知症が判明

 Bさん(40代)の母親は、父親が亡くなってから実家でひとり暮らしをしています。70代です。

 帰省には飛行機を利用。母親は元気に暮らしていたので、盆正月に帰るくらいでした。普段は電話で話していましたが、しばらく前から同じことを立て続けに聞いてくるなど、「あれっ?」と思うことがあったそうです。

 帰省して、冷蔵庫内を見たときには「ひっくり返りそうになりました」とBさん。同じ銘柄の食パンが袋のまま、所狭しと並んでいたのです。封が開いているものもありますが、買ってきたままのものも。 

 なかには、数か月も賞味期限が過ぎているものもあり、封を開けているパンの一部はカビがはえていました。Bさんは途方に暮れつつも、それらを捨て始めました。すると、そのようすを見た母親は「何をするの?私の朝ごはんよ」と制止……。

 Bさんは困ってしまい、地元の地域包括支援センター(高齢者の相談窓口)に電話をしました。「『そのようすでは認知症かもしれないので、受診するように』とアドバイスを受けました。地元の専門医を教えてくれたので、帰省している間に連れていきました」とBさん。

 母親は認知症の初期だと診断を受けました。恐らく、頭のなかに「朝ごはんにパンを食べなければ」という思いがあり、出かけるたびにパンを買っていたのだろう、とのことでした。

 AさんとBさんのケース、どちらも珍しい事例ではありません。その他、「おせち料理は毎年手作りする母親。黒豆や田作り(ごまめ)は得意料理。それなのに、冷蔵庫に買ってきたパックが入っていて驚いた。ムリして作る必要はないけれど、作れない何かが?」と気になって母親に問いただしたところ、「最近、疲れやすくて」と話し始めた、というケースもありました。

水まわりや車庫のキズもチェック

 もちろん“冷蔵庫”チェックだけで介護が必要となる予兆を知ることができるわけではありません。しかし、冷蔵庫は日々の生活があらわれやすい場所だといえるでしょう。

 冷蔵庫のほか、トイレや浴室の掃除の状態なども普段の生活を垣間見るのに参考になります。きれい好きな親の水回りが汚れていると何かあるかもしれません。

 また、車を運転する親だと、車庫の壁に新しいキズがないかも要チェック。「車庫の壁面がキズだらけだったので、買い物にいくときに助手席に乗ってみたら、ヤバい運転で。免許の返納を勧めた」という人もいました。

「あれっ」と思ったら日付と内容をメモ!

 家のなかのようすを見るとき、ただ眺めているのと、「変化はないか」との目で見るのとでは大きな違いがあります。ぜひ、帰省時には、こっそり(親が気分を害さないよう)観察してみてください。そして、気がかりなことがあれば、確認をする。Bさんのように、地元の地域包括支援センターに相談すれば、プロの視点で受診やサービス利用を提案してくれることもあります。

 ”異変”といえるほどのものを確認できない場合も、「あれっ」と思ったことは、日付けとその内容をメモ書きしておくといいでしょう。そういう気づきは意外と当たっています。積み重なれば、「あれっ」を感じさせる背景がはっきりしてくることもあります。

 そうなったら、それを持って、地域包括支援センターや親のかかりつけ医に相談に行きましょう。今後のなすべきことを一緒に考えてくれるはずです。

介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会)の資格も持ち「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年遠距離介護の情報交換場、NPO法人パオッコを立ち上げて子世代支援(~2023)。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第2版』(以上翔泳社)『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』(共著,KADOKAWA)など。

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