史上初!博物館がゲームセンターになる「ゲーセンミュージアム」が名古屋で開催

「ゲーセンミュージアム」は名古屋市博物館で開催(2021年6月1日~8月29日)

風営法の許可も取得!異例の独自企画展

名古屋市博物館(名古屋市瑞穂区)で企画展「ゲーセンミュージアム」が始まりました(2021年6月1日~8月29日)。「この夏、博物館がゲームセンターになる!」のキャッチフレーズの通り、ゲームを展示するだけでなく、実際に遊ぶことができるのが最大の特徴です。

博物館の展示といえば、美術品や歴史資料など教育・文化に結びつくものが基本。遊興・娯楽を目的としたゲームがなぜ企画テーマになったのでしょうか?

「確かに博物館の企画展としてはイレギュラー中のイレギュラーです。“ゲームなんて博物館の展示じゃない!”、一般の方でも博物館関係者でもそんな風に思われる方はいらっしゃるでしょう」

こう語るのは同館学芸係長の武藤真さん。異例を承知で企画した意図を次のように説明します。「本展では多様なアーケードゲームを集め、それを取り巻く環境をゲームセンター=遊び場として表現しました。そこでゲームを体験することで、思い出がよみがえったり、知らなかった遊びに出会うことができる。それぞれの世代の遊びの記憶に訴える、民俗学に通じる展示だと考えています」

名古屋市博物館の武藤真さん。お気に入りの1台は「クレイジータクシー」。「周りの車にガンガンぶつけて走ればストレス解消になります!」(C)SEGA
名古屋市博物館の武藤真さん。お気に入りの1台は「クレイジータクシー」。「周りの車にガンガンぶつけて走ればストレス解消になります!」(C)SEGA

展示で特にこだわったのが実際にプレイできること。集められたゲーム機約70台のほぼすべてが活躍した時代のまま、遊ぶことができるのです。そしてここにこだわったからこそ、開催までにはもうひとつ異例の手続きを経ています。風俗営業法の許可申請です。

「観覧料をとってゲームで遊んでもらうので名称の通り“ゲームセンター”となり、そのため風営法の営業許可が必要となります。ただし、近隣に保育園があり博物館の敷地がゲームセンター営業禁止の地域に含まれるので、博物館として風営法の許可を取るわけにいかず、営業禁止地域外の展示室を利用する本展実行委員会が営業許可を取ることとし、名古屋市が実行委員会を代表して許可を得ました。博物館が風営法の許可を得てゲームの展覧会を行うのはおそらく史上初だと思います」(武藤さん)

入口に掲示されている「ゲームセンター等営業許可証」。取得者は「名古屋市」、営業所の名称は「名古屋市博物館ゲーセンミュージアム」となっている
入口に掲示されている「ゲームセンター等営業許可証」。取得者は「名古屋市」、営業所の名称は「名古屋市博物館ゲーセンミュージアム」となっている

他にも、古いゲーム機は故障の恐れがあるため稼働日を限定する、射撃ゲームの的となるスコアシートが既に製造中止で在庫もないため特注して復刻するなど、様々なハードルを乗り越え、ただ見て回るのではなく、あくまでゲームで遊んでもらうという体験型展示を実現させたのです。

懐かしのインベーダーハウスに最新eスポーツまで

展示スペースは物販コーナーをはさんで2つに大別され、前半は1960~80年代の懐かしのゲームがズラリ。スマートボールやピンボール、スペースインベーダーやパックマンなどなど。デパートの屋上やボウリング場、喫茶店など、それぞれのゲーム機が主に設置されていた場所の雰囲気も再現されています。

60~70年代のゲームは工作的工夫が施され、子どもたちにとっては新鮮。展示されているゲームの大半は日本ゲーム博物館(愛知県 ※現在は移転準備のため休館)所蔵のもの
60~70年代のゲームは工作的工夫が施され、子どもたちにとっては新鮮。展示されているゲームの大半は日本ゲーム博物館(愛知県 ※現在は移転準備のため休館)所蔵のもの

スペースインベーダーが置かれた喫茶店のイメージを再現。コーヒーや鉄板スパのサンプルを置いた演出も憎い! (C)TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.
スペースインベーダーが置かれた喫茶店のイメージを再現。コーヒーや鉄板スパのサンプルを置いた演出も憎い! (C)TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.

これも楽しいリアルスペースインベーダー。マジックテープ付きのボールを当てて得点を競い合う。(C)TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.
これも楽しいリアルスペースインベーダー。マジックテープ付きのボールを当てて得点を競い合う。(C)TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.

70年代のゲーム機はレトロなデザインも魅力。写真は1971年に日本でつくられたピンボール「カーニバル」。(C)SEGA
70年代のゲーム機はレトロなデザインも魅力。写真は1971年に日本でつくられたピンボール「カーニバル」。(C)SEGA

当時のゲーム雑誌や新聞の記事も貼り出されているのも博物館展示ならでは。中でも、1985年の風営法改正にあたり「名古屋のモーニング大ピンチ!」と報じるローカル紙の記事は、ゲームや社会情勢と地域の文化を関連づける印象深い展示です。

当時の新聞記事。喫茶店もゲームセンター扱いになると営業は朝9時以降になり、モーニングサービスの時間帯に店を開けられなくなってしまうのでは?と関係者は不安を抱いた。協力:名古屋タイムズアーカイブズ委員会
当時の新聞記事。喫茶店もゲームセンター扱いになると営業は朝9時以降になり、モーニングサービスの時間帯に店を開けられなくなってしまうのでは?と関係者は不安を抱いた。協力:名古屋タイムズアーカイブズ委員会

後半は1980~2000年代のゲームを集め、現在の商業施設内などにあるゲームセンターの雰囲気。格闘ゲームや乗り物を操作するシミュレーションゲーム、そしてeスポーツとして国体での採用も決まっているドライビングシミュレータ「グランツーリスモSPORTS」も。コンピューターの進歩によってゲームのバリエーションや臨場感も大きく進化したことが分かります。

対戦型や2人でプレイするゲームが多く友だち同士や家族で楽しめる

筆者は小学生の息子とクラスメイトの男の子をともない足を運びました。日ごろからゲーム友だちである男子2人は、ゲームし放題の環境に大興奮。初めて挑戦するレトロゲームから最新のシミュレーションゲームまで、会場をかけずり回って様々なゲームを体験していました。対戦型など2人でプレイできるゲームも多いので、気の合う相手と一緒に来るとより楽しめそうです。何より、普段はゲームに夢中になりすぎると親に怒られることも多いはずが、ここでは博物館の展示というお墨付きを得て堂々とゲームに興じることができるのです。子どもたちにとってはこんな魅力あふれる展示は他にないでしょう。

アナログなシューティングゲームも友だち同士ならやけに楽しい。“遊び場での楽しい記憶”を共有することこそが同展の最大の狙いといえる。(C)SEGA
アナログなシューティングゲームも友だち同士ならやけに楽しい。“遊び場での楽しい記憶”を共有することこそが同展の最大の狙いといえる。(C)SEGA

観覧料のみでゲーム遊び放題。基本的に2時間半の入れ替え制となっている。(C)BANDAI NAMCO Amusement Inc.
観覧料のみでゲーム遊び放題。基本的に2時間半の入れ替え制となっている。(C)BANDAI NAMCO Amusement Inc.

ドライビングシミュレータ「グランツーリスモSPORTS」。2021年10月開催の三重ことわか国体の種目としても採用されている
ドライビングシミュレータ「グランツーリスモSPORTS」。2021年10月開催の三重ことわか国体の種目としても採用されている

一方で大人の来場者も少なくなく、もはやゲームは世代を問わず楽しまれている娯楽文化なのだと実感しました。観覧した日は比較的にぎわっていましたが、常に何かしら空いているゲームは見つけられ、たっぷり楽しむことができました。これで子どもなら300円もしくは500円なのですから、一般のゲームセンターで散財するよりははるかに安上がりです。

観覧料は夏休みをはさんで期間ごとに変更され、「夏休みまで待てない」(6月1日~7月16日)=一般1300円・高大生700円・小中生300円、「真夏のゲーセン」(7月17日~8月29日)=一般1500円・高大生900円・小中生500円。真夏のゲーセン期間の土日祝とお盆期間は日時予約制となっています。またパスポートもありこちらは5000円(予約制の日以外観覧可)。一般なら4回行けば元が取れるので、ゲーム好きの人ならパスポート購入も検討する価値がありそうです。

子ども連れやゲーム好きな人なら大いに楽しめること間違いなし。また、博物館好きの人にとっても「こんなこともできるんだ!」と驚きを感じられるはず。多様な人たちに体験してもらいたい名古屋発の異色企画展です。

(写真撮影/すべて筆者 ※写真説明中の(C)は写っているゲームに対してのもの)