根尾ドラフトに賭けたもう1人の男。日本一早い“中日・根尾特集”を生んだ竜党編集者のドラゴンズ愛!

ドラフト会議で中日ドラゴンズに1位指名された根尾昂選手 写真:日刊現代/アフロ

2018年プロ野球ドラフト会議の最大の目玉となった大阪桐蔭高・根尾昂(ねお あきら)選手。打者と投手の二刀流に加えて学業も優秀なスーパー高校生の去就に注目が集まりました。4球団競合の末、見事に交渉権を勝ち取ったのは中日ドラゴンズ。根尾選手は名古屋のお隣、岐阜県の飛騨市出身で、地元のスター候補生の獲得(見込み)に、名古屋は大いに盛り上がっています。

ドラフト当日発売のドラゴンズ本の目玉は「根尾くん特集」!

もちろんこの吉報に、ドラゴンズファンである筆者も思わずガッツポーズ。同時に、ほっと胸をなでおろしました。というのも、ドラフト当日の10月25日は著書である『ドラゴンズファン解体新書~松坂、奇跡の復活~』の発売日であり、しかも目玉のひとつが「根尾くん特集」。表紙にも「根尾くん」の名前が躍り、裏表紙ではイラストも載せて大々的にアピールしています。おそらく出版媒体では日本一早い「中日・根尾」特集でしょう。それだけに、もしも抽選で外していたら、昼に書店に並んだばかりの新刊が夕方には賞味期限切れ…なんてことにもなりかねなかったのです。

ドラフトと同日に発売された『ドラゴンズファン解体新書~松坂、奇跡の復活~』。人気シリーズ「中日ドラゴンズあるある」の後継企画。裏表紙で堂々「根尾くん特集」をアピール!(大竹敏之・竹内茂喜著、なかむら治彦画 TOブックス 1080円)
ドラフトと同日に発売された『ドラゴンズファン解体新書~松坂、奇跡の復活~』。人気シリーズ「中日ドラゴンズあるある」の後継企画。裏表紙で堂々「根尾くん特集」をアピール!(大竹敏之・竹内茂喜著、なかむら治彦画 TOブックス 1080円)

それにしても、根尾選手の複数球団指名は早い段階からささやかれていたこと。中日ドラゴンズが獲得できる可能性は数分の一しかないことは当然、予想されていました。つまり、このタイミングで実現するかも分からない“ドラゴンズ根尾”を本のウリにするのはきわめてリスキーでした。

にもかかわらずこんな大博打を打ったのはなぜだったのか? これは著者である私や共著者・竹内氏の意向ではなく、編集者の独断によるものでした。私たち著者は「大丈夫かなぁ?」と不安を抱きつつ、編集者の「根尾君推しで行きましょう!」「大丈夫です!」という熱意に押されて、気づいたら根尾選手に関する記事を何本も書いてしまっていたのです。

「ドラゴンズ愛」だだもれの熱烈竜党・編集者インタビュー!

この、今となっては大英断といえる大胆な編集方針を打ち出したのが、TOブックス・南部雄佑さんです。筆者自身も、制作段階では怖くて聞きたくとも聞けなかったその本音をあらためて明かしてもらうことにしました。

TOブックスの南部雄佑さん。中日ドラゴンズ本の他、横浜DeNAベイスターズ、西武ライオンズなどの本も手がけている
TOブックスの南部雄佑さん。中日ドラゴンズ本の他、横浜DeNAベイスターズ、西武ライオンズなどの本も手がけている

― 本の中に「根尾くん特集」を盛り込もうと考えた意図は?

南部  「僕は竜党であると同時に高校野球も大好きでして、見る時にいつも注目しているのが“最高学年でないのに活躍している選手”です。高校生の部活動で下級生が上級生を押しのけて活躍するってすごいことですよね。ましてや根尾君は全国屈指の強豪校・大阪桐蔭で1年生の時から活躍していたので、これはすごいなと。本を企画したのは5月末なのですが、中日はもともと地元重視の傾向が強く、きっと1位指名があるだろうと予想したんです。そこで、大竹さんらへの原稿依頼でも根尾君の記事を多めに用意してもらって、宇野勝さんのインタビューでも根尾君の起用方法について聞いてもらいました。そして8月22日の中スポでの1位指名宣言を見て“よし、いける!”と確信し、カバーで大々的にアピールすることにした次第です」

― 発売日をドラフト会議当日にした狙いは?

南部  「ドラフト会議当日と重なったのは偶然でした。弊社の『あるある本』は毎月25日発売で、クライマックスシリーズや日本シリーズに進出してくれれば最もファンの購買意欲がわくタイミングになると思ったので、10月25日発売に決定しました。正式に決まったのは7月半ばなのですが、その時点ではドラフト会議の日程はまだ発表されていなかったと思います。後日、同じ日にちであることが判明し、これは天の配剤だと『ドラフト会議と同日発売!』とアピールしようと決めました

― 外した時のリスクは想定していなかったのですか?

南部  「もちろん想定していました。しかし今回は徹底的に“ファン目線でのアピール”をしたかったので強行しました。取次さんや書店さんに送った書類にも『著者も絵師も編集も生涯竜党で三位一体!』というファン目線のキャッチコピーを入れました。やはり『あるある本』は、そう感じたファンの心理が売りなわけですからね。当日が近づいてくると、弊社の公式twitterでドラフト会議の予想をしたり、他球団の指名公言情報をつぶやいたり、『与田監督、当たりを引いてくれ!』とお願いしたりもしました。おそらくディープな竜党の大半はやっていたことだと思います」

― 社内や関係者からの反対意見はなかったのでしょうか?

南部  「当然ありました。“くじを外したらどうするんだ”“長く売っていけないじゃないか”と。でも、この時期にファンが最も興味ある話題から逃げたくない、とはねのけました。たとえ外しても、リアルタイムで根尾君の獲得を願い続けたことはきっとファンに届いてくれるはず。そう上司にアピールして、最終的に納得してもらいました」

― ドラフト会議で与田監督がくじを引き当てた瞬間の感想は?

南部  「山崎武司さんがバンザイホームランをした時の様な気分です!(1999年のリーグ優勝を決定づけたサヨナラ3ランのこと)」

― その時の周囲の反応は?

南部  「就業中に大きくXの字でガッツポーズをしているのを見て、野球に興味がない社員は奇異な目で見ていましたね。事情を知っている人は生温かい目で祝福してくれました(笑)」

― 幸先のよいスタートとなった本の売れ行きに対する期待は?

南部  「たくさんのディープな竜党に読んでほしいですし、売れ行きが順調なら来年も是非出版したいですね。前シリーズの『中日ドラゴンズあるある』は3巻まで出版したので、それを超えるくらいの冊数を出していくのが目標です」

― ドラゴンズにとっても本にとっても救世主になってくれそうな根尾選手への期待は?

南部さんの想いを代弁する作中のイラスト。『ドラゴンズファン解体新書~松坂、奇跡の復活~』より。なかむら治彦画
南部さんの想いを代弁する作中のイラスト。『ドラゴンズファン解体新書~松坂、奇跡の復活~』より。なかむら治彦画

南部  「作中のイラストで中田アマスカウトディレクターに『名古屋の大谷になってくれ~!!』と言わせているのですが、まさにそれが僕の気持ちを代弁してくれています。もちろん最終的には本人の意思と球団の方針で決まりますが、ファンとしてはどうしても二刀流を夢見てしまいますね。大谷選手のような起用方法もロマンですし、『野手スタメン→中継ぎ→野手→抑え』などの高校野球的な起用方法もまたロマンです!

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以上のインタビューを読んでいただいて分かるとおり、本のキャッチフレーズは『著者も絵師も編集も生涯竜党で三位一体!』ですが、誰よりも担当編集者が熱いドラファン魂を胸にたぎらせ、だからこそできた一冊だったのです。

このところ明るい話題が少ないドラゴンズですが、そんな停滞感を一気に吹き飛ばす根尾選手のドラフト指名成功。これを機にドラゴンズも、ついでに本も人気沸騰!を期待したいところです(今回は我田引水な内容ですみません)。