3月からの春の大移動シーズン。転勤や就職、進学などで、新たに部屋を借りて、引っ越しをする方も多いと思います。

みなさんは、新居選びの際に何をポイントにして考えますか? 間取りや陽当たり、駅からの距離やエリア、そしてもちろん家賃あたりでしょうか。

でも、これまで2500件以上の賃貸トラブルに携わってきた経験上、意外と大切なポイントになるのが実は『ゴミステーション』だと思います。

まさか、自分の部屋が“ゴミ屋敷”に

これは、私が実際に話を伺ったケースになります(名前は仮名)。

看護師の恵さん(29歳)は、引っ越しの新居選びで、陽当たりの良い、明るい部屋が気に入ってワンルームの物件を借りました。仕事から疲れて帰ってきても、開放的なこの部屋ならリラックスできると感じたのです。窓辺で観葉植物を育てて、緑いっぱいの部屋にしようと思いました。初めてのひとり暮らしに、心が踊ります。勤めている病院からもそう遠くもなく、新生活が快適そのものになるはずでした。

ところが住みだしてすぐに、ある問題に気がつきました。

なかなかゴミを出せないのです。

そのマンションでは、ゴミは収集日の朝に出すことがルールになっていました。マンションのゴミステーションは、敷地の一角にコの字型のブロックで囲まれているだけで扉も無く、ボックスが置かれているわけでもありません。ただ野ざらしのスペースがあるだけです。

そのため前日の夜にゴミを出してしまうと、早朝にカラスがゴミを荒らしてしまうので、必ず収集日の朝に出してくださいということでした。

恵さんの仕事は、シフト制の病院勤務。夜中から朝までの深夜勤もあれば、夕方から深夜までの準夜勤もあります。これに加えて朝から夕方までの日勤もあるので、スケジュールがかなり変則的です。そのため、どうしても出したい週2回の生ゴミの日はもちろん、他の種類のゴミ捨ての日もタイミングが合わず、部屋の中に少しずつ捨てられないゴミが溜まっていってしまいました。

さらに追い討ちをかけたのが、このコロナ禍でした。ただでさえ3交替という変則的な勤務の上、手が足りないということでさらに業務が増え、シフトも崩れます。身体は極限まで疲れ、家で自炊する余裕もありません。コンビニで買ってきたものを食べ、家ではただ寝るだけの生活。準夜勤で夜中の1時過ぎに帰宅すると、疲れて泥のように眠ってしまいます。ゴミ捨てはもちろん気になりますが、そのためだけに数時間で起きることなど、とてもじゃないけどできません。

その結果、恵さんはゴミが出せない日々が続いてしまいました。コンビニでの食事は、自炊よりゴミも多くなってしまいます。気がついたら、袋に入ったゴミが床を埋め尽くすようになってしまいました。

部屋を借りる時には生活スタイルも考慮して

一般的なゴミステーションには、大きく分けて3つのタイプがあります。

ひとつは独立して扉が付いており、24時間いつでも出せるところ。次に大きなダストボックスが置いてあり、指定日の前でも出しても良いところ。そして最後が、恵さんが借りた物件のように、敷地内の区切られただけの場所に当日にしか出せないタイプ。

平日の9時~17時で働いているような人であれば、どのタイプのゴミステーションでも特に問題にはならないでしょう。一方、変則的な勤務スタイルの場合、ある程度自由にゴミが捨てられる物件でないと、恵さんのようにゴミ屋敷になってしまう可能性が高くなります。でも、特に初めて部屋を借りる場合、物件選びの際になかなかゴミステーションのことまでは頭が回らない方が多いと思います。

「大きなゴミ袋を買ってきて、休みの日にゴミをまとめるのですが、結局それを出せるのは収集日だから、それまで部屋に置きっぱなしになってしまいます。その上、ゴミ出しの日に準夜勤が重なると、結局そのまま出すことができず、どんどん部屋の中にゴミが溜まっていってしまいました……」

もはや自分ではゴミを出すことができなくなってしまった恵さんは、業者に依頼してゴミを撤去してもらいました。撤去費用は10万円ちょっと。大きな痛手ではありますが、恵さんには収入もあったので、なんとかなりました。

ところが溜まったゴミを撤去した部屋は、すっかり変わり果てた姿になっていて、恵さんは愕然としたのです。

生ゴミなどの水分によって、フローリングが黒ずんで変色。一部腐ってしまっている部分すらありました。仕事が忙しかったとはいえ、ゴミを捨てられなかったツケがこんな結果になるなんて……さすがにここまでとは想像していなかったのです。

ゴミステーションがきっかけで早期退去へ

結局、恵さんはそのマンションに1年も住まずに転居することにしました。自分のライフスタイルだと、24時間ゴミ捨てができる物件じゃないとダメだとようやく判断したからです。

ゴミの処分代の10万円に加え、フローリングの張り替え費用20万円ほども原状回復として請求されてしまいました。引越し代金や新たに借りる部屋の初期費用も大きな負担です。それでもこの決断は正しかったと恵さんは言います。ゴミが敷き詰められた部屋では、心まで病んでしまいそうだったからです。

「ゴミ屋敷ということを、誰かに知られているのではと、ビクビクしていました。家に帰っても、部屋中にゴミ積み上がっているし、仕事の疲れにゴミを出せないストレスも相まって、軽いうつ状態になっていたのかもしれません」

私が携わってきた賃貸トラブルのなかで、ゴミ問題で苦しんだ人たちの大半はゴミ捨てのタイミングが合わなかったことがきっかけです。

だから物件選びの際には、ぜひ自分のライフスタイルに合ったゴミステーションかどうかについても必ず確認していただければと思います。