2019年末以降のコロナ禍において、筆者が携わってきた賃貸物件のトラブルで、圧倒的に増えたのが「騒音トラブル」です。

2020年3月と4月に警視庁が受理した騒音に関する通報は、コロナ禍前の2019年と比べて3割近く増えたとのこと。筆者の元にも、特に最初の緊急事態宣言中は、騒音トラブルへの対処法を求める家主からの相談電話が連日止まりませんでした。

在宅ワーク等で家にいることが増え、それまで気がつかなかった音に敏感になったことは大きな要因です。さらに、長引くコロナ禍で先の見えない不安や、行動を制限される日々のストレスから、必要以上に住人たちの心が苛立っているように感じます。

「たかが音の問題」と軽く考えることはできません。隣人同士の音をめぐるトラブルから、昨年は男性が、今年は若い女性が隣人に刺されて亡くなるという痛ましい事件にまで発展しています。

生活の場、そして癒やしの場であるはずの住まいにおいて、音の問題は、被害者にとってはもちろん、加害者側にとっても、大きなトラブルにつながる可能性のあるやっかいな問題です。

そこで今回は賃貸物件において、「騒音トラブル」から身を守る3つのポイントをお伝えします。

自分たちで解決しようとしない

子供の走る音やコンと響く音にイライラして、思わず壁を叩き返したり、天井を突きたくなる衝動に駆られませんか? でもそれは絶対に止めてください。もし実際に行動に移してしまうと、相手の感情を逆撫でして音のトラブルがエスカレートするだけでなく、最終的に訴訟となった場合でも、「どっちもどっち」と判断されてしまいます。

賃貸トラブルについて、家賃滞納に関しては賃借人の債務不履行なので比較的簡単に明け渡しの判決が言い渡されます。しかし、それ以外のトラブルの場合には、裁判官は「改善されるだろう」と判断して、なかなか明け渡しの判決を言い渡しません。それだけ「住まい」を奪うことに対して消極的な裁判所に、「どっちもどっち」と判断されてしまえば、最終的に裁判になったとしても、騒音の主が退去してくれる道はなくなってしまいます。

まずは共同住宅なので、ある程度の生活音は仕方がないと思いましょう。

それでもどうしても我慢ができない音なら、直接音の主に交渉するのではなく、管理会社に対応をお願いします。この時の注意点ですが、決して感情的にならず、騒音の詳細を伝えることが大切です。例えば「何時ごろ」「どこから」「どのような音」が自分を悩ませているのか、それが継続的なのかどうかも重要なポイントです。事実を正確に伝えたうえで「改善を促してください」とお願いしましょう。管理会社に怒りをぶつけて関係性を悪くしてしまうのは、対応してくれる味方を失ってしまうことになるだけです。

小さな子どもがいる場合は借りる場所を検討する

ご自身に小さな子どもがいる場合、いくら「大人しくしなさい」と叱ってもあまり効果はありません。子どもはどうしても、飛んだり跳ねたりしてしまいます。

コロナ禍で、階下の人との音のトラブルに悩まされてきた賃借人のケースです。

子どもは、幼稚園の年長と小学1年生の兄弟。

「子どもを柱に括りつけることもできないし、男の子ふたりだから叱ってもどうしても跳ねてしまう。そうしたら下の階の人から床(先方の天井)を突かれるんです。夜は8時には寝てしまうので、子どもが部屋にいる数時間だけなのに……。時にはこちらの階まで上がって来られて、インターホンまで鳴らされるんです。もうこちらがノイローゼになりそうです」

私が話を聞いている間も、子どもが飛び跳ねると、賃借人は瞬間的に座布団を着地地点に置こうと動きます。もうこの動きが身に沁みついてしまっているのでしょう。

結局この賃借人は、『このままだと迷惑をかけるだけでなく、自分も精神的におかしくなる』ということで、引っ越しました。転居先は階下が駐車場の2階部分で、鉄筋コンクリート造の建物でした。

子どもがいる世帯は、物件を選ぶ際に、1階部分か、もしくは階下に居室がない部分や、戸建て賃貸等を探すのが安心です。

そのうえで、引っ越したら「できるだけご迷惑をおかけしないよう気をつけますが」と先に一声かけてしまうのも、共同住宅での生活を円滑にするために欠かせないことかもしれません。

転居するという選択も視野に入れる

冒頭でもお伝えした通り、騒音が原因で事件にまで発展してしまっているケースもあります。転居には費用もかかりますが、万が一身の危険を感じる場合には転居してその場を離れることも大切な選択肢のひとつです。

仮に騒音が原因で訴訟を提起したとしても、次のような理由でなかなか明け渡しの判決には至りません。

  1.司法は住む場所を奪うことに消極的

  2.生活マナーは経済的困窮からの滞納よりも改善されやすい

  3.音の問題は個々の感覚の問題でもあり立証が難しい

そのため「管理会社が継続的に記録を取り、改善を促したけれどもダメだった」という事実を繰り返し、「これだけやってもダメだったので、もはや家主と賃借人との信頼関係は破綻した」という状況を作っていく必要があります。でも、これは本当に至難の業です。

中には騒音トラブルが解決しなかったことに腹を立て、管理会社に対して「引っ越し代金払え、転居にかかる費用払え」と怒鳴る賃借人もいますが、ここは管理会社としてもどうしようもないということを認識してください。いくら管理会社が注意をしたとしても、音を出している本人がそのことを認識してくれない限り、状況は好転しないからです。

それよりもまず、自分の身の安全を考えることが第一です。コロナにより経済的にダメージを受けている人の中には、その不安や怒りをどこに持って行っていいのか分からず、精神的に追い詰められている人たちもいます。

騒音トラブルが「事件」にまで発展してしまわないように、自ら安全を確保するという意識が大切です。

持ち家の場合は簡単に引っ越しすることはできません。その点、賃貸の場合には費用はかかりますが「身軽に動けるから良かった」と前向きに捉え、騒音トラブルが解決しない場合には争わずして転居するという選択肢も持ってもらえればと思います。

人里離れた場所に住まない限り、「音と住まい」の問題は切り離せません。

緊急事態宣言が解除となり、これからクリスマスや年末年始のイベントもあるので、人が集まる機会も増えると思います。

音の問題にはなるべく寛容になることを心がけつつ、自分たちも音で迷惑かけないように気をつけていきましょう。