春は引っ越しシーズンというイメージですが、年々物件の動く時期が前倒しになっています。賃貸業界の繁忙期も3月から1月、早ければ12月とスタート時期はずいぶん変わりました。繁忙期に部屋を借りる際には、まだ今の入居者が住んでいる段階で希望者が申し込みをする→ある程度の審査をしておく→居者が退去する→実際に室内を確認→すぐに契約するという流れになります。実際に室内に入ってみたら、イメージと違うとなっても、もはや空いている物件はないかもしれません。そのため10月ごろからなら、ゆっくり空室になっている物件を見た上で契約できるので、全体的に物件の動き出す時期が早くなってきたという訳です。

では実際に部屋を借りる場合、どういったところに気をつければいいのでしょうか?

筆者は仕事柄20年近く賃貸トラブルに携わってきた中で、家賃滞納者からの相談対応や問題のある物件を直接見続けてきたことで、賃貸契約を失敗しないために注意すべき共通項のようなものが見えてきました。そこで今回は「借りた物件がそもそも間違っていた」からの転居を避けるため、3つのポイントをお伝えします。

①更新料や更新事務手数料含めての支払賃料で検討する

部屋を決めるうえでいちばん重要になるのが、家賃でしょう。家賃の高い物件=良い物件となるのは当然のこと。しかし自分の収入や自由に使えるお金に対し、絶対に無理な金額を設定しないことが大切です。家賃は、毎月支払う固定費の中でもいちばん高額な出費となります。そのため、予算よりも「数千円アップするだけだからいいか」とうっかり高い物件を借りてしまい、結果として家賃滞納に繋がってしまうことは、決して珍しい話ではありません。

実際、滞納してしまった人から話を聞いてみると、ほぼ全員が「いい物件を見てしまったことで、月々これくらいの差なら…と甘く見積もってしまった結果、つい背伸びした家賃なのに借りることになってしまった」と言います。

特に初めての一人暮らしの人などは、毎月の生活費がどれくらいかかるかも把握できていない状況です。まずはそれらを含めた1ヶ月あたりの支出額を知るためにも、賃料は低めに設定しておきましょう。

さらにエリアによっては気をつけないといけないのが、『更新料』と『更新事務手数料』の存在です。毎月の賃料だけを支出額と判断して物件を借りてしまうと、2年ごとの更新料や更新事務手数料支払い時にパンクしてしまう場合もあります。共益費ほか付属的な費用も全て含め、月割りにした金額を支出額として把握しておくことが重要なのです。

中には「みなし家賃」として月割りの支払参考金額が記載されている場合もありますが、普通は自分で支払額を計算していかねばなりません。不動産会社が作成する「マイソク」(物件概要や間取り、地図や条件等記載あるもの)を自分で確認し、最終的な1ヶ月あたりの支払額がいくらになるのかチェックしておきましょう。

「家賃の1ヶ月分ぐらいで大袈裟な…」と思う方もいるかもしれませんが、カツカツで家賃を支払ってきた人にとって、更新月に通常の2倍以上の家賃を支払うことが大きな負担になります。更新料分のお金を貯めておかねばならなかったところを失念し、その分を消費者金融から借りてしまったことで支払いに追われるようになり、仕事に集中できずにミスが続き、結局離職に追い込まれてしったという人もいました。

「借りる時は更新料くらい貯金できると思っていたのですが、会社を辞めて鬱状態になって……。今は生活保護受給しながら生活をしています。元気になったら、また仕事をしたいのですが……」

たかが更新料、ではありません。しっかり確認しておきましょう。

② 物件の周辺やエリアの情報もよく確認する

都心の物件は、四方を背の高い建物に囲まれていることもよくあります。そのため『南向き』と表示されている物件であっても、一日を通して陽の光が全く入ってこないという場合もあります。まだ入居者がいるので部屋の内見はできないという状況であっても、申し込み前に必ず物件の近隣を確認するようにしましょう。実際に現地に行けなくても、地図アプリから写真等を確認することもできます。こういう手間を先にかけることで、住んでからの「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができます。

実際に現地に行った際にはエントランスやごみステーション、駐輪場等も見てみるようにしましょう。これらが汚いようであれば、物件管理が行き届いていないことになり、実際に生活する上でストレスを感じるようになる可能性が高くなります。

もし集合ポストでガムテープが張られているところがあれば、それはガムテープの数だけ空室があるということ。空室が多い物件は、何かしら理由がある場合が多いので注意が必要です。ポストにチラシがぱんぱんに入っているような場合は、入居者もだらしない人が多いかもしれません。騒音やゴミ問題等、入居者間でのトラブルに発展する可能性も高いかもしれず、なるべくなら避けた方がいいかもしれません。

また、2020年8月より、ハザードマップで水害等の危険エリアの説明をすることが業者側に義務付けられました。ただし賃貸人側は、物件を借りることがすでに確定した後、重要事項(契約時)のひとつとしてその説明を受けることになります。つまりその段階までは、業者側には説明の義務はありません。そのため、自分が借りたいと思っているエリアのハザードマップは、予め確認しておくようにしましょう。

ハザードマップでの説明が義務付けられる前に物件を借りたところ、今年8月の大雨によって車が2回浸水してしまったという人もいます。その後ハザードマップでしっかり確認したところ、やはり危険地域になっており、「もっと早く知っていれば、車をダメにすることもなかった」と嘆いていました。

③ 賃貸借契約書、そして登記簿謄本もチェックする

賃貸借契約締結の際、契約書は隅々まで確認するようにしましょう。何かトラブルが起きた際、最終的には契約書に明記されていたかどうかで判断されます。後から「聞いてない」は通用しません。「難しいし面倒だな」と感じても、契約書の記載事項は必ず自分で全て目を通し、もし不明な点があればその場でしっかり確認し、不安要素を取り除きましょう。

また、物件自体はいろいろ気になったとしても、家主がどのような人かまでをチェックする人は少ないかもしれません。それでも、対象物件の登記簿謄本は必ず確認するようにしてください。業者に依頼すれば必ず見せてもらえる書類です。

登記簿謄本には物件の構造や所有者、その所有者がどういう経緯で物件を取得したか、融資を受けているかどうかなどが記載されています。

家主が物件を買うために金融機関から資金を借り入れた場合、登記簿謄本には必ずその旨が記載されます。仮に家主の返済が滞った場合、物件は抵当権を実行されて競売となってしまいます。競売手続で物件の所有者は買い受けた人に移り、物件の賃借人は6か月以内に退去しなければならなくなります。その際の引っ越し費用等は、誰も支払ってはくれません。そのうえ預けていた敷金も戻ってはきません。

「借りていた物件が競売にかけられたが、自分も出ていかなくてはいけないのか」という相談を実際に受けたことがあります。この時は、まさに上記の抵当権実行に該当するケースだったため、相談者は無条件で退去せざるを得ず、次に借りる資金もなかったため実家に戻らざるを得なくなりました。

借り入れた資金の返済を家主ができないというケースは、さすがにそう頻繁にあることではありません。ただ、可能性がゼロというわけでもないのです。部屋選びの際には、少し気に留めておくと良いでしょう。

新しい生活が始まる引っ越しは、気持ちもワクワク高揚します。何点か気をつけるだけで、入居後の新生活は快適になります。ぜひトラブルに巻き込まれないよう、参考にしていただければと思います。