相次ぐゲーム関連企業のBクラブ買収

プロスポーツ、特に男子バスケのBリーグには“ゲーム”と縁のある企業が次々に参入している。まず東芝からDeNAに川崎ブレイブサンダースが承継されたのが2018年。翌19年にはミクシィが千葉ジェッツ、バンダイナムコが島根スサノオマジックの経営に参画し、21年にはマイネットが滋賀レイクスターズの筆頭株主になった。

そしてこの6月23日、新しいオーナーチェンジの発表があった。2020年の天皇杯王者である強豪・サンロッカーズ渋谷の全株式が、日立製作所からセガサミーホールディングスに譲渡される契約の締結が決まった。

セガサミーHDはゲーム、パチンコ・パチスロなどの遊技機、リゾート事業を展開する企業グループ。連結会社の社員は7535名(2021年3月末)で、2022年3月期の売上高が3209億円。経常利益は333億円に達し、株式の時価総額は5000億円を超えている企業だ。なお同期の売上高を見るとバンダイナムコが8893億円、DeNAが1309億円、ミクシィが1181億円となっている。アルバルク東京のオーナー企業であるトヨタ自動車は31兆3795億円だ(※千万単位は四捨五入)

チーム名、チームカラーなどの変更はなく、浦長瀬正一代表を含めたスタッフも原則的にはクラブへ残る。練習場も日立製作所が保有する柏市内の体育館を継続的に使用する。

「スポーツは強力なコンテンツ」

会見に出席したセガサミーHDの里見治紀・代表取締役社長グループCEOは、グループの“ミッション”とスポーツの関係をこう説明する。

「我々は人を楽しませることを生業とするエンターテイメント企業グループです。我々の掲げるミッションは『感動体験を創造し続ける』『社会をもっと元気に、カラフルに。』です。幅広い分野で、多くのファンに感動体験を届ける仕事をしています。スポーツはプレーする人だけでなく、それを支える人や見る方々、限りない人々に圧倒的な感動体験と、共感を与えられる強力なコンテンツです。スポーツは私達のグループミッションを果たすための、重要な手段の一つだと我々を捉えておりました」

セガサミーグループはプロゴルフツアーへの協賛、社会人野球チームの運営などで過去にもスポーツと関わってきた。現在43歳の里見治紀社長のもと、麻雀のMリーグ、プロダンスDリーグへの参入も進めている。また2019-20シーズンからはB1横浜ビー・コルセアーズのスポンサーになっていた。

里見代表は自身とBリーグとの出会いをこう振り返る。

「学生の頃はサッカー部だったんですけど、(留学先の)アメリカではストリートでバスケをして遊んでいて、NBAの試合もよく見ていました。Bリーグの試合はあまり見ていなかったんですが、2019年に当時の大河(正明)チェアマンと知り合って『一度遊びに来てよ』とご招待頂いて、初めて見たのが2019年の千葉ジェッツとアルバルク東京のチャンピオンシップです。そこでBリーグの可能性を知り、私自身が感動して、『日本のバスケもNBAに負けないくらいのポテンシャルがある』感じました」

リーグとクラブの理念に共感

新たにサンロッカーズ渋谷のオーナーとなる理由はこう説明する。

「Bリーグが掲げる『バスケで日本を元気に』『エンターテイメント性の追求』は、我々の企業グループと相容れるものがあります。このことに大きく共感しました。試合を観に来た人が勝敗に関わらず楽しんでもらえるような空間を目指していく――。これが一番重要だと思っています。そしてサンロッカーズ渋谷のクラブ理念は『バスケットボールを通じて全ての人々に夢や希望を与え、地域やコミュニティへ新たな価値を創出する』で、こちらも私達のミッションに通じるところがあり、共感を強めています。渋谷という本拠地にも大いに魅力を感じています」

サンロッカーズ渋谷の浦長瀬正一代表はこう述べる。

「日本を代表するエンターテイメント企業集団であるセガサミーグループ各社のご支援とご声援を頂きながら、これまで我々では成し得なかった新たな成長に向けて精一杯の努力をしたい」

「堅いものづくりの会社から、エンターテイメント企業の傘下に移る中で、我々が想像し得ない大きな変化がもたらされると思っていますし、期待をしている」

新B1残留に必要なアリーナは?

Bリーグは2026-27シーズンから、アリーナの仕様やクラブの売上、観客数などのハードルを上げた“新B1”のスタートを予定している。サンロッカーズが使用する青山学院記念館は、VIPラウンジの設置や、飲食の施設など、Bリーグが求める要件を満たしていない。新B1を目指すのか、そのために必要なアリーナをどうするのかという部分は大きな焦点だが、里見社長はこう口にしていた。

「ビー・コルセアーズのスポンサーをしていたこともあって、新B1構想の概略は聞いていました。この話があったときに『新B1に行けるのか?』という不安がありました。覚悟を決めないと、なかなかお引き受けできないなと思って、お話を聞いていました。もちろん売上、入場者数、そしてアリーナと色んなハードルがあります。こういった部分は、現状の施設ではクリアできません。大きなチャレンジではあるんですけれど、やりようはあるだろうと。なので我々は新B1、昇格を目指していきたいと思っています。具体的な方法に関してはお答えできないんですけれど、目指しています」

アリーナの立地についてはこう述べていた、

「(渋谷が)希望ですね。それが理想ではあります。区長もそれを望んでらっしゃると聞いています」

合同記者発表に臨むセガサミーHD里見治紀社長:クラブ提供
合同記者発表に臨むセガサミーHD里見治紀社長:クラブ提供

IT企業という“新しい風”

Bリーグの相次ぐIT企業の参入について、里見社長はこのように分析していた。

「Bリーグ、バスケに魅力があると思っているから、新しいオーナーがどんどん入ってきている。新しい風が起こっています。(Bリーグには)勝敗だけでないところのエンターテイメント性があります」

令和の主役はオンラインゲームで、日本社会における数少ない成長産業だ。業務用ゲーム機や家庭用ゲーム機から入った企業、ITから入った企業に二分されるが、セガサミーやバンダイナムコは「前者」の大手だ。

ゲームが事業として成功するためには、ユーザーを魅了するキャラクターとストーリーの提供が大前提だ。それはボードゲーム、ファミコンの時代から変わらない。一方でスマホゲーム、ソーシャルゲームが高収益を挙げている背景はサービスの最適化、ユーザー満足度の最大化だ。ストレートに言えば「気持ちよくお金を払い続けてもらう」ための仕掛けをどう用意するかだ。ITはデータを分析し、仮説を立てて手を打ち、その効果を検証するというサイクルを高速で回すツールになっている。

そしてこのノウハウはスポーツビジネスに援用できる。オンラインゲームと同じくコンテンツの質は極めて重要だが、収益を増やすためには“プラスアルファ”が必要になる。その方法はITの活用であり、「顧客を知り、分析して、最適化したサービスを提供する」というデータドリブンのアプローチだ。そこにIT企業、特にオンラインゲームで成功している企業にはプロバスケとの親和性がある。

マスコットの「ぬいぐるみ」も強みに?

里見社長はセガサミーグループとバスケの相乗効果についてこう口にする。

「我々ならデジタルを組み合わせて、例えば携帯電話とAR技術を使って、色々なことができます。試合の前も後も、楽しんでもらえるようなエンターテイメントを提供していきたいと思っています」

オフコートの取り組みについてはこう述べる。

「青山学院の体育館を使っているので、飲食や物販で、他のクラブがやっていることをやり切れていないのは感じています。青学さんからもう少しスペースを借りるのか、向かいの国連大学の広場を活用するのか、色んなことを考えなければいけません。物販はセガグループとして得意としています。日本で一番ぬいぐるみを作っていると思うんですけど……。マーチャンダイジングに力を入れていますから、サンディーのグッズもどんどん作っていきたいなとか、そういったところも考えています。試合前からもっと早く来たいと感じてもらえるような――。ヤクルトファンでない人が、ビールを飲みに行くと神宮球場に行く――。近隣の会社、平日に試合があるから遊びに行こうかというような方々を呼んで、ブースターになって頂く――。そういった策はまだまだできるかなと思います」