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Bリーグが昨年度の決算概要を発表 気になるB2の債務超過2クラブ

大島和人スポーツライター
浜武恭生専務理事(左)と大河正明チェアマン(右):筆者撮影

事業収入は4年間で2.7倍の伸び

25日、Bリーグのクラブ決算概要(2018-19シーズン)が発表された。対象は公益財団日本プロバスケットボールリーグに所属するB1・B2の合計36クラブ。収入、費用といった流れを見る損益計算書と、資産、負債、純資産などストックを示す貸借対照表(バランスシート)の2種類の概要が公開されている。

B3はクラブチームと企業チームが混ざるリーグの性質もあり、Bリーグとは別の一般社団法人として運営がされている。したがって今回の発表には含まれない。

会見には大河正明チェアマン、浜武恭生専務理事が出席。質疑応答も行われている。

昨季に比べて大きなサプライズはなかった。日本バスケットボール協会のいわゆる「新体制」は2015年からで、Bリーグは2016年9月に開幕している。各クラブの合計事業収益は2015−16シーズンと比較して4年間で2.7倍に伸びており、B1の日本人選手平均報酬(インセンティブを含まない基本報酬)は820万円から1610万円と約2倍に伸びた。

営業収入トップ10はこうなっている。

1位 千葉ジェッツ:17億6166万円

2位 シーホース三河:16億2248万円

3位 アルバルク東京:13億7791万円

4位 宇都宮ブレックス:13億7073万円

5位 大阪エヴェッサ:13億6396万円

6位 琉球ゴールデンキングス:11億1706万円

7位 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ:9億3355万円

8位 横浜ビー・コルセアーズ:8億1166万円

9位 レバンガ北海道:7億9012万円

10位 サンロッカーズ渋谷:7億3996万円

(※千円以下は切り捨て)

B1の平均営業収入は9.2億円

昨期の営業収入はB1の平均が9.2億円で、昨対比の成長率が14.5%。千葉は2017-18シーズンの54%に続き、2018-19シーズンも23%の伸びを見せた。

集客面で成功している川崎ブレイブサンダースの営業収入が6億6498万円と、一見すると低迷している。ただし、これはいわゆる会計期のズレによるものだ。2018年7月というオーナーチェンジの時期が影響し、「4月-6月」の売上が反映されていない。

19-20シーズンのB1平均予算は10.7億円が見込まれている。2015年にB1からB3までの振り分けが行われたときには「2億5千万の売上高」がB1の条件とされていた。また営業収入が5億円に達していれば「ビッグクラブ」という感覚だった。そう考えると隔世の感もある。

クラブ全体の事業収益は千葉が首位だが、入場料収入に限ると宇都宮が4億3385万円と千葉より多かった。ブレックスアリーナは常に満席状態で、観客の数の増加はこれ以上難しい。しかし小まめな改修、ホスピタリティの改善で顧客満足度を維持し、単価を上げても客離れを起こさなかった。

今後の成長株候補は琉球だ。2020年9月に沖縄市の新アリーナが完成する。これは入場料収入と営業収入の両面で大きなブーストとなるだろう。

B1人件費は収入の37.7%

トップチーム人件費はB1の1クラブ平均が3億4848万円。収入に対して37.7%という適正値が確保されている。原則としてこれは選手に加えてコーチ陣、マネージャー、通訳など「ベンチに入っている現場スタッフ」も含めた数値だ。

1位A東京、2位千葉、3位宇都宮、4位琉球という順番は、2018-19シーズンのチャンピオンシップと同じ結果となっている。A東京は7億5690万円と、計上している人件費が突出して高い。これについて大河チェアマンは個別の事情としてこのような補足を述べていた。

「アルバルクは府中に練習場があって、そこに関する費用も入れています。なので施設を持っていない千葉より高めに出てくる傾向がある」

オーナーの姿勢が「支える」から投資へ

営業収入に占めるスポンサー収入の割合は名古屋が76.3%、A東京が63.7%、三河が60.6%と続き、5位の京都ハンナリーズまで「親会社系」が続く。総額トップは三河の9億8241万円で、入場料収入の6倍近くをスポンサーから得ている計算になる。

Bリーグ開幕当初は格差を感じたB2も、事業収入が平均約3億円と底上げされた。広島ドラゴンフライズ、島根スサノオマジック。熊本ヴォルターズ、茨城ロボッツ、仙台89ERSの「トップ5」は4億円を超えている。熊本以外の4クラブはBリーグ発足後にオーナーチェンジがあったクラブだ。

日本のプロスポーツには「身売り」という人身売買を想起させる表現がある。一方で今はB2、バスケ界に限らず前向きな資本参加が増えている。

大河チェアマンは各クラブの成長についてこう見立てを語っていた。

「支えてくれるオーナーから、投資をしていこうというオーナーが増えてきたことが、(B1およびB2の)トップラインが上がる要因です」

福島、奈良は債務超過解消のメド立たず

一方で36クラブの全てが順調というわけではない。B1ライセンスは既に債務超過を認めない運用だが、2020-21シーズンからはB2も同様の扱いになる。

B2クラブを見ると群馬クレインサンダーズ、信州ブレイブウォリアーズが昨期で債務超過を解消。一方で福島ファイヤーボンズ、東京エクセレンス、バンビシャス奈良、香川ファイブアローズ、ライジングゼファー福岡の5クラブはなお債務超過となっている。債務超過のままでは、B2ライセンスの交付を受けられない。

大河チェアマンは現状をこう説明する。

「福島、奈良の2クラブは債務超過解消のメドが現時点で立っていない。他のクラブはメドが立っているか、オペレーションが済んでいる」

債務超過は帳簿上の概念で、借り入れなどによって資金繰りがつけば事業は続行できる。またB2ライセンスの交付がなかったからといって「クラブが潰れる」という意味ではない。B3以下のカテゴリーでクラブが存続する可能性も当然ある。

しかし資金繰りに追われるようでは「攻めの経営」「未来への投資」もなかなか難しい。昨期の福島、奈良は黒字を計上しているが、債務超過の額を考えると「黒字で少しずつ埋めていく」だけの時間的余裕がない。新たな投資を仰ぐ資本政策が重要で、両クラブはB2の地位を守るための土壇場に差し掛かっている。

※より詳細なデータはこちらでご覧になります。

B.LEAGUE 2018-19シーズン(2018年度) クラブ決算概要発表のお知らせ

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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