トラブル相次いだ新チケットシステム Bリーグが説明する今後の展望

大河正明チェアマン 写真:加藤誠夫

刷新されたBリーグチケット

バスケットボールファンが少し「ざわざわ」した4シーズン目のBリーグ開幕だった。7月10日に、Bリーグはチケットシステムをリプレース(刷新)した。しかし8月10日に「アーリーカップ2019東海」の先行発売でトラブルが起こり、B2開幕節の9月21日にもシステムの不具合が起こった。

ログインができない、チケットデータが消えた、QRコードが表示されない……。晴れの開幕にもかかわらず、ファンのネガテイブなコメントが目に入ってきた。大きなトラブルが収束した今になっても、システムと別に、使い勝手への不満は聞こえてくる。

ただしBリーグ側にも仕様を大きく変えた理由がある。チケットのペーパーレス化が進む中で、従来の延長線上では解決できない課題があった。二次流通、ダイナミックプライシングなど次なる課題へ対応するため、手を打つべき時期が来ていた。

Bリーグは紙を介さない電子チケットの使用を、以前から推奨している。利用者目線で考えると利便性が紙に比べて高い。売り手も購入者の属性を把握できればプロモーションをしやすい。

どういう事態が、なぜ起こり、どういう方向へ進もうとしているのか--。そんな背景を引き出して、ファンの「モヤモヤ」を多少なりとも解消することは急務だろう。そのような狙いから、大河正明チェアマンに取材を申し込んだ。

パスレボとともに米国のシステムを導入

Bリーグは2019-20シーズンから、パスレボ株式会社(以下、パスレボ)と組んで「Bリーグチケット」を刷新した。パスレボはヤフー株式会社とエイベックス・エンタテインメント株式会社が合弁して2016年に立ち上げ、「Yahoo!チケット」などを運営している企業だ。

システム自体はアメリカのチケット販売会社「AXS GROUP LLC.」(以下、アクセス)のものを、日本向けにアレンジして導入している。NBAも含めて運用実績はあり、国内でもプロ野球のソフトバンクホークス戦などでテストを行っていた。一方でアメリカと日本は条件に様々な違いがある。

大河チェアマンは言う。

「まず今回のトラブルについてファン、クラブ関係者の皆様に大変なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」

その上でこう説明する。

「新しいチケットシステムはアメリカのものをベースに導入していますが、アメリカは全試合をほぼ同じアリーナでやります。ところが日本は8割がホームアリーナだけど他は違うというように、彼らが想定していなかったことも起こってしまいます」

B1は8割、B2が6割のリーグ戦をホームアリーナで行う規定で、NBAと比べて1クラブが使うアリーナ数ははるかに多い。したがってシステムは煩雑になる。チェアマンは続ける。

「特に違うのは決済方法です。アメリカだとクレジットカード決済か、現地のアリーナでお金を払うかのどちらか。でも日本はコンビニ決済があって、日本用にローカライズして開発した機能が必要になる。そこが不具合になっているところもありました」

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写真:加藤誠夫

開幕時に起こったトラブルの背景

B2は9月20日(金)の信州-広島で開幕しているが、翌21日に大きなトラブルが起こった。同時並行で進む試合が増え、システムに負荷が集中。QRコードを上手く取ってこれない、チケット履歴を確認できないといった状況が発生した。

もちろんチケットデータが消えたわけではないし、バックアップも含めてデータベースの問題はなかった。「サーバーから情報を取ってこれない」「表示させられない」ことが不具合の背景だった。直後は理由が判明せず、再起動という原始的な方法で復旧が行われたが、負荷がかからないような調整とサーバーの増強はされている。

道路に例えればそれだけのトラフィック(交通量)に耐えうる幅があっても「5車線が2車線になっている」場所が一つでもあれば“詰まり”は発生しやすい。21日のBリーグチケットで起こっていたのはその現象だ。

運用に次の課題

他にも「顧客に購入後のメールが届かず、確認できない」という不調が一部であった。特定のキャリアメールで、Bリーグチケットから送信されたメールが弾かれていたからだ。一般論として似た内容のメールが大量に送信されればスパムと見なされ、セキュリティフィルターに引っ掛かりやすくなる。事前にプロ野球で運用したときには、発生しなかったトラブルだった。現在は両当事者のすり合わせが行われ、メールが大よそ届く状態になっている。

パスレボと協業して進めた大きなバグ潰しにはメドが立ち、リーグ関係者がロサンゼルスに出向きアクセスとのさらなる改善に向けた協議を行った。

クレームの件数は減ったが、システムの運用ミスなどに起因するトラブルは続いている。ファンにBリーグチケットへの不信感がまだ残っている印象も否めない。安定化の兆しは少しずつ見えているが、「安心」とまでは言い難い現状がある。

トラブルの理由がシステムでなく、仮に設定ミスが理由だとしても、ファンにかかるストレスは変わらない。各クラブの担当者が習熟するための取り組みも、引き続き必要となるだろう。

スマホに合わせた使い勝手の改善は?

ファンに限らず不満が多いのはユーザーインターフェイス(UI)の部分。一例を挙げるなら「Bリーグチケットを開くたびに、情報をいちいち入力しなければいけない」といった使い勝手だ。

大河チェアマンは述べる。

「使いやすさについては、ユーザーの皆様がご指摘されているように、まだ満足のいくレベルではないと感じています。マップから座席を選択していただくところも、操作しづらいところがある。我々が掲げるスマホファーストの仕様に、早急に改修しなければなりません」

コンビニで購入するチケットがA4サイズになったことも、多くのファンが違和感を持って受け止めた部分だ。「横長の台紙に印刷されたものを、お札と一緒にチケットホルダーや財布に入れる」ルーティンが崩れるし、記念チケットの保存にも適さない。そういう変化も一部のファンにとってはストレスに違いない。

システム刷新による新機能も

一方でBリーグは今回の刷新による良き変化を想定している。チケットの半券を破り取る「もぎり」や目視は、クラブ側のコストにつながっていた。QRコード化による運営スタッフの負担減は、前向きな変化と言える。

新チケットシステム導入の理由は機能の向上で、3Dマップの導入も一つの例だ。大河チェアマンはこう口にする。

「3Dのマップが展開されれば『この席はどう見える』と分かりやすくなる。今までより楽しみながら買えると思います」

3Dのデータを用意するのはクラブ側。現状はコストや手間といった理由から、2Dマップを使っているクラブが大半で、そこは良くも悪くも新システムの“伸びしろ”となっている。

また新システムによってチャンピオンシップ、オールスターなどのビッグマッチも販売がスムーズになる。従来のものに比べて同時接続数を増やせるため、接続エラーを減らせるからだ。

シーズンチケット保有者に対するメリットも大きい。今までは30枚の「束」で客に渡していた紙チケットを、スマホ化できる仕様になったからだ。これによりチケットのやり取りは容易になる。

二次流通、細かい売り分けも可能に

新システムには不要なチケットを死に券にせず、電子データを売却できる仕組みが実装された。最低価格と最高価格の設定など改めて議論する部分はあるが、今シーズン終盤をメドに「公認セカンダリー(二次流通)マーケット」の整備も進められている。

シーズンチケットの購入者が全試合に足を運ぶことは現実的に難しい。しかし今後はシーズンチケット保有者が余り券をスムーズに売れるようになる。

クラブ側の立場から見ると券種の増加がメリットだ。従来のチケットぴあのシステムに比べて席種の設定を増やせるため、大人子供ファミリーなどの区分に加えて、「後半チケット」「特典付きチケット」「雨天割引」といった細かい売り分けができるようになった。

日本のスポーツファンは「通路脇」を好むが、そういった単価もニーズに合わせて細かく設定できる。大河チェアマンは説明する。

「1つのブロックの中でも前側、通路側の席を高くできる。僕らがこれを入れるとお客さんが便利なだけでなく、チームのチケット収入をそれによって上げられる。ここは早めに定着させていきたい」

ダイナミックプライシングの活用も視野に入っている。Jリーグでも名古屋グランパス、横浜F・マリノスなどが既に取り入れているが、対戦相手や売れ行きに応じてチケットの価格を機動的に変動させる方式だ。

チケットシステムは変革期に

IT化に伴うチケット販売の変革は、遅かれ早かれ起こるものだ。リーグ側から見たメリットをもう一つ挙げると、アクセスの新システムを、機能の割に安く導入できたことだった。中長期的に見ればエンターテイメント業界も含めた「チケットシステムの主導権争い」は大きな商機で、競争も激化していくだろう。パスレボやアクセスにとってもこれは挑戦で、彼らもBリーグを介して日本市場における実績作りを狙っているはずだ。

パスレボの新チケットシステムは、クラブ側のニーズに対応し、Bリーグのビジネスを拡大させるために導入された。ただしその過程でハレーションが起こった。夏から秋にかけて起こった事象を簡単に要約するならそうなる。

大河チェアマンは明かす。

「究極(の導入理由)は、チケットがクラブから見て売りやすくなることだと思います。リセール機能もあるし、ダイナミックプライシングもあるし、票券管理も楽になる。改善要求があったものを、新システムによって解消をするのが大前提です」

そしてこう続ける。

「想定になかった、ミスも含めた不便さに関しては、率直に陳謝を申し上げるしかありません。よく使っている方ほど、ご不満をおっしゃりたくなる気持ちもよく分かります。1日も早い安定化と新しい顧客メリット、サービスの提供を実現して参りたいと考えております」