BリーグがU15から始めようとしている 日本バスケの育成改革

U15オールスターに参加した選手とコーチ 写真=B.LEAGUE

Bリーグが「U15オールスター」を開催

8月14日と15日、BリーグU15オールスターゲーム(B.LEAGUE U15 ALL-STAR GAME)がアリーナ立川立飛で開催された。35クラブから計40名の選手が選出され、4チームに分けられた。加えてセントメリーズ・インターナショナルスクールの選手を中心に活動しているTOKYO SAMURAIも招待され、5チームによるリーグ戦が行われた。

中学生年代のチームだが、4つのオールスターチームは全て平均180センチ超。Bリーグ強化育成部の塚本鋼平氏はこう説明する。

「まずひとつ(選出の)条件として出したのは、BリーグのU15に登録されていること。その地域にいる子を勝手に連れてくるのはダメです。次の基準は『180センチ以上』です。今回は190センチ以上の子が6人推薦されています。ケガで来れない、事情があって来れない場合などはコーチの推薦で(180センチ以下の選手も)OKにしました。将来性も加味してくださいとも言いました」

今大会のMVP、MIPには下記の選手たちが選ばれた。

★MVP(最優秀選手)

・内藤 晴樹(秋田ノーザンハピネッツ)

★MIP(優秀選手)

・石川 太一(青森ワッツ)

・山口 隼(アースフレンズ東京Z)

・松田 悠之介(琉球ゴールデンキングス)

・根本 然(宇都宮ブレックス)

・Keshawn McNeill(TOKYO SAMURAI)

180センチ以上の逸材たち

出場選手を見ると180センチ以上の身長を持ちつつスキルの高い、ガードやウイングとしてプレーできる選手が揃っていた。

MVPに輝いた内藤晴樹(秋田)は185センチの身長ながら、スピードやステップでズレを作る「クリエイト能力」が高いウイングプレイヤー。スリーポイントシュートもしっかり決めていた。

松田悠之介(琉球)は180センチのPG。ドリブルのリズムが独特で、切れ込んでからギリギリの間合いで捌く上手さがあり、試合中のリーダーシップも発揮していた。

表彰の対象からは漏れたが、熊本ヴォルターズU15の門川太一も好プレイヤーだった。192センチの身長で、スキルもあり、走って身体を張ってリバウンドも取れるフォワードだ。

京都ハンナリーズU15の波多野心優は今年3月のジュニアオールスター(都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会)で京都府選抜の優勝に貢献し、大会のMVPに輝いた注目株。今回のオールスターにも選出されていたが、負傷で大事を取りプレーしなかった。

コーチ同士が選手をトレード

オールスター戦とはいえ、チーム作りにはユニークな仕組みが導入された。

「身長が全く平均となるように僕が一回並べて、それをコーチたちに渡しました。アシスタントコーチも含めて、自分の選手が入ってないチームを選んでもらいました。コーチたちが、トレードをして変えていくことをOKにしました」(塚本氏)

大会前日の8月13日には、NBAワシントン・ウィザーズのデイビッド・アドキンス・アシスタントコーチにクリニックが行われた。各チームのHC、ACは中に入って動きながら選手を観察し、適性やポジションのバランスを見極めてトレードの材料とした。選手はもちろんコーチの育成も、この大会やBリーグのアカデミーが持つ機能だ。

部活、クラブの枠を越えた大会がスタート

昨年、一昨年は8月にU15チャンピオンシップ(B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP)が開催されていた。これは各クラブのU15チームによる対抗戦だ。それがオールスターに変わった理由を、塚本氏は「U15を取り巻く競技環境の変化が一番の理由」と説明する。

まず今年度から「U15選手権」が始まる。中学校のバスケ部(中体連)、街クラブ、BリーグのU15チームが同じ土俵で戦う大会だ。サッカーでは既に高円宮杯という同種の大会があり、バスケも同様の方法を取り入れる。

塚本氏は説明する。

「2020年の3月にU15選手権(プレ大会)があって、その後は12月に固定していくつもりです。街クラブ、Bリーグのクラブ、中学校が予選から(カテゴリーの壁を越えて)戦います」

一方で今年のBリーグU15チャンピオンシップは、2020年1月6日から愛知県豊田市で開催される。2021年度以降は3月開催で固定される見込みだ。毎年3月下旬に行われていたジュニアオールスター(都道府県の選抜チームによる対抗戦)は廃止される。

「中3の壁」「高1の壁」を打ち破る

中学校の部活は夏の大会で「引退」する通例がある。Bリーグはそれを敢えて壊そうとしている。塚本氏はこう説く。

「中3は出さないという中学校も一杯あります。だとしても中3の壁、高1の壁をどうしても打ち破っていかなければいけない」

サッカーでも20年ほど前まで「中3の壁」「高1の壁」が育成年代の大きな問題として挙げられていた。夏に一度サッカー部を引退し、半年ほど競技から遠ざかる間にコンディションやパフォーマンスを大きく落とす現象だ。高校ではいきなり高いレベルに入ってプレーを再開するため、ケガが多発していた。

文武両道は大事だが、3年間コンスタントに勉強をすればいい話であって、半年もプレーを止める必要はない。サッカーはクラブチームが育成の主流になり、中学生が最後までプレーできる環境が整えられた。バスケも「失われた半年」を埋める必要がある。

2021年春には次の大きな変化がある。現在は暫定的に中体連とBリーグのU15チームの「二重登録」が認められている。しかし2021年4月以降はそれが認められなくなる。また21年4月には各クラブのU18チームも出揃う。

「学年で考えたくない」

今の日本代表を見ても、複数の選手が中学生年代から越境入学を経験している。「バスケ塾」的なクラブチームの活動も盛んにされている。選手、父兄からもBリーグのアカデミーは問題なく受け入れられるだろう。

ただそうはいっても、日本バスケの現状を見れば、中体連が主流であることは間違いない。中学生年代の主要な大会が年明けに開催された場合、各校が3年生を出すかどうかは未知数だ。

塚本氏はこう分析する。

「引退したら勉強に専念というところも根強くある。私立はエレベーター式に残るから、ずっと戦わせる中学校もあるでしょう」

その上で彼はこう述べる。

「昨年はユーロリーグでU18の選手が18人デビューしている。U15とうたっている以上、学年で考えたくないというのが本音です。U15選手権大会に2年を出すか、3年を出すか、という発想自体をBリーグが持っていません。U12にとてつもない子供がいればU15に入れるべきですし、U15の逸材はU18に上げたほうがいい。実際にU15は小学校5年生から登録できることになっています」

日本サッカーの俊英・久保建英は中2で「U-15」を卒業し、高1で「U-18」を卒業し、高3の6月でJリーグを卒業した。日本バスケもそういう選手が誕生する環境を整えようとしている。

部活を引退した逸材の受け皿にも

BリーグのU15チームには、夏に部活を引退した選手の受け皿機能もある。例えば昨年は“八村塁二世”の期待も高い山崎一渉(現明成高校)が千葉ジェッツのU15でプレーしていた。

各都道府県のリーグ戦も徐々に整備が進んでいく見込みだが、リーグ戦は1チームの登録が15人に絞られている。ただし3分の1までの入れ替えは、1回限りで認められる。その5人に「引退後」の選手が入っていることは想定している。

U15チャンピオンシップには「1クラブ1チーム」しか参加できない。しかしリーグ戦については「Bチーム」「Cチーム」の参加も可能で、地元の街クラブとBリーグのアカデミーが提携する方法も想定されている。

塚本氏はBリーグと日本バスケの育成改革が目指すところをこう述べる。

「一挙に始まっていくU15改革の中で、私たちが立脚しなければいけないのは、いかにして世界へ進出する選手を出すのか。夢を持った選手たちを、どのようにして世界に飛び立たせるか。その道筋をクラブに理解して作って欲しいというのが強い願いです」