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最高の"誕生日プレゼント"を糧に 飛躍の1年へ踏み出す馬場雄大

大島和人スポーツライター
齋藤拓実(左)と馬場雄大(右)の23歳コンビ 写真=B.LEAGUE

ダンクとパスの両方で見せた秋田戦

馬場雄大はこの11月7日に23歳の誕生日を迎えた。1995年11月のオリコンヒットチャートを見ると、1位は安室奈美恵の『Body Feels EXIT』。“アムラー”が街に現われはじめていた時代に、彼は生を受けたことになる。

馬場は筑波大4年の夏からアルバルク東京に加わり、2018-19シーズンはプロ2季目。昨シーズンはBリーグの新人王にも輝いた。198センチ・90キロの体格は日本人プレイヤーとして大型だが、その凄みは「走れて跳べて技術がある」というプラスアルファだろう。速攻からのダンクシュートは、バスケを知らない人にも一目で分かる馬場の売りだ。

11月7日に開催された秋田ノーザンハピネッツ戦。馬場は第1クォーター半ばに登場し、合計22分1秒のプレータイムで14得点を記録。そのうち3本はダンクシュートだった。

一方で「上手さ」「冷静さ」も見て取れる展開だった。秋田の守備は過剰なほど激しくプレッシャーをかけてくるスタイル。一人の選手に二人が詰める「ダブルチーム」を使う場面も多い。A東京は全員が点を取れるチームだから、個が無理に仕掛ける必要はない。それもあって馬場はパスの中継点となり、相手を見て正確に素早くボールを動かしていた。彼はこう説明する。

「(相手守備の)ヘルプが強かったらそこでフリーマンを待ちますし、相手を見てやりました。何本か行ったら少しずつ相手が僕のドライブに寄ってきて、そこは冷静に判断できたかなと思います」

馬場が喜んだ同期の活躍

A東京は100-55で秋田に快勝し、馬場はチームメイトの齋藤拓実とともにヒーローインタビューを受けた。試合後に「誕生日にヒーローとなった喜び」を問われると、彼は少し意外な答えを返してきた。

「齋藤拓実と一緒に並べたことが嬉しいです。昨シーズンからあいつが苦労している、頑張っている姿を見てきたので」

プロ入りこそ馬場が半年早かったが、齋藤は同学年の同期。齋藤は三番手のポイントガードという立ち位置で、昨季はほとんどプレータイムを得られていなかった。しかし今季は小島元基の負傷があるとはいえ徐々に出番を増やし、7日の秋田戦は17得点7アシストと素晴らしいスタッツを残した。それが彼にとっては“最高のプレゼント”だったようだ。馬場のプレーは「グイグイ系」だが、コメントからは真面目で仲間思いの人間性が伝わってくる。

連戦続きのスケジュールだったが、チームメイトは馬場のために“お祝い”の場を設けた。馬場は少し照れた表情でこう口にする。

「パーティーというほどではないですけれど、何だかすごく祝ってもらいました。ご飯に連れて行ってもらって、最後にデザートが出てきてハッピーバースデーになって。改めて先輩方に恵まれているなと思います」

シックスマンとしての役割

今季ここまでの1試合平均10.8得点は、A東京の日本人選手で最多だ。B1の日本人選手でもトップ10に入るスタッツを残している(どちらも11月7日現在)。

今季の先発は13試合中3試合で、主に試合の途中からコートに入る“シックスマン”として起用されている。バスケは出入り自由で、フル出場も基本的に無いとはいえ、代表級のシックスマン起用は珍しい。

馬場はそんな使われ方についてこう口にする。

「最初は先発で出たいと思ったんですけれど、(菊地)祥平さんはゲームの入り方やチームのことをよく考えてプレーしています。それを自分にできるのかといわれたら、継続してはできない。あの人の経験はチームを救っていますし、サブで僕が出てくることによって常に切らさずオフェンスを展開できる。そういう意味では良いのかなと思います」

菊地の老練さと馬場の若々しい爆発力の両方があるからこそ、A東京は昨シーズンのチャンピオンチームになれた。ただ馬場が菊地のような経験を身に着けたら、鬼に金棒だろう。

「それ以上にできた」とルカHC

彼はいい意味でまだ成長途上だ。ルーキーシーズンの馬場について、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチはこう振り返る。

「ユウダイはなかなかチームで練習できる機会が無かった。ケガで2か月間欠場したし、代表合宿があった16週間も自分たちのチームは試合だけだった。昨シーズンもまあまあ良かったけれど、それ以上にできたかなと感じている」

馬場は23歳の抱負としてMVP、ベスト5といった「その上のタイトル」を挙げる。

「チーム的には2連覇で、個人として去年は新人王を頂いたのでその上のタイトルを狙っていきたい。富樫選手は23歳、24歳で(ベスト5を)取っているわけですし、結果を残せば取れると思っています」

彼は富山育ちだが、この後には地元で“晴れ舞台”も待っている。11月30日と12月3日には富山市総合体育館で日本代表のW杯2次予選が組まれていて、1月19日にも同会場でBリーグのオールスター戦が開催される。

馬場は昨年のオールスター戦にファン投票1位で出場しているが、「2年連続の最高得票」も彼にとっては獲りたい“タイトル”だろう。彼にオールスターへの売り込みを期待すると、「そういうキャラじゃないんですけど…」と少し困った顔をしつつ、折り目正しいお辞儀付きでこんなコメントを残してくれた。

「富山出身の選手も限られているので、これからも富山を背負って頑張っていきたいと思います。是非とも清き一票をよろしくお願いします」

素晴らしい才能とチームメイト、指揮官に恵まれて23歳の馬場はきっと昨年以上の存在感を見せてくれることだろう。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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