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普段はバスケを見ない人も楽しめるBリーグ決勝 富樫と田中の両エースに期待

大島和人スポーツライター
富樫勇樹選手(千葉ジェッツ) 写真=B.LEAGUE

決勝は26日(土)の14時05分開始

2年目を迎えたBリーグにとって最高最大の試合は、2017-18シーズンの頂点を決するB1チャンピオンシップのファイナル(決勝)だ。今季のファイナルは5月26日の14時05分から、横浜アリーナで開催される。千葉ジェッツ(東地区1位)とアルバルク東京(東地区2位)が準々決勝、準決勝を突破して勝ち上がってきた。

決勝戦のプラチナチケットは入手困難となりそうだが、NHK-BS1やスポナビライブなどの放送でも広くご覧になれる。「ファイナルだけは見る」というスポーツファンも少なくないだろう。今回はBリーグを普段見ない読者でも見どころが分かるように、両チームの最注目選手の紹介をしたい。

千葉ジェッツには富樫勇樹、アルバルク東京には田中大貴というBリーグのトップスターがいる。

千葉ジェッツの「主役」を担う富樫

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富樫勇樹選手 写真=B.LEAGUE

富樫勇樹

ポジション:ポイントガード(PG)

出身地:新潟県

生年月日:1993年07月30日

身長:167cm

体重:65kg

出身校:モントロス・クリスチャン高校

167センチの身長はB1最小だが、オフェンスの貢献度はB1最大級といっていい。田臥勇太(栃木ブレックス)も173センチと小柄な選手だが、さらに6センチ低い。

1試合平均15.7点(全体11位/以下レギュラーシーズンのデータ)、5.3アシスト(全体5位)という数字ももちろんだが、何より勝負所で切り札を繰り出す凄みが光る。バスケは原則として「40分フル出場」が無く、千葉ジェッツは他にも優秀なポイントガードがいるチームだ。それでもゲームの入り、締めは富樫の時間だ。

スピードに恵まれた彼は速攻の先頭に立てるし、相手の守備が揃った状態からの崩しもいい。田臥は「いぶし銀」タイプで全体のコントロールに強みを見せるが、富樫は「主役」で引き立つタイプだ。誰が見ても上手さが伝わるスタイルと、ユーモアや親しみやすいキャラを持つ彼は、お子さんの人気が凄まじい。

大舞台、一発勝負に自信

富樫はディフェンス目線で見るとジレンマを強いられる、手の打ちようがないタイプだ。突破を警戒して距離を開ければ3ポイントシュートを入れてしまう。身長が低い選手はどうしても上のシュートコースを閉じられるが、彼はフローターといわれるふわっとした軌道で「その上」から沈めるスキルがある。シュートを恐れて踏み込むとドリブルで抜かれ、二人で潰しに行けば空いた味方にパスを出される。加えてインサイドのスクリーンと連動した「ピック&ロール」が抜群に上手い。技術だけでなくコート内のズレを使う判断力が素晴らしい。

彼は新潟県の新発田市立本丸中で父・英樹氏の指導を受け、高校はアメリカに渡った。モントロス・クリスチャン高はNBAのスターも輩出した名門で、日本人も松井啓十郎(シーホース三河)や伊藤大司(レバンガ北海道)が富樫の先輩に当たる。彼がアメリカで培った英語力はコート内のコミュニケーションや連係で大きく活かされている。ピック&ロールのような当意即妙の状況判断が問われるプレーで、彼は外国籍選手と同じイメージを持てる。

千葉ジェッツは2016年に大野篤史ヘッドコーチが就任し、同時に富樫中心のチーム作りをスタートさせた。そこから今に至る飛躍が始まり、天皇杯(オールジャパン)は2連覇中。Bリーグの2017-18シーズンではついに初のファイナル進出を果たした。

今季の富樫は必ずしも順風満帆でなく、1月1日のアルバルク東京戦で左足太ももを負傷。直後の天皇杯と2月の代表戦を欠場した。26日のファイナルはそんな悔しさをぶつける一戦にもなる。

富樫は準決勝の直後にこんなコメントを残していた。

「一緒に戦っていてもベンチから見ていても、千葉はファイナルへ行かないといけないチームだと思う。去年より確実に自信を持っている。去年の天皇杯で優勝したときもそうですけど、いつもより大きい会場は自分としてやりやすい。準々決勝・川崎戦や準決勝・琉球戦の初日を見れば分かってもらえると思いますけれど、初戦の強さはレギュラーシーズンからある」

今季はアルバルク東京の「起点」に

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田中大貴選手(中央) 写真=B.LEAGUE

田中大貴

ポジション:シューティングガード(SG)

出身地:長崎県

生年月日:1991年09月03日

身長:192cm

体重:93kg

出身校:東海大学

昨季のアルバルク東京はPGのディアンテ・ギャレットがボールを独占しがちだった。しかし今季はルカ・パヴィチェヴィッチ新ヘッドコーチの下、バランスよく連係で攻めるスタイルに切り替えている。昨季は4強にとどまったが、今季はファイナル進出を決めた。

そんな中で田中の役割も増した。彼は「個人としては去年よりボールを触る回数も増えましたし、あくまでも自分がこのチームの攻撃の起点だと思っている」と今季の変化を説明する。

田中は192センチ・93キロとフォワード級のサイズを持つ一方で、スピードや技術が高く、3ポイントシュートも強み。加えて「勝負強さ」や「状況判断」といった部分で、アルバルク東京を背負う存在となりつつある。

試合終盤などの勝負所は田中がボールを持ち、試合を作ることが多い。1試合平均12.2得点、5.1アシストという数字も高レベルだが、それだけで評価をするべき選手ではない。準決勝で見せた比江島慎(シーホース三河)への守備は出色だったが、田中は身体を張り、仲間を助けられる選手だ。メディアへの受け答えはクールだが、プレーから秘めた熱さが伝わってくるタイプでもある。

アルバルク東京は日本を代表する強豪だが、田中は2013-14シーズンの加入からまだ「日本一」を経験していない。ファイナルはチームと田中にとって重要な一戦となる。

スター選手となれば「コート外」で注目を受けることも多く、田中も有名女優との交際が話題になった。しかし彼に浮ついた様子は全くない。23日の練習後に彼はこう口にしていた。

「バスケットボール選手なので、コートの上でどれだけいいパフォーマンスをするかだと思っています。(周りの声は)あまり気にしていないんですね」

舞台は整い、役者は揃った。千葉ジェッツとアルバルク東京というカード、選手の魅力を考えれば、「普段はバスケを見ていない人」も楽しめる試合になるだろう。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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