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引退を撤回し「二刀流」を目指すB1千葉・ライオンズ

大島和人スポーツライター
私服姿でポーズを取るライオンズ選手=著者撮影

昨季の3ポイント成功率は56.4%

レオ・ライオンズがBリーグに戻ってきた。昨年2月末に11勝30敗と降格の危機に陥っていた秋田ノーザンハピネッツへ加入。シーズン終盤の加入ながら18試合で1試合平均15.8ポイント、7.3リバウンドを記録している。

ライオンズは206センチ・115キロの「ビッグマン」だが、持ち味はクレバーかつオールラウンドなプレーだ。また昨季の彼は試投数こそ39本と多くないが、昨季は56.4%という驚異的な3ポイントシュートの成功率を記録している。

しかし秋田は横浜ビー・コルセアーズとのB1残留プレーオフで敗れ、今季はB2へ降格。ライオンズも一度は契約更新が発表されたものの、7月末に契約解除と引退が発表された。

その時点で秋田より「ライオンズ選手はバスケットボールの世界から離れ、引退後の目標としていた道に進むことを決めたということです」との説明があった。当時のリリースには「この度、個人的な理由でプロバスケットボール選手として引退することを決断しました」と本人のコメントも付記されている。

合流直後から示した高い適応力

しかしライオンズは11月末に千葉ジェッツと契約。12月9日、10日のサンロッカーズ渋谷戦でB1に復帰した。10日の試合は21分41秒のプレーで13得点、5リバウンド、2アシストを記録し、105-72の勝利に貢献。得意の3ポイントシュートは「3分の3」を記録している。9日の試合でも1本決めており、今週末は「4分の4」と100%の成功率だった。

バスケットボールは攻守ともに複雑な連携があるスポーツで、チームに合流してすぐ馴染むことは基本的にない。またライオンズは一度「引退」をしている選手だ。しかし体型はシャープだし、プレーも冴えていた。

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提供:千葉ジェッツふなばし

大野篤史ヘッドコーチはライオンズのプレーを高く評価しつつ、こう述べる。「まだ全くコンディションが上がってこないと言ってはいるものの、バスケットをよく知っているところが印象的です。フロアバランス、今何をしなければいけないか、どこにアドバンテージがあるのかをしっかり見つけてくれている。そしてしっかりと自分が『行かなければいけないスポット』に入れる。アジャスト(適応)能力が凄い高い選手だなと思います」

司令塔の富樫勇樹もこう口にしていた。「周りが見えていてパスも出せて、すごい賢いプレイヤーです。来て2試合目ですし、1回引退してほとんどやっていなかったと思うので、徐々に良くなるはず。個人的には思った以上にやってくれたと思う」

ライオンズ自身は「もっとリバウンドを取って、ディフェンスのエナジーを出していかなければいけない」と反省を述べつつ、「2日間でこれだけ合わせられるとは思っていなかったし、そこはサプライズだった」と手応えを口にしていた。

本人に聞くと現在のコンディションは「75%」とのこと。健康や体型を維持するための運動としてジムワーク、バスケットボールは一応やっていたとのことだが、「激しくやっていたわけではない」と振り返る。

一方で彼は通算8か国のプレー経験があり、間もなくプロ10年目を迎えるキャリアを持つベテラン。「これまで長いことバスケットボールをやってきたので、戻し方は分かっている。現時点でどこまでできるかも理解できている」と復調に自信を見せる。

「100%に戻ったら少しずつビジネスに戻っていきたい」

彼がいつ、どういう理由で現役復帰を決めたのか?それを質問すると、想定外の答えが返ってきた。

「自分としてバスケットボールから離れなかったということではない。秋田との話に少し上手く進まないところがあって、仕方ない選択だった。バスケを『したくない』と思ったことはなかった」

彼はデザイナーというもう一つの顔を持ち、それとの兼ね合いが引退発表の背景となったようだ。ただバスケットボールに対する気持ちは残っていた。それは彼自身の言葉で強調していた。

5月にアメリカに戻ってから、彼はデザインの仕事に励んでいた。彼は「自分はファッションデザイナーなのでデザインをしたり、ファッションショーをいくつかやったり、ビジネスの立ち上げをやっていました」とバスケから離れていた半年間を振り返る。

プロに復帰した直後ということもあり「今は100%バスケットボールに集中しています」とのことだが、ライオンズは「コンディションが100%に戻ったら少しずつビジネスに戻っていきたい」と『二刀流』へ意欲を見せていた。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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