昨日(1/19)放送「青のSP第2話」がマタハラを扱う。自分もやっていないか考えて、と真木よう子さん

関西テレビ放送カンテレ公式HPより

昨日(1月19日(火))放送の「青のSP―学校内警察・嶋田隆平―」第二話がマタハラ(マタニティハラスメント)を扱い、女優の真木よう子さんが「“マタハラ”について知らず知らずのうちに自分もやってしまっているのではないか、と考えながら観ていただければ」と語っていると知り、録画してドラマを観てみた。

ドラマのテーマにマタハラが扱われるのは、私の知る限り2015年テレビ朝日系放送の武井咲さん主演の「エイジハラスメント」、2018年日本テレビ系放送の菜々緒さん主演の「Missデビル」などがある。

昨年から今年にかけてコロナのニュースばかりの中で、こうして時々ドラマでマタハラを扱い、視聴者に思い出させてくれるのは、マタハラ防止の活動をしている私にとってはとても有難い。

真木よう子さんが語るように、今一度皆さんに“自分事”としてマタハラを考えていただければと思い、「青のSP第二話」の解説記事を以下に書こうと思う。マタハラの常套句や周囲に業務のしわ寄せが行ってしまう問題など、「青のSP第二話」はマタハラを知る教材としてとても良くできていると思う。

以下、ネタバレ含むので、ドラマの視聴をこれから楽しもうとしている方はご注意いただきたい。また、ドラマの解説ではなく、あくまでもマタハラの解説となる。

写真1:テレビ画面より筆者撮影
写真1:テレビ画面より筆者撮影

今月よりフジテレビ系「火曜21時枠」で放送されている「青のSP―学校内警察・嶋田隆平―」とは、「守ってやるが、容赦はしない」をキャッチコピーに学校内警察(スクールポリス)に扮する藤原竜也さんが事件に立ち向かう学園エンターテインメント。

その第二話では、妊娠3カ月の英語教師、水野楓先生(山口紗弥加)の周囲で様々な嫌がらせが起き、新たな事件へと発展していく。タイトルバックが流れる前の冒頭で、さっそくマタハラ発言があり、真木よう子さん演じる国語教師、浅村涼子先生が「マタハラですよ!」と年配の男性教員を諫める(いさめる)シーンがある(上記写真1参照)。以下セリフ。

水野先生(妊婦/山口紗弥加):

「不妊治療の間は不安しかなかったんだけど、今となってはいい思い出」

青木先生(若手の男性):

「身体がしんどい時には遠慮なく言って下さいよ。いつでも代理、引き受けますから」

阿部先生(年配の男性):

「青木先生、妊婦だからってあんまり甘やかさないでくれよ。こっちまで気遣い要求されちゃ、たまんないから」

一ノ瀬先生(年配の男性):

何かあった時に頼りにされちゃ困りますしね

水野先生(妊婦/山口紗弥加):

「別に私は、そんなつもりないですから」

阿部先生(年配の男性):

なくても圧かかるでしょ

浅村先生(同僚女性/真木よう子):

「2人とも、それはマタハラですよ!

阿部先生(年配の男性):

「こりゃ失敬」

「妊婦だからって甘やかさない」「特別扱いはしない」などは、マタハラの常套句としてよく耳にする。過剰な甘やかしや特別扱いはもちろん問題だが、この言葉を繰り返すことによって、妊婦に体調不良を言いづらくさせたり、業務の引継ぎをさせづらくさせたりして、過剰な負荷をかけてしまうことがあるので、気を付けるべき発言である。

また、分かりやすい演出とするために年配の男性教師にマタハラ発言をさせているのだと思うが、マタハラ発言してしまうのは年配男性に限ったことではない。若手から中堅の年齢でも、その人の価値観やフォローする業務のしわ寄せなどからマタハラ発言してしまう可能性はある。

私が調査したマタハラの加害者は、男性上司が1位、次に男性経営層や人事だが、同僚においては男性より女性の方が2倍近く多い、となっている。

よく知られるセクハラは異性から多い、よく知られるパワハラは上司からが多い。しかし、マタハラは異性・同性問わず、上司・同僚問わず四方八方にいる人が加害者になる可能性がある。それはなぜか?

なぜなら「働き方へのハラスメント」だから。産休・育休で長期の休みを取る、戻って来ても時短勤務という働き方は「異なる働き方」と捉えられ、排除の対象になってしまう。

ドラマでも真木よう子さん演じる浅村先生が校長に抗議するシーンで、校長が「これは(マタハラは)働き方改革にもかかわる問題です」と発言している。以下セリフ。

浅村先生(同僚女性/真木よう子):

マタハラは流産の危険性もある重要な問題なんです。ここは全教師で水野先生を擁護する体制を作るべきではないでしょうか」

副校長(年配女性):

「その気持ちはよーく分かるけど、そんなことしたら余計に反感を買いますよ。水野先生だけ特別扱いをしてって」

浅村先生(同僚女性/真木よう子):

「では、嫌がらせを受けても我慢しろとおっしゃるんですか!」

校長(年配男性/高橋克実):

「これは、働き方改革にもかかわる問題です!!」

浅村先生(同僚女性/真木よう子):

「働き方改革?」

校長(年配男性/高橋克実):

「妊娠した同僚を気遣う指示を出せば、それだけ他の先生方に負担を強いるようになります。ただでさえ忙しいのに、そんなこと頼めますか。(中略)こういうデリケートな問題は大袈裟にしない方がいい」

出産・育児による産休・育休・時短勤務は、「異なる働き方」と周囲に捉えられるのと同時に、周囲に業務のしわ寄せが行ってしまうという問題がある。実際にドラマ内でも妊婦の水野先生の代わりに、若手の男性教師が夜9時まで残業しているというシーンがある。

真木よう子さん演じる浅村先生は校長に押し切られ、妊婦の水野先生に「すみません、力になれなくて」と校長に抗議した後の結果を報告するのだが、出来れば校長に「ただでさえみんな忙しいのだから、これを機会にすべての教員の働き方を見直しましょうよ。それこそが本当の働き方改革です!」と食い下がって欲しかった。

私は「マタハラ防止は、すべての社員の働き方の見直しに繋がる」と発信している。妊娠・出産・育児をする社員の働き方だけでなく、フォローする周囲の社員(教師)の働き方も同時に見直すことで、はじめてその職場の働き方改革が進む。

子どもが生まれてから8週の間に、夫(男性)が休みを取りやすくする新たな制度が創設され、今後は子どもが生まれる社員一人一人に、育休取得を働き掛けるよう企業に義務付けられる。これから男性育休が促進されるので、ぜひそれに合わせてフォローする周囲の社員の評価や対価にも目を向けてもらいたい。

写真2:テレビ画面より筆者撮影
写真2:テレビ画面より筆者撮影

他にもマタハラ問題を考える上で、ポイントとなるシーンがある。

高橋克実さん扮する校長に水野先生が妊娠を報告するシーン。「突然のことで本当に申し訳ありません」「ご迷惑お掛けしますが…」「他の先生方へのご迷惑にならないように致しますので…」と、短いシーン内で水野先生は謝り、必死であれこれと配慮する。

校長は水野先生が中学3年生(受験生)の担任であることを指摘して、「ほら、3年生は受験を控えていますし、不安定な時期でしょ。変な影響が出ないといいんですけどね」と業務のことばかりを言い、一度も「おめでとう」の言葉を掛けないでいる。

その会話を周囲の教員たちが聞いている。ドラマでは「私に迷惑掛けないでよね」と思って会話を聞いているように見える女性教員もいるが、不安そうな表情をしている女性教員もいる。(上記写真2参照)

マタハラは1人の女性社員に対するハラスメントではなく、女性社員全体に対するハラスメントだ、と私は言っている。一人の女性にマタハラすれば、この職場は妊娠すると嫌がらせされる、迷惑だと思われる、と思い周囲の女性社員も妊娠を躊躇する、もしくは黙って退職してしまう。女性は誰もが妊娠する可能性を秘めている。社員が流出してしまう会社、職場は、マタハラは女性社員全体へのハラスメント、と捉えて対応してもらいたい。

ドラマでも真木よう子さん演じる浅村先生が、「これは(マタハラは)、全女性教師の問題なんですよ!」と発言している。

写真3:テレビ画面より筆者撮影
写真3:テレビ画面より筆者撮影

他にもマタハラ問題のポイントがある。マタハラは職場内に留まらず、職場外や居住地域、家庭内でも起こる問題だ、という点である。

顧客や社外の取引企業からマタハラされることもあるし、「子どもは早く作らないの?」「子どもを産んだ経験がなきゃ、女性は一人前じゃない」などと、近所の人から言われることもある。また、家庭内で夫や父母から「子育てを優先して仕事をやめろ」と言われることもある。

ドラマの場合は、生徒や保護者からのマタハラもあった。水野先生は言う。「一部の保護者から抗議を受けました。(妊娠は)身勝手とか、不潔とか。たしかに、親の身になれば迷惑な話かなって思う」

また、ある女性生徒が言う。「SNSの裏アカ(秘密裏に設けた匿名アカウントのこと)で、女子たちが先生の悪口言ってて。流産しちゃえばいいのにって」その女性徒が見せたスマートフォンには、「中3担任が妊娠とかありえねー」「流産しちゃえばいいのに」「教師がエロ行為」などと投稿されていた。(上記写真3参照)

保護者からは、「うちの子は受験生なのよ。もし受験に失敗してショック受けて、責任は誰が取るのよ?受験生の担任ならプライベートを犠牲にして、生徒に尽くしなさいよ。それがあなたたち教師の仕事でしょ」と言われてしまう。

マタハラとは、つくづく四方八方にいる人が加害者になる可能性のある深刻な問題だと思う。迷惑を掛けられるから非難する、という理由以外に「女性はこうあるべき」「教師はこうあるべき」という各個人の「こうあるべき」という価値観がついて回るのも、この問題の難しいところだ。

価値観や常識は時代の流れで常に変化するもの、ということを一人一人が自覚していないと改善しないように思う。ひと昔前は専業主婦が当たり前だったが、今は共働き、仕事と子育ての両立を多くの人たちが望んでいる、そういう価値観・常識に変化していると知ってもらいたい。

また、セクハラ混合型のマタハラである「(妊娠は)不潔」「エロ行為」などの言葉はもはや論外だ。自分がどうやって生まれて来たのか、考えてもらいたい。

写真4:テレビ画面より筆者撮影
写真4:テレビ画面より筆者撮影

あらゆるマタハラを受け、新たな事件まで起こり、水野先生が「学校を辞めたい」と言う。ドラマのクライマックスで、主人公嶋田隆平を演じる藤原竜也さんがそんな水野先生に言う。以下セリフ。

水野先生(妊婦/山口紗弥加):

「今度という今度は、ホントに嫌になった。なんかもう疲れちゃった。学校辞めようかな」

嶋田隆平(スクールポリス/藤原竜也):

「辞めたければ辞めればいい。生徒なんて所詮他人の子どもなんですから」

浅村先生(同僚女性/真木よう子):

「なんてこと言うんですか!水野先生、今投げ出していいんですか?」

嶋田隆平(スクールポリス/藤原竜也):

「誰に咎められようと楽な道を選べばいい。そして、この生きにくい世の中を教え子たちに引き継げばいい」

コロナによる自粛で、直接会って話すコミュニケーションが減り、ますます人間関係が希薄になった。閉塞的な社会はストレスをもたらし、互いにギスギスしてハラスメント行為もますます増えるだろう。

マタハラやコロナの自粛も含めて「こんな生きにくい世の中を子どもたちに引き継ぐ」とは、胸に刺さるセリフだ。けれど水野先生は最後に「私、やっぱり生徒たちを絶望させたくはありません」と前を向く。

予測不能な時代で本当に生きにくい社会だが、前を向き少しでもより良いバトンにして、自分たちの子どもたちには引き継ぎたいものだ。