今年10月に行われた衆議院議員総選挙で、最も議席を伸ばすことに成功したのは与党でも野党でもない、日本維新の会でした。現有議席を30近く増やした日本維新の会は、大阪維新の会を母体とする地域政党から、全国政党への衣替えを仕掛けていましたが、ようやく大きな脱皮を果たすことができたと言えます。

 日本維新の会が訴えてきた内容、その一丁目一番地は「身を切る改革」に代表される政治改革でした。まずは議員自らが身を切る改革を示すという政策の打ち出し方は、政治的不信感を持つ層に対して極めて効果的であり、特にコロナ禍などで政治に対する不満が高まっている状態においては訴えとして意味があったものと思います。

 さらに、既存政党である自民・公明といった与党、立憲や共産といった野党のいずれに対しても「政権政党として信任できない」「与党支持ではないが野党に入れるほどではない(あるいはその逆)」と考える有権者の選択肢として日本維新の会が選ばれたのもまた事実でしょう。そうなると、いったい「日本維新の会は与党なのか野党なのか」という問いの前に、「日本維新の会は左派なのか右派なのか」という問いにぶつかることになります。

ネットアンケートで見えた「日本維新の会」のスタンス

 私が代表を務めるジャッグジャパン株式会社では、衆院選後に実施したインターネットパネル調査で、国政主要政党が「リベラルか保守か」を問うアンケート調査を行いました。自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組の7政党に対して、「あなたは、次の政党が「保守」、「リベラル」のどちらに属すると考えていますか。」という設問を問い、その回答を年代別(10歳刻み)で回答してもらった結果(「リベラル」を1,「ややリベラル」を2,「中道」を3,「やや保守」を4、「保守」を5と換算した値)の平均値が、下記の図表です。

「あなたは次の政党が「保守」、「リベラル」のどちらに属すると考えていますか。」の設問に対する世代別平均値の図表、筆者作成
「あなたは次の政党が「保守」、「リベラル」のどちらに属すると考えていますか。」の設問に対する世代別平均値の図表、筆者作成

 まず前提となる一般論として、人は年を重ねるごとに政治的知識を獲得し、かつ社会的コミュニティへの参加が増えることで自らの政治的スタンスが決定し(あるいは結晶化し)、政治的スタンスも偏りが極端になる傾向があります。調査結果もある意味それが投影されており、高齢になればなるほど各政党のリベラル・保守といった見方についても傾向が強く表れています。

 今回の調査では、自民党や公明党は、年を重ねるごとに「保守」、立憲民主党、共産党、れいわ新選組は「リベラル」とみられる傾向がありました。日本維新の会と国民民主党はおおむね「中道」のまま世代別の変化は大きくはありませんが、国民民主党が全世代においてわずかにリベラル寄りとみられているのに対し、日本維新の会は若い世代はリベラルとみられているものの、年を重ねるとやや保守にみられる傾向があります。波形としては自民党や公明党に似ているものの、結果的には中道の位置づけと言っても過言では無いでしょう。

 では、日本維新の会は「中道」と決めつけて良いのでしょうか。

先の衆院選で日本維新の会に投票した人(N=216)に限って日本維新の会の評価をみると、リベラル (13.0%)、ややリベラル(29.6%)を足して4割を超え、中道(34.7%)を上回ります。やや保守(14.8%)や保守(7.9%)よりも明らかに多く、衆院選ではどちらかというとリベラル票を日本維新の会が奪っていった構図が透けてみえます。

 このことから、世間一般的な見方としては「維新は中道」と見られているようですが、維新に投票した人は「維新をややリベラル寄りな政党と評価していた」と言うこともできるでしょう。

法案提出権の獲得で注目される維新の国会運営

 日本維新の会は、衆院選で41議席を獲得しました。我が国の国会では、法案提出に際しては衆議院では20名以上(参議院では10名以上)の国会議員の賛成が必要です。今回、日本維新の会はこの要件を満たしたことから、法案提出という対抗措置を得ることになりました。また、予算を伴う法律案については、衆議院では50名以上(参議院では20名以上)の賛成が必要ですが、これは日本維新の会単独(41議席)では難しいものの、国民民主党(11議席)と足すことで実現することになりました。

 これまで国会運営は与野党という明確な対立構図があり、国会運営の日程にしても議事進行にしても、与野党国会対策委員長による会談で最終的な国会運営の意思決定を決めていくという流れが一般的でした。一方、今回日本維新の会が単独で法案提出権を持ち、更には国民民主党との協調こそ必要なものの予算を伴う法律案を出せるようになったことは、国会の中でも第三局としての役割を担えるようになったことを意味します。

 そうなると、例えば内閣提出法案(閣法)に対する対抗手段として対案を提出するような戦略を採ることが可能になります。すでに日本維新の会と国民民主党は幹事長間で立法について同じ方向性のものは協力することについて同意しており、国民民主党は結党以来進めてきた「政策提案型」路線を引き続き行うことができるメリットもあることから、早速12月の臨時国会から法案提出で与野党間に揺さぶりをかけることが想定されます。与党からすれば、これまで野党だけを意識した国会運営の駆け引きを考えていればよかったところ、維新や国民民主も意識しなければならない展開となったことで、国会運営がより難しくなったとも言えるでしょう。

 ただ、世論としては政策提言型の国会論戦こそ国民の求めているものだという風潮は強いのもまた事実です。「身を切る改革」に代表される政治改革など日本維新の会の一丁目一番地政策は、リベラル・保守といったイデオロギーに関係なく主権者の関心を強く惹き付けられる特徴があります。まずは国会論戦でこういった政策を打ち出すことでイデオロギーに偏らない「中道っぽさ」をアピールしつつ、その後の憲法改正論議や重要法案提出などでイニシアチブを握る戦略を採ってくるかどうかが、今後の日本維新の会の注目ポイントと言えるでしょう。