特別定額給付金と持続化給付金の再支給、自民党議員も多数賛同で残余予備費の行方に注目

(写真:アフロ)

特別定額給付金と持続化給付金の再支給の声が高まる

 特別定額給付金や持続化給付金の再支給を求める声が続いています。第三次補正予算が国会を通過したことで予算組み替えの可能性はなくなりましたが、令和3年本予算に向けた運動が今もネット界隈などを中心に行われています。また、令和2年補正予算の予備費にはまだ未執行分が多くあることからも、支援の行き届いていない人たちへの金銭給付といった積極的な支援を求める声が相次いでいます。

必要なのは、やるやらない議論ではなく、必要な人に届ける方法論

 この特別定額給付金や持続か給付金の再支給については賛否が割れています。

 賛成の意見は、現在までに行われてきた経済施策では不十分との声です。1回目の緊急事態宣言では、日本全国に発出されたことを理由に特別定額給付金が支給され、また持続化給付金も支給されました。今年1月からの緊急事態宣言は日本全土に発出されることはなかったものの、10都府県への発出は人口全体の半分以上を占め、都道府県の数の割合に対して相当な影響があったことも事実です。全国的な影響ではなかったという理由で同様の給付が行われず、飲食店やその関連産業のみに支援があったことに対する不公平さの声もあがりました。

 一方、再支給に否定的な意見もあります。その多くが、まさに先ほどの「不公平さ」との指摘の通りで、経済的に困窮している人や会社と、そうではない人や会社とを十把一絡げに支給対象とする前回の施策は、迅速な給付には繋がるものの無駄が多いとの指摘がありました。また、ニッセイ基礎研究所が2020年7月に発表した調査結果「特別定額給付金10万円の使い道」では、その使い道について、1位「生活費の補填(53.7%)」、

2位「貯蓄(26.1%)」、3位「国内旅行(10.1%)」と回答したことから、新たな消費喚起には繋がらなかったとの見方もあります。

 本質的には国の財政で行うことであり、ここでの給付の原資は国債です。そもそも膨らんでいる国債が「国の借金」なのか「政府の借金」なのか、という論点までいくと話が長くなりますから端折りますが、いずれにせよ富の再分配としては機能しない形での再支給は望ましくないとの意見が多くあることも事実です。

自民党内議論でも賛同者が多数集まる

自民党の高鳥修一衆院議員
自民党の高鳥修一衆院議員写真:ロイター/アフロ

 ところで自民党では、若手・中堅議員を中心による「緊急事態宣言延長に当たって追加経済対策の申し入れ」が行われ、下村博文政調会長宛に要望がなされました。主体となったグループは、報道では「若手・中堅議員」と言われていますが、自由民主党筆頭副幹事長で総裁特別補佐を務める高鳥修一衆院議員を中心に、大臣経験者を含む78名(2021年2月10日現在)が賛同しているとのことです。

 この申し入れの中身を見てみると、特に生活困窮世帯や現状で経営に行き詰まっている事業主など支援が必要な人に支援を届けることに主眼が置かれていることがわかります。

1.緊急小口資金と総合支援資金の拡充。

特に緊急小口資金20万円は、無利子保証人不要で「住民税非課税世帯」は返済が免除される制度であることを周知すること。

2.持続化給付金は、売り上げ減収要件緩和や対象を拡大し再支給すること。

3.コメなど農産品等をフードバンク、NPO、大学の学食等を通じて現物支給すること。

新年度に入り予算を確保して雇用調整助成金の特例措置をコロナ収束まで延長すること。

経済的に厳しい方々(住民税非課税世帯を想定)に対し10万円の特別定額給付金を再支給すること。児童扶養手当の特別増額。

事業者への緊急融資拡充と返済に関して柔軟な対応を行うこと。

 これらの申し入れから、この若手・中堅議員らの申し入れが単なる「バラマキ」ではなく、これまでの支援でも生活に困窮したり、または経済的に厳しくなってしまった方々を対象とした追加措置であることがわかります。全国一律的な措置や、所得・収入・売上の格差を顧みないでバラマキを行う施策ではなく、必要な人に必要な物資や資金を届ける議論が自民党内でも始まっています。

残余予備費約3兆円をどうするか

 さて、ここまで自民党内での動きについてみてきましたが、何はともあれ追加的施策のためには財源の問題が出てきます。

 今年度の予備費はまだ相当額が残っています。前述の自民党若手・中堅議員による要望では、当初、残余予備費4兆円を財源として、特別定額給付金の実施や持続化給付金の再支給をするよう要望が出されていました。また、政府はこのうち約1.1兆円の予備費(地方創生臨時交付金約8800億円、時短営業等により売上減少の飲食店への一時支援金約2500億円など)利用を(この申し入れとほぼ同時期に)決定しており、それでも3兆円近くが残っていることになります。当初計上された予備費は相当が使われたことになりますが、それでも通常の一般会計予算における予備費は概ね3,500億円〜5,000億円、リーマン危機や東日本大震災・熊本地震対応でも2兆円までだったことを考えると、相当な規模です。

 ただし、この3兆円では特別定額給付金の支給は全世帯に行うことができません。前回、一人あたり一律10万円を配った特別定額給付金の予算額は12兆円を超えます。先述の自民党若手・中堅議員団の要望でも、「経済的に厳しい方々への特別定額給付金10万円の再支給」と明記されており、全員への再支給は現実的ではなくなってきています。現実問題としては、年間所得や生活困窮世帯に限った支給という可能性が残されているだけかもしれません。

 持続化給付金はどうでしょうか。持続化給付金の総予算は、(補正予算追加や予備費割当も含めて)5兆円超です。これは法人200万円、個人事業主100万円での計算ですので同額規模での給付は厳しいものの、半額(法人100万円、個人事業主50万円)程度であれば十分に可能性はありそうです。緊急事態宣言下にあった都府県では、飲食店などへの営業補償について不公平との声も多く、また周辺産業への補償は僅かであったことから、年度末の資金需要に向けて更なる措置が必要です。

失業者を増やさない、路頭に迷わせない政策を

 現実問題としてコロナ禍はまだ当分続きます。ワクチン接種が来週にも始まる見込みですが、高齢者への接種はまだ当分先であり一般の方への接種については具体的なスケジュールも決まっていません。第4波への警戒も含めた経済活動の停滞は続く見通しです。

 すでに様々な産業において雇用維持を諦めて大規模なリストラを行ったり、事業停止を行う事業者が出てきています。特に非正規雇用の失業者が今後増えることが予想され、さらに生活困窮者が増えることも想定されます。野党だけでなく与党内からも、生活困窮世帯や貧困層に対する積極的な支援の声が聞かれる中、菅内閣の対応に注目が集まります。