オミクロンは現在ロンドンを中心に英国で爆発的に流行している。12月24日の英国における新規感染者数は12万人以上であり、ロンドンでは人口の2%近くが現在オミクロンに感染していると考えられるほど高い密度で流行が広がっている。

本記事では、12月24日現在までに判明しているデータを簡潔に整理したい。

オミクロンとコロナ再感染

コロナはもともと一度感染した人がまた感染してしまうという傾向が強いウイルスである。これは(1)コロナに感染しても、コロナに対する免疫(特に抗体)が半年以内に半減してしまうことと(2)コロナウイルスが変異を蓄積して既存の免疫でできた抗体から逃避しやすくなる、の2点によると考えられる

オミクロンはワクチンや自然感染した人に対しても容易に感染できるのが特徴である。このような再感染・ブレークスルー感染では、重症化する率は比較的低いと現時点では見積もられている。

以上のオミクロンの性質を理解するうえで、まず、オミクロン流行が先行している南アフリカの経緯を正確に理解する必要性がある。

南アフリカの事例

南アフリカは過去に3回の大流行を繰り返し、著しい被害を被った。今回のオミクロンは第4波になる。

南アフリカの第1波(2020年6〜9月)は従来株による大流行で大きな被害を出した。

つづく第2波は2020年12月〜2021年3月であり、南アフリカで発生した変異株ベータによる大流行であった。ベータ株は第1波のあいだに免疫逃避型変異を蓄積して発生し、オミクロンほどの免疫逃避能でないにせよ、第1波の従来株でできる免疫からは逃避する能力を備えた変異株であった。第2波も大きな被害を出した。

南アフリカ最近の第3波は2021年4月〜9月までのデルタの大流行で、南アフリカにおいてもデルタは最大の被害を出した。

つまり南アフリカでオミクロンが発生したのは、デルタ大流行の直後であった。着目しておくべき点は、このときまでに国民のほとんどがデルタに感染したか、ワクチンで守られたかのどちらかであったほどの大流行であったことである。ちなみに南アフリカのワクチン接種率が3割程度であったため、国民の多数は自然感染で免疫を獲得したと考えられている。

それゆえに、オミクロンの明確な性質として、デルタ自然感染直後の免疫ではオミクロンの感染を防げない。さらに後述するように、ワクチン接種だけでは感染を防ぐのは難しい。

一方で、南アフリカにおける第4波、オミクロン流行は、過去の3回の流行に比べると、これまでのところ少ない死亡者数ですむことはほぼ確実である。

南アフリカの経緯をみると、デルタによる自然感染・ワクチン接種でできる免疫では、オミクロン感染を防ぐことはできないが、オミクロンによる重症化は相当程度防げる可能性がみえてくる。

2021年12月の英国におけるオミクロン流行

12月24日までのあいだに、英国では11万人のオミクロン感染が確認され、このうち366人が入院して、29人が死亡した。オミクロン流行が過去2週間で急激に増加したことを考えると、感染者数から遅れる増える重症化・死亡者の数は、今後1月にかけて増加するものと予想されている。

1月の英国でどの程度重症患者数が増えるかは、結局のところ新年休暇あけまでわからないが、オミクロン流行が先行するロンドンにおいて重症化して入院する人が現在日々増加していることは懸念材料である。

英国におけるデルタ・オミクロンの同時流行

2021年12月、英国ではデルタとオミクロンが同時流行した。デルタは一定の高い流行をつづけ、そこにオミクロンの爆発的な流行が上乗せされた形であった。12月24日までの時点で、オミクロンの流行は20代〜30代が中心であり、一方で他の世代の重症患者はまだデルタ中心の状態であった。

この特殊な状況のため、英国はワクチンの有効性についてデルタとオミクロンを比較する調査が精密にできる環境にある。ワクチンが時間とともに効果が薄くなることを考えるとこの点は重要であり、英国からのデータの意味は大きい。

英国のデルタ流行について振り返ってみると、英国は国民多数がワクチン接種をすませたことをもって、7月に封鎖を全解除、マスク着用義務・社会的距離が廃止され、人々は通常の生活にもどった。このため、デルタ株は2021年夏〜秋にかけて大きな流行をつづけ、毎日新規感染者数が3万人以上、毎日100−200人の死亡者がでるほどの流行であった。このまま英国は2021年冬に突入していたのである。

今年夏以来のデルタ流行は、2020年春の従来株による大流行、2021年初頭のアルファ株による大流行に比べれば、極めて小さな被害で済んでいると英社会では受け止められていた。これはひとえにワクチン接種のおかげで、感染者数にくらべれば重症化・死亡する人の数は圧倒的に低く保たれていた。病院も大流行時のような急激な逼迫をすることなく、(さまざまな問題は山積していたものの)通常の医療もそれなりに提供できていたため、英社会はデルタ株の慢性的流行を許容し、日常生活を送ることを優先していた。

以上の経緯から、英国においては、オミクロンが、秋までのデルタ並の被害ですむのか、2021年初頭のアルファ並みの甚大な被害になるのか、その中間であるならば、どの程度であるのか、が大きな関心事である。

有症状のオミクロン感染に対するワクチン有効性について

現在ワクチンの有効性についてはっきり分かっているのは、感染防御の効果についてである。

オミクロンに感染する機会があったとき、ワクチンのおかげで症状がでるようなオミクロン感染をどれくらい予防できるかを調べた英国のデータでは、アストラゼネカ、ファイザー・モデルナのいずれについても、

1)オミクロンに対しては、2回接種後2ヶ月で感染防御の効果は半減する。

2)3〜4ヶ月たつと、感染防御の効果はほぼなくなる。

3)ブースター接種をすると、その後1ヶ月あまりはある程度高い感染防御効果があるが、これも2〜3ヶ月で減衰がめだつようになる。

つまり、オミクロンに関しては、ワクチンによる感染防御の効果はあまり期待しないほうが安全であるといえる。

オミクロンと重症化・ワクチンによる重症化回避について

現在までの英国のデータに基づいた専門家による分析では次の2点の見方が支配的である。

1)オミクロン自体の病原性は多少減弱している可能性が高いが、大きな減弱ではないと思われる。

2)一方で、既感染やワクチンで得られる免疫はオミクロンによる重症化を防ぐうえで相当程度有効であると考えられる。

この2点について、正確な数字は1月以降になる。

オミクロンが「弱毒化」したかどうかという議論をする際、まず最初に注意を向けるべきことは、ウイルスも変化したが人の免疫もこの1年間で大きく変化したという事実である。この変化は、日本や英国においてはワクチン接種により樹立された免疫が大きな部分であり、それにくわえてデルタ大流行による自然感染による免疫が加わっている。

別の言い方をすると、オミクロンが「弱毒」にみえるのは、オミクロンの免疫逃避型変異のために、デルタが感染できなかったワクチン接種者のあいだでも大きく感染をひろげつつ、しかしながらワクチン接種者を重症化させるほどには免疫から逃避できない、という可能性が高い。

ブースター接種の目的

ワクチン接種をした人、してない人のあいだでのオミクロンの重症化率の数字がどれくらいであるかが、1月の英国の運命を大きく左右する。英国のクリスマスは日本の正月に相当する、高齢者から子供まで家族・親戚が集うイベントである点に注意すべきである。

高齢者(特に80代以降)や糖尿病、特殊な癌治療を受けている人など、コロナに弱い持病がある場合、ワクチンで誘導できる免疫が不安定であることがある。つまり、コロナ感染から守るための免疫は誘導されるが、半年程度のあいだに減衰してしまう。

それゆえに、オミクロン発生前から、デルタ株にたいする対策として、ブースター接種をこうしたコロナ弱者の人たちのために行われる予定になっていた。オミクロンに対しても、ブースター接種は感染防御の免疫を強めるのであるから、重症化回避のための免疫も最大限誘導できるはずであると考えられている。

日本の文脈にもっていくうえでの注意点

以上の見解はまだ初期のデータに基づいているため、1月以降に修正される可能性があることには注意が必要である。英国における次の精度の高いデータ更新は新年明けになる。

英国の12月のこれまでのオミクロンのデータが20代〜30代に大きく偏っている点には注意が必要である。クリスマス休暇後、オミクロン感染が高齢者など別の世代にひろがったときにどうなるかについては、1月の現実世界でのデータを見る以外に方法はない。

南アフリカ・英国の例から、オミクロンによる重症化率・死亡率は、それまでのコロナ流行の経緯とワクチン接種済みの人の割合や、ワクチン接種の時期などで変化すると考えられる。つまり、オミクロンの影響は国ごとに違う可能性がある。

日本でどうであるかは、最終的には、日本における現実世界のデータを迅速にとって判断を迫られることになる。

少なくとも、ワクチンで感染防御できるという過信は、オミクロン流行に備えて捨てる必要がある。

ワクチンは重症化しやすい人を重症化させないための道具であるという位置付けが重要であると筆者は考える。