英語というと日本語より直接的であけっぴろげなものだというイメージが広がっていますが、実のところ英国においては、イギリス英語の基本は京都弁と思ったほうが日本人にとって間違いが少ないと思うので、この側面を紹介します。

リンクはタブロイド紙デイリー・メイルの記事(1)で、イギリス人が話す英語が実際のところどういう意味か、それがイギリス人以外にはどう誤解されるか、ということを少々面白おかしく書いたものです。まるで京都弁の婉曲語法でよく例に出される「ぶぶ漬けでもどうどす」(意味:早よ帰れ)の話をみているかのようですよね。実際のところは文脈・言い方で意味は変わると思いますが、イギリス英語は京都弁的に表面上の言葉と真意が逆であることはしばしばあることが見てとれると思います。

しかしこれはただの笑い話ではなく、現実の会話で実際気をつけなければならないポイントです。たとえば会話中に"It is interesting."とだけ言われたとします。これで自分の話を面白いと思ってもらえたと喜んだとしたらそれは間違いです。実は、イギリス英語では"It is interesting."とだけだと、たいてい「面白くない・陳腐だ・退屈だ」という意味になります。というのは、本当に面白かったらvery muchとかきちんと強調をつけて、しかも具体的に何がよいのか言うものですから。

ほかにも、誰でも知っている英語の"Thank you"を違う意味で使うことがあります。これはもちろん「ありがとう」という意味ですが、イギリス人が怒ったときには、後ろにアクセントをおいてきつい語調で言うことでThank youを嫌味として言い放つことがあります。

こういう違いを知っておくことは、イギリス人にものを頼むとき現実に役に立つものです。英語の授業では、たとえば手助けを頼むときには"please help me to..."と習うと思います。これは全く間違っていないのですが、そうして手助けを頼むことが気軽にはできない人間関係や状況であるときには、とつぜん直接的にものを頼むのは日本でも不躾になり得ますよね。実際、イギリス英語でもむしろ"I am wondering if you could help me..."や"Would you mind helping me...?" などと言うことが多く、こうして婉曲に頼んだ方が相手も快く対応してくれるものです。

ちなみに英語の仮定法は日常的に頻用されるもので、"Would you mind helping me...?" は(もし私があなたに頼んだとしたら)私に手助けすることを嫌だと思われますか、という括弧の部分が省略された言い方です。つまりここでは "Do you mind..?" と直接に嫌かどうかを聞くこともまた巧みに避けているのです。

実際私の知る限りで、古くからイギリスにいるイギリス人~特にいわゆるイギリス紳士は~こうした婉曲表現を多用します。そのため、ここでリンクにあるような笑い話が成立します(2)。リンクの左の図にあるように、溺れかけた状況であっても、イギリス紳士に"Help!"(助けて!)と叫んでも見向きもしてもらえません。しかし丁寧かつ婉曲に、"Excuse me, Sir, I'm terribly sorry to bother you but I wonder if you would mind helping me..."とお願いすると即座に助けてもらえるわけです。

つまり京都と同様、古くからイギリスにいるイギリス人のコミュニケーションは、文化の文脈に大きく依存しています。これはそのルールを知らない他所者にとっては実に分かりにくい困ったものです。でもこの含意のさせ方のパターン自体は日英の古都で結構共通しているのは面白いところです。

京都人はじめ関西出身の人のほうがイギリス英語の習得は早いかもしれませんね。

註釈

1) 記事へのリンク

2) Martyn Ford & Peter Legon, The How to be British Collection, Lee Gone Publications, 22 April 2003.