Yahoo!ニュース

「戦没農民兵士の手紙は二度と書かない」 安保法制廃案を!  「敗戦70年目の百姓宣言」安倍首相に送付

大野和興ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集長

国会で審議中の安保法制に向け、農民からの声を上げようと取り組まれている「敗戦70年目の百姓宣言」同人は、8月15日付けで同宣言を安部首相あて送った。同宣言は戦前、戦後の農民の歴史を振り返りながら、農民が土を耕し、種をまき、家畜を飼う営為を支えているのは敗戦後70年の平和であり、その平和をつくりだしてきた憲法であるとしている。いまその憲法が安部内閣が進める安保法制によって崩されようとしているという危機感が「百姓宣言」となったもので、「安保法制の廃案・廃止」を安部首相に要求、「戦没農民兵士の手紙は二度と書かない」とうたっている。現在賛同者は個人495人、団体賛同8団体だが、これは第一弾で、国会での安保法案審議に合わせ第二弾、第三弾と重ね、最終的には1万人をめざしたいとしている。

「戦没農民兵士の手紙」というのは、研究者や農村活動者が集まった岩手県農村文化懇談会が仏壇や神棚に置かれていた戦地からの手紙を収集し、「農民による戦争証言」として岩波新書から発刊された本の名前からとった。赤紙一枚で召集され、戦地に送られた百姓青年たちの手紙は、事前検閲されていり関係で、一見当たり障りのない言葉が並ぶが、その行間から兵士たちの思いが伝わってくる。

賛同者は、専業の大型百姓から日曜百姓、ベランダ農業、までさまざま。女性が多い。また男性も女性も高齢者が多いのも特徴。手紙をつけて賛同申し込みを送ってくる人も多い。同人では故人の賛同も募っている。今回の第1次集約では、個人賛同495人のうち66人が故人。20歳初めで兵隊にとられ、戦地で死亡したおじさんのこと、戦地から帰り百姓として生涯を全うしたが、戦争のことは何も語らなかった祖父のこと、戦争で夫を亡くし、残された三人の子どもを農業で育て上げた母のこと、そんな思い出とともに故人の賛同は送られてきた。

専業百姓からベランダ農業までさまざまな賛同者に共有されているのは、土への思い。日本の有機農業運動を切り拓いてこれらた山形県高畠町の星寛治さん、玄界灘に面した村で百姓をしながら小説やエッセイを書き続けている農民作家の山下惣一さん、山形・置賜で「置賜自給圏」づくりを提唱、牽引している菅野芳秀さんらも、お連れ合いと共に賛同に連ねている。秋田県能代市で中国・朝鮮半島からの強制連行の事実を掘り起こしてきた野添憲治さんも賛同され、岩手の仲間とともに秋田でも「戦没農民兵士の手紙」

発掘に村を歩いた思い出を手紙で寄せた。

賛同署名はこれからもまだまだ続く。

ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集長

1940年、愛媛県生まれ。四国山地のまっただ中で育ち、村歩きを仕事として日本とアジアの村を歩く。村の視座からの発信を心掛けてきた。著書に『農と食の政治経済学』(緑風出版)、『百姓の義ームラを守る・ムラを超える』(社会評論社)、『日本の農業を考える』(岩波書店)、『食大乱の時代』(七つ森書館)、『百姓が時代を創る』(七つ森書館)『農と食の戦後史ー敗戦からポスト・コロナまで』(緑風出版)ほか多数。ドキュメンタリー映像監督作品『出稼ぎの時代から』。独立系ニュースサイト日刊ベリタ編集長、NPO法人日本消費消費者連盟顧問 国際有機農業映画祭運営委員会。

大野和興の最近の記事