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震災の食料供給不足。そこから食べ物を作る仕事に携わりたくなった/ムードセンターまつむら 松村洋さん

岡沼美樹恵フリーランスライター/編集者/翻訳者
「ムードセンターまつむら」の松村洋さん

広告プランナーとして、時に斬新すぎるアイデアで地域の活性化を目指す男性がいます。それが、「ムードセンターまつむら」の松村洋さんです。

「『松村さんって、何をしてる人?』って聞かれることも多いから、法人を立ち上げる時は『株式会社何屋』にしようかと思って。まぁ、たぶんやんないで終わると思いますけど」。

松村さんの面白企画のスタートは、東北大学在学中にスタート。「あの当時、東京地検特捜部が、汚職政治家をバンバン捕まえてて、カッコいい!って思ったんですよ。それで頑張って勉強して、東北大の法学部に入ったんですけど、半年くらいで『弁護士は無理だな』ってあきらめて、サークルに行くだけの学生生活になりました(笑)」。

所属したのは、キャンパスアート同好会。

「東北大学祭のゲートをつくる、ということだけ決まっている楽しくて怪しいサークルで。それで、サークルに入って1、2年経った頃、仙台駅前開発で『AER』という商業ビルが建つことになったんです。が、どなたから声を掛けていただいたのかは覚えてませんが、「新しいビルだし、学生に企画で携わってもらったら楽しいんじゃない?」となったようで、『AER TV』っていう番組から、『キャンパスアート同好会』に『番組やらない?』ってオファーがきて」。

松村さんは、番組内で「実験マツムラくん」をいうコーナーを担当。

「体にガムテープ巻いて、粘着力だけで壁を登れるかやったり。あと、友達のお母さんからもらったシビックのハンドルをガムテープで固定してぐるぐる回りながら、ハッチバックから少しずつ小麦粉を落として円が描けるか…とか。今でいうYouTuberみたいなことやってたんです。なので、卒業に時間かかりましたね(笑)」。

「AER TV」のあとは、地元の東北放送の深夜番組で不条理コントを演じることに。そして卒業後、ほとんど何の経験もないまま、フリーランスでCMや番組を作ることにしました。

「番組制作に携わっていて、まわりの友達がビデオカメラを買ってCM作ったりしてたんです。それで、『俺もやれるか?』と、何の根拠もなくMac買って、SONYのカメラ買って。当時は月の半分も働けば食べれたんですよ。でも、自分の場合は「ただ作れる」というレベルで、センスのある人には絶対にかなわないから自分でやるのはあきらめて、就職してプランナーになりました。

その後、大手広告会社仙台博報堂(当時)に入社。「広告の企画をやってて。観光の仕事をやらしてもらって。すごくおもしろかったんですけど、震災がきっかけで辞めることにしたんです」。

東日本大震災直後は、仙台市中心部でも食料を手に入れるのが困難でした。

「震災でこんなに食べ物買うのが大変なんだ、と。僕は幸い自炊をする習慣があったので、自宅に米があって。でも、同僚は、ダイエーに3時間並んでやっとパン2つ買ったって。僕、食べ物を買うのが大変な日が来るんだってすごくショックだったんですよ。だから、広告の仕事もやりながら、食べ物を作る人に関わりたいって思うようになって、博報堂を辞めました」。

その後、マルシェなどにも携わる傍ら、プランナーとして独立。

「少しずつ観光の仕事が増えていって。インアウトバウンド仙台松島という団体の立ち上げにも携わって。インバウンドはまだ(コロナ禍のため)無理だから、今は色々な人と物を作ってます。宮城県の岩出山っていうところに『よっちゃん農場』ってあるんですけど、そこの高橋さんご夫婦がメンマを作るということになって、試作の段階から関わりました。『竹之芯』っていう国産、手作りのメンマです。高橋さんご夫婦との出会いが僕には大きくて。竹林って放置しておくと荒れてしまう一方になるらしく、彼らは、竹を伐採してその活用法としてメンマをつくりたいと。メンマって、タケノコがはえて3~4mくらいになった幼竹の先2mくらいを煮るんですよ。幼竹の節と節の間を切って、ゆでて、カットして。それから塩蔵して、乳酸発酵させて、天日干しして戻して味付けするって。ものすごい時間かかる。これだけ手間かかるから、みんな中国産になっちゃうらしくて。でも、美しい景色を守っていくには、必要なことなんだって。

商品を作るということは、名前を考えたりデザインをしたりすることだけではなくて、生産者の人と一緒に景色を作ることなんだ、というのが、すごくいい経験でした」。

「おならカルタを作って以降、1年にひとつは何か作ろうと決めて、最近は、デザイナーのよシまるシンさんと謎のカレンダーを作りました。これはもう、かなり謎です(ぜひウェブサイトをのぞいてください)。あとは趣味でスピーカーもつくりました。アクリルを一枚ずつカットして。素材によって音が変わるんですよ。趣味で作れるものも、作りたいなと思っています」とのこと。

「よいがらす」の物語は、「暮らす仙台」で!
「よいがらす」の物語は、「暮らす仙台」で!

松村さんが、地元の酒造、そして酒米を育てた大地の砂でつくったグラス「よいがらす」の物語は、ウェブメディア「暮らす仙台」でも読んでいただけます。こちらもぜひ!

ムードセンターまつむら

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070-6131-3931

フリーランスライター/編集者/翻訳者

大学卒業後、株式会社東京ニュース通信社に入社。編集局でテレビ誌の制作に携わり、その後仙台でフリーランスに。雑誌、新聞、ウェブでエンターテインメント、スポーツ、広告、ビジネスなど幅広いジャンルの執筆活動を行う。2016年よりウェブメディア「暮らす仙台」で東北のよいもの・よいことを発信。ローカルビジネスの発展に注力している。好きなものは、旅、おいしいものを食べること、筋トレ、お酒、こけし、猫と犬。夢は、クリスマスのニューヨーク・セントラルパークでスケートをすること。妄想は、そのスケートのお相手がジム・カヴィーゼルだということ。

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