被災者生活再建支援法が改正―中規模半壊の新設、「半壊の涙」「境界線の明暗」の行方

被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案概要(内閣府)

2020年11月30日、第203回臨時国会にて、被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案が成立しました。被災者生活再建支援金を「中規模半壊」世帯に拡大し、加算支援金に限り最大100万円支給するという改正です。令和2年7月豪雨にもさかのぼって適用されます(対象は被災者生活再建支援法適用が決定された6県の54市町村)。支援を半壊へ広げることについては、自治体や専門家から繰り返し提言されており、今回の改正も歓迎されるべきものです。ただし、残された課題は多く、災害復興支援制度の見直しは継続していく必要があります。

被災者生活再建支援法とは

被災者生活再建支援法は、一定規模の自然災害により住家被害があった被災世帯に対して、損壊の程度や再建手法に応じて「被災者生活再建支援金」を支払う法律です。基礎支援金と加算支援金があります。被災者へのお金の直接給付を定めている事実上唯一の法律であり、生活再建の第一歩になる要の制度です。阪神・淡路大震災を経て超党派の議員立法によってつくられ改正も重ねられてきました。大きな改正は、東日本大震災前の2007年で最後になっていました。

「半壊の涙」

被災者生活再建支援法が適用される一定規模の災害が発生し、その対象地域で被災した世帯でも、支援金を受け取ることができるのは、法改正前は、「全壊」「大規模半壊」「半壊しやむを得ず解体」「長期避難世帯認定」の場合に限られていました。つまり「半壊」では被災者生活再建支援金は支給されません。地震被害や土砂被害などで相当のダメージを受け、住むことができなくなっても、被害認定上は「半壊」となってしまう世帯はあります。つまり「半壊の涙」と呼ばれる事態が起きていたのです。

今回の法改正で、これまで「全壊」「大規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」という5つの被害区分であったものが、「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」の6つの被害区分に細分化されました。このうち、「中規模半壊」に限って、支援金(加算支援金に限る)が支給されるようになりました。「半壊の涙」は一部ではありますが、解消されたということになります。

内閣府「被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案の概要」より抜粋
内閣府「被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案の概要」より抜粋

「境界線の明暗」

被災者生活再建支援法は、一定規模の住宅被害が発生した市町村又は都道府県の単位でその適用範囲が決定されます。「10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村」「100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県」などの条件(被災者生活再建支援法施行令1条)を満たす場合に、その市町村や都道府県に限って被災者生活再建支援法が適用されます。たとえば、同じ水害や台風被害により、ある自治体で十数棟が全壊したとしても、その隣接自治体で全壊住家が1棟しか確認できなかったような場合には、隣接自治体側では法適用がないのです。同じ災害でも法律の適用格差がおきることになります。特に2012年・2013年に関東地方で頻発した竜巻被害では、複数自治体を掠めるように竜巻が通過したため、適用格差のある自治体が数多くでてきてしまったのです。同一災害における「境界線の明暗」があるのです。なお、この「境界線の明暗」の問題は、国会での法改正は必要なく、閣議決定を経る政令改正ですみます。「被災者生活再建支援法施行令1条」の改正は急務だと言えます。

このような「被災者生活再建支援法の狭間」の問題に対しては、都道府県が独自に条例を策定した場合に、国がその都道府県へ交付金で支援するという施策があります。すでに相当数の都道府県が、法律適用外の被災者への上乗せ支援条例を策定しています。しかし、同一災害でありながら、都道府県の政策の有無で支援が大きく異なってよいのでしょうか。都道府県等の独自施策が進んでいるのなら、むしろそれは国が同一災害同一地支援制度へ統合して法律のレベルできめ細やかな支援メニューを構築していけばよいのではないでしょうか。さらなる立法措置が求められます。

残る生活再建と法政策の課題

被害認定が6つの区分にわかれ、10%刻みに細分化されたことで、被害認定調査への労力と時間が懸念されています。被災地への人的支援の強化や、これまでの災害でも活用された手法を活かしながら、より簡易な調査認定手法を検討していく必要があるでしょう。

被害認定への不服申し立ての仕組みも整備されていません。住宅の被害認定が記載されるのは「罹災証明書」です(災害対策基本法90条の2)。被災者生活再建支援法でもこの罹災証明書が事実上活用されています。仮に「中規模半壊」と認定されて罹災証明書が発行されたとして、その場合、本来は「全壊」又は「大規模半壊」ではないか、といって認定の是非を争うための法令上の根拠が整備されていないのです。現在は、家屋被害認定について、第一次調査ののち、希望があれば、第二次調査、再調査、再々調査などが行われる運用ですが、あくまで事実上のものです。

修繕制度への支援はこのままでよいのでしょうか。半壊以上の世帯へは、災害救助法の応急修理制度も利用できます。しかし、支援範囲は大きくありませんし、利用する際にはその後の手続制限などもあり利用には慎重さが求められます。修繕するということは、現地で再びコミュニティを形成し、生活を再建していくことを意味するわけです。そうであれば、修繕は地域社会にとって歓迎すべき再建手法のはずですから、建設などに比べて支援額を少なくしている傾斜配分を改め、建築再建や購入再建と同じ水準の支援をする方が、被災地全体の復興が加速するのではないでしょうか。修繕費用が足りないがために、半壊住宅をやむを得ず「公費解体」し、地域から転出していかざるを得ないという筋道を辿る被災者も多いはずです。

災害ケースマネジメントの制度化を

このような課題に応えるべく、災害復興法制を抜本的に見直そうとするのが「災害ケースマネジメント」です。災害ケースマネジメントとは、被災者一人ひとりの実情に合わせて支援計画を立てたうえで施策をパッケージングして支援していく仕組みです。住家損壊程度にのみ依拠して支援の程度を決めていく手法の限界は、制度発足時から提言されてきたところです。本来であれば法律も間断なく見直されていくはずでしたが、現在も罹災証明の住家被害認定を基準とした運用から脱却していません。

災害ケースマネジメントに詳しい津久井進弁護士からは、「同じ災害であってもダメージは一人ひとり違います。被災者にアウトリーチして被害や困窮のリアルな状況を把握し、その人に合った支援方法を考えていくことが必要です。公的な被災者支援制度で手が届かないところは、福祉制度や民間支援もフルに活用して、寄り添っていくのがポイントだと思います。被災者にとって自分の状況にピッタリ合った支援はありがたいですし、財務的にも無駄なく効果が得られる点で合理的です。その結果、スピーディーな復興支援につながるはずです。」とのコメントをいただきました。筆者も同様の見解であり、既存の母子支援、福祉支援、困窮者支援とシームレスなかたちで支援を実践していく方が、予算も効率的かつ効果的に執行できるのではないかと考えます。

(参考資料)

・内閣府「被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案」

・内閣府「被災者生活再建支援法」

・岡本正『半壊の涙、境界線の明暗~全国知事会が被災者生活再建支援法の改正を提言』Yahoo!ニュース個人(2018年12月4日)

・津久井進『災害ケースマネジメント ガイドブック』合同出版

・岡本正『災害復興法学2』慶應義塾大学出版会(第6章 家族の生活(3)半壊の涙、境界線の明暗/被災者生活再建支援法の課題と災害ケースマネジメント)

・岡本正『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』弘文堂