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【北海道胆振東部地震】生活再建に役立つ制度を知る「札幌弁護士会被災者支援ニュース」

岡本正銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)
札幌弁護士会被災者支援ニュース第1号(2018年9月10日)

このたびの地震により被災された方々に衷心よりお見舞いを申し上げるとともに、最前線で救援・復旧活動に従事されている方々に敬意を表します。

2018年9月6日午前3時7分、北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とするマグニチュード6.7(暫定値)の地震が発生し、厚真町(あつまちょう)では震度7の地域があった。41名の方が犠牲となり、全半壊住家も膨大な件数に及んでいる。

弁護士会の「被災者支援ニュース」に注目

9月10日、札幌弁護士会は「札幌弁護士会被災者支援ニュース第1号」を発行した。

「罹(り)災証明書」「応急修理制度」「自然災害債務整理ガイドライン」といった、生活再建のための一歩を踏み出すために、是非知っておいてほしい情報が記述されている(下記に引用)。過去の大災害において、日弁連や弁護士会は、国や自治体が発信する支援情報をまとめて、被災者に提供する相談活動を行ってきた(ことしは平成30年7月豪雨大阪府北部地震など参照)。胆振東部地震でも、まずは札幌弁護士会が無料相談活動などを始める予定とのことだ。第2号以降もウェブサイトなどで必ずチェックしてほしい。

■り災(ひ災)証明書とは何ですか?発行を受けるにあたり気を付けることはありますか?

り災(ひ災)証明書とは、市町村が、申し出により家屋の被害状況の調査を行い、その確認した事実に基づき発行する証明書で、各種支援等の基準となるものです(一部の市町村では、ひ災証明書の場合もあります。)。札幌市では申請の受付が開始されていますが市町村により発行体制が異なるため確認が必要です。店舗・事業所のり災(ひ災)証明制度が設けられている場合もあるので、各市町村へお問い合わせを。建物の損壊や損傷については、その状況の写真が必要です。携帯電話やスマートフォンで撮影したものを窓口に持参することでもかまいませんので、可能な限り内部・外部・敷地・地盤なども含めて建物の損害について写真を多く残しておくことをおすすめします。り災(ひ災)証明の認定に不服がある場合は、申し出により再調査が実施される場合もあります。

■住宅を修理して帰りたいのですが?

一部の修理により居住が可能となる場合には、災害救助法に基づき「応急修理」を受けられる場合があります。業者への委託は、被災者からではなく、各市町村から行う必要があります。応急修理が必要な場合には、自ら業者に依頼する前に、各市町村の窓口にご相談下さい。なお、修理をしてしまうと仮設住宅に入居できない場合があるためご注意下さい。

■住宅ローンを支払う余裕がありません

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」により、住宅ローン等の免除・減額を受けられることがあります。同制度を利用出来た場合、(1)弁護士(登録支援専門家)による手続支援を無料で受けられる、(2)財産(後記義援金等を含む※筆者注末尾に)の一部を手元に残してローンの支払免除・減額等を受けることができる、(3)破産等の手続と異なり、債務整理をしたことは個人信用情報として登録されないため、新たにローンを組むときに不利益なし、(4) 原則、連帯保証人も支払いをしなくてよくなる、等のメリットがあります。義援金等を手元に残してローンの減額、免除を受けられる場合もありますので、安易に繰り上げ返済やリスケジュールをせず、まずは弁護士にご相談ください。

義援金を確実に手元に残すには義援金の差押えを禁止する特別立法が必要です。この記事の時点ではまだ立法措置はなく、「現預金最大500万円」「家財地震保険金最大250万円」「被災者生活再建支援金」「災害弔慰金」などがガイドライン利用の場合に確実に手元に残せる財産に該当します。

「札幌弁護士会被災者支援ニュース第1号(2018年9月10日)」
「札幌弁護士会被災者支援ニュース第1号(2018年9月10日)」

生活再建にかかわる情報を逃さないために

被災者の生活再建に役立つ制度は、自治体、国、さらに契約している会社(例えば銀行等金融機関、生命保険会社、損害保険会社、携帯電話会社等)から次々と発信される。どのような支援があるのかあらかじめ知っておけば、情報をキャッチしやすくなるはずだ。

特に被害が大きかった市町村では、今後、被災者生活再建支援法に基づく「被災者生活再建支援金」の支給の受付が市町村窓口で始まる可能性が高い。

被災者生活再建支援金は、適用が決定された市町村において、住家が「全壊」や「大規模半壊」等の被害を受けた場合に、まず基礎支援金として最大100万円が世帯に支払われる制度である。その後、新しい家を新築・購入したり、修繕したりする場合には、その態様に応じて、最大50万円から200万円までの加算支援金が支払われる。このような重要な支援情報を逃さないためにも、住んでいる市町村がどのような支援情報を発信するのか、チェックすることが重要になる。

札幌弁護士会「災害対策委員会」委員長の桶谷和人(おけたに・かずひと)弁護士からは、「北海道での震度7の地震は初めてですし、北海道内全域が停電したのも初めてでした。北海道以外の地域の方には『九州全域が停電』とか『関東全域が停電』と例えると、停電の影響の大きさを実感していただけると思います。(本日時点で)41名の方が亡くなられ、多数の建物被害も出ています。札幌弁護士会では被災した皆さまに向けた電話相談、出張相談を行っています。北海道の交通機関や物流は完全には復旧していません。しかし、被害を受けた地域は北海道内の一部の地域ですので、北海道以外の皆さまは今こそ北海道に観光に来ていただき、北海道を元気づけてください。」と力強いメッセージをいただいた。

弁護士が、災害後の生活再建に役立つ制度の情報源になることを強調しておきたい。

(参考)

銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)

「災害復興法学」創設者。鎌倉市出身。慶應義塾大学卒業。銀座パートナーズ法律事務所。弁護士。博士(法学)。気象予報士。岩手大学地域防災研究センター客員教授。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。医療経営士・マンション管理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)・防災士。内閣府上席政策調査員等の国家公務員出向経験。東日本大震災後に国や日弁連で復興政策に関与。中央大学大学院客員教授(2013-2017)、慶應義塾大学、青山学院大学、長岡技術科学大学、日本福祉大学講師。企業防災研修や教育活動に注力。主著『災害復興法学』『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』『図書館のための災害復興法学入門』。

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